第282回 すぐ返す人、じっくり返す人、返さない人

 このコラムについて 

「担当者は売り上げや組織の変革より、社内での自分の評価を最も気にしている」「夜の世界では、配慮と遠慮の絶妙なバランスが必要」「本音でぶつかる義理と人情の営業スタイルだけでは絶対に通用しない」
設立5年にして大手企業向け研修を多数手がけるたかまり株式会社。中小企業出身者をはじめフリーランスのネットワークで構成される同社は、いかにして大手のフトコロに飛び込み、ココロをつかんでいったのか。代表の高松秀樹が、大手企業とつきあう作法を具体的なエピソードを通して伝授します。

本日のお作法/すぐ返す人、じっくり返す人、返さない人

 

 

某大手さんで、社内の共有ツールが「メール」から完全に「Slack」に切り替わったのだそうです。

「『えっ?今ごろ?』という声は受け付けません」とは、システム担当のK部長のお言葉ですが、

実際、メール文化と比べてみると、やりとりの「スピード感」「粒度」は圧倒的に変わったようです。

◆ある日のSlackにて

「こんなやり取りがあったんですよ」と見せてくださったのですが——

ある日の「始業直後」、20代の「若手社員」が、業務用のSlackチャンネルにこんな投稿をしたのだそうです。

「明日の商談に向けて、A案とB案、どちらが良いと思われますか?ご意見いただけると嬉しいです」

それから数分後。 「40代の課長」が即レス。

「個人的にはA案に一票!インパクトあるし!」

その後は、しばらくのあいだ「既読スルー」の方々が多数。

そして「終業間際」の17時30分、「ベテラン部長」から一言。

「全体の方向性としてはB案。ただ、A案の勢いも捨てがたいね。両方混ぜた『AB案』も検討してみては?

◆若手の本音

後日、この若手さんに感想を伺ったそうです。

「正直、レスポンスの速さって『関心の高さ』だと思っちゃうんですよね」

「すぐ返してくれた課長には、『応援してくれてる味方』みたいに感じました」

一方で、じっくり考えて終業間際にコメントをくれた部長については、、

「もちろん考えてくださってるのは伝わるんですけど、終わり間際に来ると『今さら変えられない、、』ってなるんですよね」

どうやら、Slack上では『反応が遅い人』というラベルがついてしまったようです。

◆ベテラン側の本音も

この件について、部長にも話を聞いたところ、こんな返答が。
「Slackって、『即レスが正解』なの?」

『すぐには返さない』のがうちの文化だったと思ってたけどなぁ」

「それに、いきなり『どっちがいい?』とか『コレどうしますか?』なんて聞かれてもね、、」

「もう少し『自分の意図や考え』を整理してから相談してくれたほうが嬉しいかな」

そんなふうにお感じだったそうです。

◆世代ギャップ?温度差?

最近では他社でも、「既読スルーされると『無関心』や『拒否』と受け取る若手が増えている」なんて話も耳にします。

「確かに、『速さは安心』を与えてくれるけれど、『本当の信頼』って、『その人なりの温度』で返してくれる言葉の積み重ねだったりもしますよね」

「メールだろうがSlackだろうが、その背後にいるのは、『いつも人』なんですよ」

システム部長のこの一言が、じんわり印象に残ったのであります。

 

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高松 秀樹(たかまつ ひでき)

たかまり株式会社 代表取締役
株式会社BFI 取締役委託副社長

1973年生まれ。川崎育ち。
1997年より、小さな会社にて中小・ベンチャー企業様の採用・育成支援事業に従事。
2002年よりスポーツバー、スイーツショップを営むも5年で終える。。
2007年以降、大手の作法を嗜み、業界・規模を問わず人材育成、組織開発、教育研修事業に携わり、多くの企業や団体、研修講師のサポートに勤しむ。

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