// 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 // |
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。 |
《第26回》真面目に商売するということ
「真面目に仕事をしろ」なんていう言葉があります。
この「真面目」という言葉の意味。
調べてみると「本気であること」「真剣であること」と書いてあります。
なるほど。つまり、「真面目に仕事をしろ」とは、「本気で仕事をしろ」と言うこと。
ただ私、思うんですよね。
人によって「真面目」とか「本気」の基準って全然違うんじゃないか?って。
私の仕事は、店舗経営をしているオーナーさんと一緒にお店の集客を考えること。
冒頭に挙げた「真面目に仕事をしろ」を私に当てはめるなら「真面目に集客を考えろ」となる訳です。
「真面目に集客を考える」
もちろん、オーナーさんに喜んでもらいたいので、いつも真面目に集客を考えます。
でも、不思議と「私が真面目に考えた事が、他の人から見たら不真面目に見えてしまう」なんていう事があるようなのです。
例えば、私が集客を考える時に時折使う方法。
それが「オーナーさんのお店の周りにあるお店のお客さんにアピールする」というやり方。
要は「周りのお店が集客した人に向けて、自分のお店の宣伝をする」という事。
でも、こんな話をすると、ちょっと引かれてしまう時があるんです。
「周りのお店の集客に便乗するなんて不真面目じゃないのか」と。
私にとっての「真面目」が、見る人によっては「不真面目」に見える。
何が真面目で、何が不真面目なのか?
結局のところ、これはその人の価値基準によるので、正解はないのかも知れません。
ただ、私の方法が不真面目だと感じる人に聞いてみたいのです。
「他のお店に便乗しないのなら、そもそも立地を気にする必要もないのではないか?」
「他のお店が集客してくれているからこそ、人通りがあるのではないか?」って。
18年前、私が開業した1号店は駅から徒歩8分。
商業地域と住宅地域の境目にあり、周辺には全くお店がありませんでした。
お店の前は、5分に1人でも誰かが通ってくれればラッキーという立地。
そのため、自分のお店単体で集客することの難しさはよく分かります。
でも、そんな集客で苦しんだ経験があるからこそ、自分で選んだ立地を最大限活かそうと努力をする事こそが本当の真面目なのではないかと思うのです。
「向かいのお店のお客さんから自分のお店はどう見えるのか?」
「隣のお店から出てきたお客さんにアピールするためにはどうすべきか?」
自分が置かれている環境を最大限利用しようとすること。
自分の手元にある資源をフル活用して、できる限り苦労をせずに成果を上げる方法を考える努力をすること。
これこそが私が考える「本当の真面目」であり、逆に自分が持っている資源を活かそうとせず、安易に「頑張れば成果が出る」と考えてしまうことの方が、よほど成果を上げる努力をしていない「本当の不真面目」ではないかと思えて仕方がないのです。
著者/辻本 誠(つじもと まこと)
<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計28店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。