第54回 日本に大手ハウスメーカーがある理由

この対談について

住宅業界(新築・リフォーム・不動産)の「課題何でも解決屋」として20年以上のキャリアを持つ株式会社ランリグが、その過程で出会った優秀な人材を他社に活用してもらう新サービス『その道のプロ』をスタートしました。2000名以上のスペシャリストと繋がる渡邉社長に、『その道のプロ』の活用方法を伺う対談企画。

第54回 日本に大手ハウスメーカーがある理由

安田
日本ではどこの地方に行っても同じような家が建ってますよね。でも海外って地域ごとに特徴があって、家にも個性があるような気がするんです。

渡邉
海外には日本にあるような大手ハウスメーカーがないんですよね。だから良くも悪くも画一化されていないんだと思います。
安田

へぇ、そうなんですね。逆に日本はなぜ大手ハウスメーカーがマーケットを仕切るようになったんでしょう?


渡邉

国の政策による部分が大きいでしょうね。ハウスメーカーと連携して、国が主導で家を建てる時代がずっと続いてきましたから。

安田
なるほど、国の方針だと。そういう意味では終身雇用とも実にうまく連動してましたよね。一つの会社で定年まで働いて、住宅ローンを返し続ける。そうやって会社や国に人生を捧げさせる、と(笑)。

渡邉
そうかもしれません。ちなみに住宅ローンって、貸した側からすると貸し倒れがないとてもいい商品なんですよね。給与天引きで、毎月ちゃんと払ってもらえるので。
安田
確かに。そしてその金利で銀行や国、住宅会社が潤っていたわけだ。

渡邉
仰るとおりです。もっとも、そういった事情から日本は「新築でどんどん建てる」方針となり、その結果ヨーロッパやアメリカと比べて中古物件の市場が成熟しなかったわけですが。
安田
そうか、ヨーロッパだとむしろ中古物件がメインですもんね。日本では「中古物件=空き家」というイメージで、あちこちガタがきている家を想像してしまいますけど。

渡邉
実際、昔の住宅って性能が高くなかったんですよね。だから20~30年で価値が0円になってしまう。今でこそ「100年住宅」みたいなことを打ち出している会社も増えてきましたけど。
安田
へぇ、日本の家は性能がいいのかと思ってましたけど、そうでもなかったと。高度成長期に日本人がこぞって買っていたマイホームもそうなんですか?

渡邉
その頃と比べても今はかなり性能が上がってきていますね。それもあってか、最近になってようやく中古物件にも関心が向くようになってきましたね。国土交通省もキャンペーンなどで力を入れていますし。
安田
住宅のクオリティだけじゃなく、働き方の変化も影響していると思います。今は大手でさえも終身雇用がなくなってきているし、皆が皆「新築でマイホームを建てて、一国一城の主だ!」なんていう時代じゃないですからね。
渡邉

確かにそうですね。

安田
ちなみに渡邉さんがいま家を買うなら、どんな買い方をするんです? やっぱり中古ですか?

渡邉
そうでしょうね。新築って買った瞬間に価値が1~2割目減りするじゃないですか。そこからどんどん価値が下がっていって、でも14~15年で一度止まるんです。だから築15年とか20年の中古物件を買ってリノベーションするのがお得だと思います。
安田

ははぁ、なるほど。ある程度上物の価値が下がってきたところで買って、自分の好きなようにリノベーションして住むと。


渡邉
そういうことです。築40~50年の物件でも、躯体さえしっかりしていれば、きちんとリフォームしてそこからまた40~50年住むこともできますから。
安田

なるほどなぁ。ちなみに大手ハウスメーカーが仕切っていたマーケットは今後どうなっていくと思いますか?


渡邉
変わっていくと思いますよ。資金力のある親世代にはまだ大手信仰が残ってますが、一世代下は感覚が全然違う。大手とか中小に関わらず、「自分が望む暮らしを実現してくれるような工務店さん」にお願いしたい。そんな方が増えている印象です。
安田

なるほど。でも大手ハウスメーカーはどうするんでしょうね。新築をバンバン建てて利益を上げていたけど、それができなくなってくるわけでしょう?


渡邉
リフォームに参入したり、メンテナンスも自社でやるようになるんじゃないかとは思います。とはいえ規模を考えるとそれだけでは足りないでしょうから、多角化するなりして広げていかないと維持していくのは難しいでしょうね。
安田

そうですよね。デジカメが主流になってフイルムを作らなくなった富士フイルムが化粧品事業を始めたように、大きな変化が必要になってきますよね。


渡邉
そう思います。すでに地域によっては前年比で10~20%売上が落ちているところもあるので、シェアの取り合いになってますね。
安田

へぇ。テレビCMもまだガンガンやって儲かってるように見えますけど、もしかするとあれは断末魔だったりするかもしれませんね。


対談している二人

渡邉 昇一(わたなべ しょういち)
株式会社ランリグ 代表取締役

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1975年、大阪市に生まれる。大学卒業後、採用コンサルティング会社ワイキューブに入社。同社の営業、マーケティングのマネージャー、社長室長及び、福岡などの支店立上げを担当し、同社の売上40億達成に貢献した。29歳の年に株式会社ラン・リグを設立し、今期20期目。述べ900社以上の住宅会社のマーケティング、人材コンサルティング支援と並行し、500店舗以上が加盟するボランタリーチェーン「センリョク」など、VC、FC構築にも多数携わる。また、自身が司会を務め、住宅業界の経営者をゲストに招き送る自社のラジオ番組は、6年間で、延べ300回以上の配信を経て、毎月2万人以上の業界関係者が視聴する番組に成長した。今年5月には、2000人以上のプロ人材とのネットワークを生かした~社長の右腕派遣サービス~【その道のプロ】を本格リリース。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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