貧困家庭では「教育を受けられないから、さらに貧困になっていく」と言われています。どう思いますか？

裕福な家庭の人のほうが塾に行ける率も高いので、差が開くのは必然的なことじゃないですかね。

学力に差がつくのは仕方ないと。

テストの点だけに限れば。

でも中学までは義務教育じゃないですか。そこで一生懸命勉強したら何とかならないんですか？しなかった僕が言うのも何ですけど（笑）

元々できる子は大丈夫だと思うんですよ。ちょこっと勉強したらすぐわかるレベル。

地頭がいいっていう？

それはたぶん生まれつきだと思うんです。

じゃあ「生まれつき超地頭がいい子」は貧困から抜け出せると。

まあ、そうなんですけど。やっぱり後天的に学習する人の方が多いので。そういう人たちは貧困家庭だとチャンスが減りますよね。

でも、どうなんでしょう。大企業に入ることをゴールにしたら、たしかにいい大学に入るのは大事だと思うんですけど。

そうですね。

でも今の時代って、べつに会社員にならなくても稼げるじゃないですか。あんまり貧困とか関係ないんじゃないかって気もするんですけど。

生死に関わるような貧困家庭もありますからね。お金を稼ぐ余裕もない。

まあ確かにそうですね。食べるものもなく放置されてるとか。金稼ぐとか教育とかいうレベルじゃないですもんね。

ただ貧困家庭の中でもすごく健全な家庭もあって。精神的に豊かというか。

精神的に豊か？

はい。親が精神的に健全というか。そういう家庭の子供たちは、自主的に図書館に行って勉強したりしますね。

そういう家庭は少ないんですか？

やはり貧困家庭にありがちなのは、親が精神的にちょっとしんどい状態なんですよ。

そりゃあしんどいですよね。先のこと考えたら不安で頭がいっぱいというか。

「抜け出せないサイクル」に入ってる親は、その怒りやストレスを子どもたちにぶつけてしまう。で、それが子どもに影響を与えるという悪循環。

そうなったら、いくら頭よくても勉強どころじゃないですよね。

そうですね。子供ではどうしようもない。

ちなみに頭の良さって遺伝では決まらないんですか？頭いい人の子どもは遺伝的に頭がいいとか、頭悪い夫婦の子供は遺伝的に頭が悪いとか。

知能が遺伝するかどうかってことですか？

はい。

身体的能力はかなり遺伝が影響するんですけど。

足が速いとか？

そうです。ただIQに関しては、そもそも我々は脳を全部使いきってないので、後天的なもののほうがデカいと思いますね。

でも、生まれつきの「頭いい・悪い」ってありますよ。特に記憶力においては。「なんでこんなに暗記できるの！？」って人いますもん。

生まれつき記憶力が優れてる人はいますね。でも大脳レベルのことはかなり後天的だと思います。いくらでも開発しようと思ったらできるはず。

誰もまだ使ってない部分が山ほどあると。

そうです。

じゃあ結論的には、貧困家庭は本人の意志で断ち切れるってことですか？

さっきも言いましたけど、大事なのはIQよりも精神的なEQのほうですね。EQがIQに与える影響ってかなりデカいと思うんで。

じゃあ遺伝子よりも貧困よりも、精神的な状態が重要だと。

私はメンタルのほうだと思います。最大の問題は。

ということは、親のメンタルが健康であれば、べつに家庭が貧しくても何とでもなる？

何とでもなるんじゃないですか。メンタルさえ健全であれば。

でも貧しくて親のメンタルがちゃんとしてるって、なかなか難しいですよ。「子どもに食わすもんがない」とか「来月の給食費払えない」とか。

そうですね。

メンタルって、やっぱ経済的な貧しさとか豊かさと関係してません？

いや、めっちゃ関係してます。

ということは、貧困だから連鎖するんじゃなくて、貧困でメンタルがやられてしまうから連鎖するってことですか。

そうです。

どうやったらそのサイクルから抜け出せるんですか。やっぱ誰かが手を差し伸べるしかないんですか？

托鉢ってあるじゃないですか。

たくはつ？僧侶が家を回るやつですか。

そう。「托鉢は貧しい家に行きなさい。金持ちのとこに行ったらいけない」とお釈迦さんは言ってまして。

え！貧しいところに行って、お米とかお金とかもらえって言うんですか。

はい。それで貧しい人がくれても「一切お礼を言ってはならない」と。

なんと！お釈迦さま訳がわかんないです。

逆に托鉢した側が「ありがとう」と言われる状況をつくりなさいと。

「は？」って感じですけど。

弟子も聞き返すんですよ。「それ、おかしいんちゃいますか？金持ちのところ行ってもらったほうがええんちゃいますか？」って。

そりゃあそうですよ。

弟子は、もらったら「ありがとう」って言わなあかんでしょって。

１００％弟子が正しいです。

でも、お釈迦さんはいう訳です。「違う。貧しい人ほど、人に何かを与えて感謝することなんてないから、その機会をつくってあげなさい」って。

すごい理屈ですね。

っていう逸話があって。心の状態を何か支援してあげる仕組みがあったら、連鎖から抜け出せるような気がするんですけどね。

でも確かにそういう一面はありますよね。稼げるようになるためには人の役に立つことをやりまくったほうが早い。

そうですよね。

でもそんなこと言おうものなら「それは、おまえが金持ってるから言えるんだ」って叩かれますけど。

やっぱり心の余裕がないから自己肯定感がすごく低い。すごく狭い世界の中で生きてるので「自分はできない」「世の中が悪い」となってしまう。

じゃあ、まずは自己肯定感を高めるってことが最初ですか？

そういう場を作ってあげることが必要。

もらうんじゃなくて、与える場を作ってあげると。そしたらサイクルから抜け出せると。

そうです。

でも、そんなこと言ったらものすごく叩かれそうですけど。「何が『与えよ』じゃ！」とか言われそう（笑）

意識の世界って、ブレーキとアクセルが逆についてるので。逆を踏ませるっていうのは、社会的にお手伝いできるはず。

与え続けるだけではダメだと。

それだとサイクルから抜け出せない。逆のことやってしまってる気がします。