原因はいつも後付け 第64回「集客を依存しない努力」

 // 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 //
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

《第64回》集客を依存しない努力

新しくお店を開業するオーナーと話をしていると、時折こんな事を聞かれます。
「どの媒体を使ったら良いか、オススメありますか?」
「広告の掲載プランはいくら位が良いですか?」などなど。

そんな時、私はこう答えています。
「広告費を使わないで集客する方法を考えてみませんか?」と。

広告費をできるだけ使わないようにする理由。

それは、単に私がケチだからというのもあるかも知れません、笑。
ただ、それ以上に私が広告費を使わないようにしているのには、もっと重要な理由があるからなのです。

《集客を依存した商売》

商売を始めたばかりの頃は、とにかく自分のお店の存在を多くの人に知ってもらう必要があります。そのため、私は絶対に広告費を使わない方が良いというつもりはありません。

集客なくして成り立つ商売なんてないでしょう。
そんな重要な集客だからこそ、儲けを削ってでも広告費にお金を使いたくなってしまうのだと思います。

でも、これは見方を変えると、そんな重要な要素である集客を、自社ではなく他社に依存している状態と言える訳であり、これは最悪の場合、他社のサービス値上げやサービス終了により、集客コストが大幅に上がるリスクや集客自体が出来なくなるリスクを抱えていると言えるのではないでしょうか。

《集客を依存しない商売》

集客を他社に依存した商売は、いつ集客ができなくなるか分からないリスクがあるということ。

では、私たち店舗経営をする人間が取り組むべきこととは何なのか?
それが「自分で集客できる仕組みを作ること」と「顧客と直接繋がれる関係を維持すること」。

これは当たり前の事ではありますが、実際は言葉で言うほど簡単ではないでしょう。
そして、簡単ではないからこそ時間をかけてでも取り組むべき課題であり、この仕組みを考え、試し続け、自社で集客できる状態を作ることに力を注ぐことこそが、店舗オーナーのやるべき重要な仕事なのではないかと思うのです。

時間とお金をかけても出来るか分からない自社での集客。
それに比べれば、月に数万円のお金を払って他社が集客してくれるのならば安いもの、と感じてしまうのは仕方のないことかも知れません。

ただ、商売において欠かせない要素が「商品」と「集客」の2つであるとするならば、そのうちの1つである集客を他社に依存しているということは、自分の商売の半分はもはや他社の商売と言えるような気がしてなりません。

私たちは広告費というと、つい支払う金額ばかりに気を取られ、本当に大事なものを見失いがちな気がします。広告費を使い続けることの問題点はその金額の多寡よりも、店舗経営における重要な要素の1つを他社に依存しているということ。

いくら繁盛店が作れたとしても、その集客を他社に依存している限り、私たちが安心して商売を継続できる日が来ることなんてないと思うのです。

広告費を使って集客している状態を当たり前と思わないこと。
自社で集客できる状態を作ることがオーナーの取り組むべき重要な仕事だと思います。

 

著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

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