// 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 // |
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。 |
《第12回》値下げをしてもお客さんが増えない理由
「商品を値下げしてみようか。」
なぜ店舗オーナーの多くの人がこう考えてしまうのでしょうか?
それは「値下げをして来店数を増やせれば、結果的に利益も増える」と考えているから。
まさに「薄利多売」で儲けようという訳です。
ただこの方法、実際にやって成功したオーナーを見たことがないのです。
なぜ成功したオーナーがいないのか?
そこには値下げをして来店を増やそうという考えに見落とされている「何か」があるような気がしてならないのです。
売上=客数×客単価。
これは商売をしている人なら誰でも知っている当たり前の計算式。
当たり前だからこそ、計算式の「客単価」を下げることで「客数」を増やす。
そうすることで、結果的に「売上」を増やそうとしている訳です。
ただ、実際はどうなるのか?
確かに客単価は下がります。
でも肝心の客数は増えないのです。
商品を値下げしたにも関わらず、お客さんが増えない理由。
それは、計算式には表れない価値を見過ごしているから。
計算式に表れない価値とは何なのか?
それは、お客さんがお店で過ごす「時間の価値」。
お客さんがお店にいるという事は、お店がお客さんの時間を貰っているという事。
お客さんの時間を貰うという事は、お客さんのお金を貰っているという事に他なりません。
つまり、お客さんは商品以外にも、お店に「時間」としてお金を払っている訳です。
安くすればお客さんが来てくれると考えてしまうこと。
こう考えてしまうのは、お客さんは商品の値段しか見ていないと考えているから。
そして、お客さんの時間の価値に気づいていないから。
安さを売りにしたチェーン店よりも安くして利益を出せるのであればお客さんを増やすことはできるかも知れません。
でも、小規模経営のお店が大手と価格競争をするのは無謀と言えます。
だから、商品を値下げしようとするのではなく、お店にいる時間の価値を高める方法を考える。
お客さんからもらっているのはお金と時間。
そして、この時間の価値を考えることなしにお客さんが増えることなんてないと思うのです。
だって、お客さんの時間は無料じゃないのですから。
著者/辻本 誠(つじもと まこと)
<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計28店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。