庭師でもない。外構屋でもない。京都の老舗での修業を経て、現在は「家に着せる衣服の仕立屋さん(ガーメントデザイナー)」として活動する中島さん。そんな中島さんに「造園とガーメントの違い」「劣化する庭と成長する庭」「庭づくりにおすすめの石材・花・木」「そもそもなぜ庭が必要なのか」といった幅広い話をお聞きしていきます。
第43回 中島流「借景の作り方」
前回の対談で、「景色と借景は違う」というお話がありましたね。きれいな山々が見えるだけでは単なる「景色」であって、お庭とのつながりがないと「借景」とは言えないと。
そうですね。さらにいうと、「見るだけのお庭」ではなく、使い勝手もよくなるよう工夫することも大事で。私たちが担当する際は、そういうことにも気をつけながら進めさせていただいています。
素晴らしいですね。でもそうすると、けっこう高い技術が求められるんじゃないですか?
そうですね。図面に描き切れない部分もあるので、現地の臨機応変な対応も必要になります。
なるほど。ということは、実際にお庭を作りながらデザインを完成させていくイメージですか。そういう中で「もっと景色を活かすためにこうしよう」と、デザインが変わっていくこともあるんですか?
ありますね。特にリノベーションの場合は、もともとある石を掘り起こして使うことも多くて。つまり、土に埋まっていた部分の形によって、配置なんかも変わってくるわけです。
そうですね。山を景色に入れるなら、近い方がつなげやすいですね。でも、山ほどのものがなくても、少し雑木林があるだけで借景は作れます。
へぇ〜、そうなんですか。つまり、敷地の中にも林が続いてるような雰囲気にすると?
へぇ、家の中から見た景色だけを使うのではなく、外の景色を利用することもあるんですね。ちなみに、部屋の雰囲気とも合わせたりするんですか? 洋風な部屋の窓から見える庭が和風だと、ちょっと違和感ありますよね。
お部屋の雰囲気はかなり気にしますね。和室の前には、和の雰囲気が強いお庭をつくります。とはいえ、最近は和でも洋でもないタイプの家がほとんどなので、庭にも和風や洋風という特徴が出すぎないようにしていますけれど。
確かに言われてみると中島さんの作るお庭って完全に和風というわけでもないし、かといって洋風という感じでもないですね。昔ながらの日本家屋のようなお家のお庭だったら、完全に和に寄せて作るわけですか。
まぁ、そのあたりは住んでいる方の好みですので、絶対の正解はないんですけれどね。あくまで私たちは、その場の雰囲気に合わせたお庭を提案するだけでして。
なるほど。ということは、これから家の形が変わっていったら、中島さんが作るお庭も変わっていく可能性があるということですか。
もちろんそうだと思います。お客様からいただくご要望に加えて、僕が家を見て感じたイメージでデザインを作っているので。
デザインするときには家のどういうところを見るんですか?
家の形や窓の大きさなどですね。角ばっているか、丸みを帯びているかによって、庭に使う材料を変えたりしています。あとは色味も重要ですね。家の色と全く合わない外構にしてしまうと、どうしても違和感が出てしまうので。
全体的に一体感が出るようにするんですね。家の色がまだ決まっていなかったら、中島さんに相談することもできるんですか?
もちろんです。いろいろなノウハウがありますので、お気軽にご相談いただければと思いますね。
なるほどなぁ。景色の作り方にもいろいろな要素があって面白いですね。
対談している二人
中島 秀章(なかしま ひであき)
direct nagomi 株式会社 代表取締役
高校卒業後、庭師を目指し庭の歴史の深い京都(株)植芳造園に入社(1996年)。3年後茨城支店へ転勤。2002・2003年、「茨城社長TVチャンピオン」にガーデニング王2連覇のアシスタントとして出場。2003年会社下請けとして独立。2011年に岐阜に戻り2022年direct nagomi(株)設立。現在に至る。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。