日曜日には、ネーミングを掘る ♯116「有名(ありな)の人」

今週は。

ちょいと長い仕事の話を一席。

2年ほど前から安田(佳生)さんと一緒に
ホームテック株式会社(本社:東京多摩市)の
リノベーションブランド『エントリエ』の
お手伝いをさせていただいている。

エントリエはウェブマガジンを活用した
オーガニックな集客を目指してきたが、
この6月から新たな集客と
カスタマーアプローチに
チャレンジすることになった。

どのような試みか。

手短に言うならば、
従来のように会社(私たち)を
主語としたやり方ではなく、
そこで働く個人(私)を
主語としたやり方ということになる。

具体的には、
まず『エントリエ』ブランドに
かかわる6名のメンバーが
ウェブマガジン上で
自身のブログを立ち上げて、
週1回記事を発信する。

それぞれの記事の最後には
個別の問い合わせ窓口を設け、
ブログを読んだカスタマーは、
「この人にリノベの相談したい」
「この人と一緒にリノベをやりたい」
と思った人に直接エントリーできる。

もちろん受注が決まった場合には、
当該スタッフが担当者となり、
プランニングや設計を含む
全体のディレクションを行う。

つまり個人を全面的に
押し出したブランドに
チェンジしようという試みである。

リノベーション業界に限らず
企業が自社の商品やサービスを
PRして集客する場合、
主語を「私たち」として
行うことがほとんどである。

しかし、この方法だと
誰が担当者になるかわからない。

会社のブランドを信頼して依頼しても、
担当者がへっぽこだったら、
希望するリノベーションは
到底実現できないだろう。

自分のライフスタイルに
こだわりのあるカスタマーが、
果たしてこうしたやり方に
満足しているだろうか。
多くはしてはいないだろう。

このような仮説にもとづき、
上記のカスタマーにアプローチしていこう
というのが試みの出発点にあった。

メンバーのブログを
どのようなテーマにするかは、
打ち合わせを何度も重ねて決定した。

最大のポイントは、
書き続けられるかどうか。

そのためには、
書かされるのではなく、
本人が書きたいテーマでなければならない。

企業ブログの多くが途中で頓挫するのは、
会社から言われて
書きたくもないことを書かされるからだ。

そんなん私かてややわ。

そこで今回、メンバー全員に
仕事観や人生観についてのアンケートを行い、
個性に合わせたテーマを選んでいただいた。

決定したタイトルは、以下の通り。
せっかくなのでブログの著者と
併せて紹介してみよう。

『アニマルシェ』
(澤雄太さん)

『色はにほへと』
(鈴木栄弥さん)

『ただいま花嫁修業中』
(三島美史さん)

『リノベの神はディテールに宿る』
(北島一広さん)

『片づく家のつくり方』
(小林めぐみさん)

『男たちは、みんな宇宙人』
(中田浩江さん)

詳しい内容までは割愛させていただくが、
原稿は事前に拝見させていただいている。

びっくりしたのは、
「みなさん、書けるじゃないですか!」
ということだ。

しかも、全員にちゃんと
“らしさ”があるのである。

もちろん文章の上手下手はある。
はじめの数か月は
友人知人だけしか
読んでくれないかもしれない。

いいのである。
それでいいのである。

大切なのは、自分の名前で踏み出すこと。
無名の人から、
有名(ありな)の人になることなのだ。

コツコツと続けていくことで、
文章の質は上がり、読者も増えていく。
それは、私自身がこのブログを
2年間続けて感じていることでもある。

自分の考えや想いを言葉にすることで、
自分を客観視できることによる効果は、
個のレベルを間違いなく向上させ、
個のアウトプットの集積は、
やがて企業そのものの価値を
上げていくことにもつながるだろう。

むろん『エントリエ』の試みが、
すべての業界業種に
当てはまるとは限らない。

しかし、
個人に内在する光(個性)を探り当て
輝かせるプラットフォームとならない限り、
企業の未来は細っていくばかりだと思う。

そのとき、
私たち主語で生きてきた企業は、
個の力を見くびっていたことに
はじめて気がつくのかもしれない。

 

>>リノベーションブランド『エントリエ』
entrie.net

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