「翌日の予約が多いと憂鬱になるお医者さん」〜お医者さんは、なやんでる。 第48回〜

第48回 「翌日の予約が多いと憂鬱になるお医者さん」

お医者さん
お医者さん
おいおい……明日もこんなに予約が入ってるのか。言っちゃ何だが、もう少し減ってくれたらいいのに。
お医者さん
お医者さん
なんて、患者数が減って困っている病院も多いんだ……ありがたいと思わなきゃな。さ、事務作業を終わらせないと。

勤務医時代はもう少し楽だったのにな、って思ってませんか、先生?
絹川
絹川

お医者さん
お医者さん
……まあねえ、開業するのが夢だったとは言え、思い描くのと実際にやってみるのじゃ全然違ったのは事実だね。見てよこれ、今日もこれだけの書類を片付けて帰らないと……って、なんだよいきなり。あなた誰?

はじめまして、ドクターアバターの絹川と申します。お医者さんの様々な相談に乗りながら「アバター(分身)」としてお手伝いをしている者です。
絹川
絹川

お医者さん
お医者さん
ドクターアバター? なんだか知らないけど、こっちは忙しいんだよ。明日も予約でいっぱいなんだ、こんな雑務は早く終わらてしまわないと。

でも先生、どこかで根本的な解決をしない限り、この生活はずっと続きますよ。忙しいときほど、一度立ち止まって考えてみないと。
絹川
絹川

お医者さん
お医者さん
……あのねえ、そんなことができるならとっくにやってるって。見ての通りうちはスタッフをほとんど雇っていないし、全部僕がやらないといけないんだよ。

なぜスタッフさんを雇わないんです? 仕事を外部に委託することもできるでしょう?
絹川
絹川

お医者さん
お医者さん
そんなことやってたら、費用がかかって仕方ないじゃないか。僕はまだ独立数年だし、蓄えだってまだまだ少ないからね。今はとにかく経費削減して、自分ができることはやらないと。

でも、それならなぜ、明日の予約が多いと憂鬱になってしまうんです? 
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
そりゃ……しんどいからさ。あなたがさっき言ったように、勤務医のころは診察に集中できたからこれくらいの数、なんてことなかったよ。でも今はそれ以外の仕事が多すぎて、肉体的にも精神的にも余裕がないんだ。

先生、同じような悩みを抱えているお医者さんは多いんです。特に先生のように、責任感が強く、なんでもこなせてしまう器用な先生ほど、そうなんですよ。こういうケースの場合に私がご提案するのは、ごくごく簡単なことです。
絹川
絹川

お医者さん
お医者さん
……簡単なこと?

ええ、ズバリ「業務のリスト化」です。
絹川
絹川
先生がいま担っている業務を、とにかく全部書きだしてみるんです。たとえば「火曜日の朝に燃えないゴミを出す」なんて細かい作業も含めて、全部です。
絹川
絹川

お医者さん
お医者さん
……そんなことして何になるんだよ。

やってみるとわかりますが、習慣でなんとなくやっていたり、何かのついでにやったりしていることが結構たくさんあるんです。自分では気づきにくい、言わば「可視化されていない業務」です。どうです? 少し考えて見るだけでいくつも浮かびませんか。
絹川
絹川

お医者さん
お医者さん
……まあ、確かにそうかもね。でも、それがわかったところで、やらなきゃいけないことに違いはないだろう?

まあまあ慌てないで。すべての業務を出し尽くしたら、そのリストをいろいろな形で分類してみてください。
絹川
絹川

お医者さん
お医者さん
分類……

ええ、例えば「好き・嫌い」とか、「儲かる・儲からない」とか、「時間がかかる・すぐできる」とか。そしてあるいは、「自分にしかできない・他の人でもできる」とか。
絹川
絹川

お医者さん
お医者さん
……なるほど、なんとなく言いたいことがわかってきたぞ。

ええ、お医者さんになるような方は皆さん優秀ですから、それらの分類結果を前にすれば、何かしらの戦略が浮かぶはずです。「そうか、こことここの業務を月曜日に集約して、外部サービスに頼めば1時間で終わるな」とか。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
「1時間3000円で済むなら、それは外注して自分は診察した方が得じゃないか」とか?
仰るとおりです。こうして頭の中で想像するだけでパッとそういう判断ができるんです。逆に言えば今の先生は「ただただ忙しくて、とにかく余裕がない」というある種の先入観に囚われ、正常な判断ができていないということなんです。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
なるほどね。「一度立ち止まって考える」というのはそういうことか。
ええ。そして状況を正確に把握さえできれば、先生はおそらく最適な戦略を見つけることができるでしょう。中長期的な視点で見れば、そちらの方がずっと建設的ではないですか?
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
そのための業務リスト、ってわけだ。わかったよ、ちゃんと時間をとって、じっくり取り組んでみるよ。

医療エンジニアとして多くの病院に関わり、お医者さんのなやみを聞きまくってきた絹川裕康によるコラム。


著者:ドクターアバター 絹川 裕康

株式会社ザイデフロス代表取締役。電子カルテ導入のスペシャリストとして、大規模総合病院から個人クリニックまでを幅広く担当。エンジニアには珍しく大の「お喋り好き」で、いつの間にかお医者さんの相談相手になってしまう。2020年、なやめるお医者さんたちを”分身”としてサポートする「ドクターアバター」としての活動をスタート。

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