このコラムについて
「担当者は売り上げや組織の変革より、社内での自分の評価を最も気にしている」「夜の世界では、配慮と遠慮の絶妙なバランスが必要」「本音でぶつかる義理と人情の営業スタイルだけでは絶対に通用しない」
設立5年にして大手企業向け研修を多数手がけるたかまり株式会社。中小企業出身者をはじめフリーランスのネットワークで構成される同社は、いかにして大手のフトコロに飛び込み、ココロをつかんでいったのか。代表の高松秀樹が、大手企業とつきあう作法を具体的なエピソードを通して伝授します。
本日のお作法/男は売るぜよ 〜フーテンのYさん〜
某大手さんにて営業研修。
社内半日 × 社外半日のコラボ講座で、先ずは、社内講師として、Y営業部長が、ご登場。
投影スライドのトップには、なぜか、渥美清さん演じる「フーテンの寅さん」が大きく映し出されます。
そして、タイトルは「男は売るぜよ」。
Yさんが語り出します。
「『男はつらいよ』って知ってる?」
「主人公の『車 寅次郎(くるま とらじろう)』は、通称『フーテンの寅』と呼ばれる、全国を渡り歩く行商人。まあ、営業マンや」
「ひとつの場所に縛られることなく、自由気ままに、気に入った土地・場所で働く、そんな『寅さんの働き方』は、今では『ワーケーション』などと呼ばれ、昨今定着しつつある『新たな働き方』そのものなんやよ」
「時代がようやく当時の寅次郎に追いついてきた感があるくらい、この映画は、古臭くなく、多くの学びがある」
「そんな『男はつらいよ』から、今回は、プロの行商人としての『凄腕スキルとスタンス』を紹介したいと思う」
この時点で、高松は引き込まれまくり!!
続けて、
「営業になりたての甥っ子が、『ツラい、売れない、、』と、愚痴をこぼすシーンがあるんやけど、
その気持ちを受け止めながらも、近くにある鉛筆をヒョイと持ち上げ『俺に売ってみろ』と甥っ子にロープレを持ちかけるんや」
「甥っ子はとまどいながら、『買ってください。消しゴム付きですよ』と話はじめるものの、寅さんから『要らん!』と断られてしまい、切り返しトークも出せずに諦めちゃうんよ」
「で、今度は、寅さんが見本を見せるんや」
「たった2分で、相手に気持ちよく『買います!』と言わせちゃうんやけど、どんな売り方をしたと思う??」
ワタクシ、しっかりとボイスメモを取りましたので、皆様にも共有いたします!
「寅さんはな、いきなり売り込む、なんてしない。
じっと鉛筆を見た後、おもむろに話し始めるんや」
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オレはこの鉛筆を見ると、おふくろのことを思い出すんだ。オレは不器用だったから、満足に鉛筆ひとつ削れなかった。すると夜、おふくろが鉛筆を削ってくれたんだ。火鉢の前できちんと正座して削ってくれるんだけど、削りカスが火の中に入るとプーンといい香りがしてな。
きれいに削ってくれた鉛筆だけど、勉強もせずに落書きばっかりしていた。でも削った鉛筆が短くなると、その分だけ頭が良くなった気がしたもんだ。
お客さん、ボールペンってものは便利でいいでしょ?
だけどな、味わいってもんがない。その点、鉛筆は握り心地が一番。木の温かさ、六角形が指の間にきちんと収まる。ちょっとそこに何でもいいから書いてごらんよ。
どう?デパートでお願いすると1本60円はする品物だよ。だけど、ちょっと削ってあるから30円だな。
いいよ、いいよ、タダでくれてやったつもりで20円!
いま出せ。すぐ出せ。さっさと出せ!
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「飲み込まれた甥っ子が20円を支払うも、我にかえり『まいりました!』って、敬服するまでの時間は、なんと、たったの2分間や!」
「これが、『営業の極意』ってやつよ!」
とYさんはご満悦。
「この甥っ子はな、『吉岡秀隆』や。いい役者になったよな。
『Dr.コトー』見た?『ALWAYS 3丁目の夕日』も良かったよな?
『北の国から』の時から見てるけど、ほんま良い役者になったよなぁ」
「みんなもいい営業マンになってくれよ!」
「決して『営業はつらいよ、、』なんて言わんでくれよ」
「じゃ、残りは、外部の先生から、色々と学んでな。ほな!」
と、持ち時間の3時間を大幅に短縮して、わずか、1時間で、研修会場から出ていってしまったとさ。。
フーテンのYさん、、自由気まますぎやーーー、、