第10回 「病院は下請け業者!?」
お医者さん
クリニックを経営する私は、医者であると同時に経営者だ……でも、助成金申請やらスタッフの評価やら、あるいは調子が悪いPCの修理手配まで、やることが多すぎてほんとに忙しい。
お医者さん
人に頼めばって言われるけど、自分でやった方が早いんだよなあ。そんなこんなであれもこれも自分でやるようになって……時給換算したら恐ろしい数字が出そうだな。
先生、いよいよ下請け脱却ですね!
絹川
お医者さん
下請け?いや、私は経営者で下請けじゃないんだけど。…って、君は誰?
ドクターアバターの絹川です。お医者さんの様々な相談に乗りながら、「アバター(分身)」としてお手伝いをしています。
絹川
先生、本当は周りに任せて自分のやりたいことに専念したいんですよね。
絹川
お医者さん
う〜ん、まあね。最初はスタッフや業者さんに任せていたんだけど、時間もお金もかかるし、説明してる間に自分がやった方が早いなって。
能力の高い人に多いパターンです。実際先生は自分で何でもできちゃうんでしょう。
絹川
お医者さん
まあね!…って、おだてても何も出ないよ(笑)。それより下請けってどういうこと?
ズバリ言えば、病院やクリニックはみんな下請けなんです。国という絶対的な元請けの下でビジネスをしている。
絹川
お医者さん
……まあ、そういう言い方もできなくはない、か。保険医療制度は国の都合で変わることがあるし、医療費削減、なんて方向性も私たちに断りなく決めてしまうし。
仰るとおりです。この構造は一般の中小企業などと同じです。景気が拡大している局面では問題ないのですが、不況などで元請けが利益確保に走ると下請けは極端に儲からなくなる。
絹川
お医者さん
確かに、そう言われてみれば立場は同じか。
そうなんです。ですから重要なのは、自らが元請けのビジネスを持っておくこと。上の都合に振り回されない、自分が元請けのビジネスを。
絹川
お医者さん
なるほど、言いたいことは理解できたよ。でも……言うほど簡単なことじゃない。具体的にどうすればいいのかな。
シンプルに言えば、自社製品や自社サービスの開発、およびその販売ルートの確保、というところでしょうか。医療業界であれば、自費診療とそれに付随するサービス、が一番に思い浮かびますね。
絹川
お医者さん
自費診療……つまり、保険医療制度の傘の下から抜けるということだね。正直、その決断には勇気がいるな。
急に抜ける必要はありません。何年かかけて徐々に事業費率を変えていけばいいんです。保険診療のクリニックと自費診療のクリニックを別々に経営する、という方法もある。実際そういう経営をされている先生を知ってますよ。
絹川
お医者さん
なるほど、「保険か自費か」という極端な考え方ではダメなんだな。
そうなんです。きっちり事業計画を立てる必要がありますね。ともあれ、「いいものにはお金をかける」という時代になってきているのは事実です。自費診療のニーズは高まっていくと思いますよ。
絹川
お医者さん
それで「下請けを脱却」ということだね。よし、さっそく事業計画を作ってみるから、チェックしてくれるかい?
はい!かしこまりました!
絹川
医療エンジニアとして多くの病院に関わり、お医者さんのなやみを聞きまくってきた絹川裕康によるコラム。
著者:ドクターアバター 絹川 裕康
株式会社ザイデフロス代表取締役。電子カルテ導入のスペシャリストとして、大規模総合病院から個人クリニックまでを幅広く担当。エンジニアには珍しく大の「お喋り好き」で、いつの間にかお医者さんの相談相手になってしまう。2020年、なやめるお医者さんたちを”分身”としてサポートする「ドクターアバター」としての活動をスタート。