第150回 イベント頼みの集客

 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

起業してから数年間、私のお店では毎月何かしらのイベントをお客さんに向けて用意していました。

特定のジャンルに絞ったウイスキーを集めてみたり、どこかの国を特集した料理を提供してみたり。当時の私と同じように、こうしたイベントを用意することでリピーターさんの集客を増やそうと考えるお店は多いのではないでしょうか?

もちろん、こうした取り組みを否定するつもりはありません。

ただ、私のお店に限って言うならば、こうしたイベントを毎月用意していた頃とそれを止めた後を比べてみると、イベントによる集客を止めた後の方が業績は良くなったという事実があるのです。

そんな経験から、今回はイベントによる集客について考えてみようと思います。


「毎月、何かしらの特集を組んでリピーターさん達に楽しんでもらう」
この考え方はとても良いと思いますし、実際こうしたイベントで毎月集客できているお店もあるでしょう。

じゃあ何故、私のお店がこうしたイベントで集客しようとすることを止めたのかというと、それはイベントでの特別感を作り出すことで集客しようとするよりも、毎日お店で提供する商品の価値を高めることに力を注ぐ方が大事だと考えたからです。

私たちはつい、期間限定による希少性や特別感というものを演出することで、それを集客に結びつけようと考えてしまいがちな気がします。

事実、私自身もこうしたイベントを用意していた当時の本心といえば、純粋に「来店したお客さんに喜んでもらいたい」というプラスの気持ちよりも、「希少性や特別感を演出しなければお客さんに来てもらえなくなる」というマイナスの気持ちの方が強かったと言えます。

当時の私は毎月のイベントを考えることには多くの時間と労力を注ぐ一方、毎日提供しているグランドメニューの改善にはほとんど力を注いでいませんでした。

でも、そんな当時の取り組みを今から振り返って思うのは、多くのお客さんがお金を払う対象として求めている商品は毎日提供しているグランドメニューである以上、まず力を注ぐべきだったのはグランドメニューの改善であり、毎月のイベントというのはあくまでプラスアルファの存在でしかなかったということ。

「自分のお店のイベントはグランドメニューの改善をしっかりやった上で、よりお客さんに喜んでもらいたいからやっているのか?」それとも「グランドメニューの価値に自信がないからイベントで希少性や特別感を無理やり作って集客しようとしているのか?」

当時の私は完全に後者でしたが、イベント頼みを止めたことで業績が良くなった事実から思うのは、やはり毎日提供するグランドメニューを改善し続け、お客さんに価値を感じてもらえる商品を提供できるようになったからこそ業績が良くなったのであり、逆にグランドメニューの改善から目を背け、安易な希少性や特別感といった小手先の集客に頼っている限り、業績が良くなることはないということ。

イベント頼みで集客しようと考えていた当時の私の経験が、これを読んだ誰かの集客を見直すきっかけになれば、とても嬉しいのです。

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著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

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