原因はいつも後付け 第8回 「かめさんに学ぶ、勝てるお店の作り方」

自分が勝てる基準

「未経験のやつが上手くいくほど飲食業は甘くない」という現実。
確かに甘くはない道のりでしたが、お店は1年経って何とか黒字化。

その後、お店が繁盛してくると今度は周囲の人たちからこんな事を言われるようになったのです。

「飲食未経験ならではの視点が良いよね。」

業績が悪かった時は短所だったはずの「飲食未経験」が、業績が良くなるといつの間にか長所に変わってしまっていたのです。

正直にいうと、当時は何でこんな事になったのかが自分でも分かっていませんでした。
ただ、今から振り返り、なぜ短所が長所に変わったのかと考えてみると、一つの思考の変化があるような気がします。

それは「自分が勝てる基準を作り出した」ということ。

開業時の私と同じように、初めてお店を開業するとき、立地、資金、競合といった問題に悩まされるオーナーも多いと思います。

そんな時、つい自分のお店と他のお店を比べてしまいたくなってしまうものではないでしょうか?

「あのお店は立地が良い」
「大手チェーンには価格で勝てない」
「駅前に競合が多すぎる」

ただ、こういった比較のほとんどは大手チェーンが勝てる基準で自分のお店を見てしまっているだけなのです。

「お金、立地、競合」
私の1店舗目はこの基準で見た時、最悪の条件でした。

業績が上がらなかった時、私は「大手が勝てる基準」でお店を運営していました。
そして業績が上がった時、私は「自分が勝てる基準」を作ってお店を運営していました。

「飲食未経験」という事実。
これは大手チェーンの基準で比較した時、大きな短所になります。
だから自分の経験の無さが集客の武器になる基準を自分で作ることで、大手チェーンとは全く客層の異なるリピーターの方たちが集まるお店を作ることができたのです。

「うさぎとかめ」。
童話の中で、かめさんはうさぎさんにこう言っています。
「山のふもとまで競争しよう。」

もし、この競争が50m走だったら、かめさんが勝つことは不可能だったでしょう。
だから、かめさんは「うさぎさんが途中でサボる可能性が出てくる距離」、山のふもとをゴールに提案したのではないでしょうか?

相手の勝てる基準で勝負せず、自分が勝てる基準を作り、そこで勝負をする。

「短所は長所」と言うことわざは無いかも知れません。
ただ、自分で商売をする時、かめさんが実行した「短所が長所になる基準で勝負する」という考え方は、うさぎさんと一緒に私たち店舗経営者も学んでおいた方が良いのかも知れません。

著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計28店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。

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