第301回 「宇宙兄弟」と「侘び寂び」から生まれるお仕事

 このコラムについて 

「担当者は売り上げや組織の変革より、社内での自分の評価を最も気にしている」「夜の世界では、配慮と遠慮の絶妙なバランスが必要」「本音でぶつかる義理と人情の営業スタイルだけでは絶対に通用しない」
設立5年にして大手企業向け研修を多数手がけるたかまり株式会社。中小企業出身者をはじめフリーランスのネットワークで構成される同社は、いかにして大手のフトコロに飛び込み、ココロをつかんでいったのか。代表の高松秀樹が、大手企業とつきあう作法を具体的なエピソードを通して伝授します。

本日のお作法/「宇宙兄弟」と「侘び寂び」から生まれるお仕事

 

「宇宙兄弟『完璧なリーダー』はもういらない」という書籍をご存じでしょうか?

某大手さんの「次世代リーダートレーニング」実施に向けた、人事部門の方々との打合せで、そう投げかけられました。

「マンガ・宇宙兄弟」のファンでもあり、同書にも目を通したことがございますので、

①完璧なリーダーはいらない

②完璧を目指し、率先垂範するのではなく、自然体で支援的に周囲にかかわる

③等身大の自分らしいリーダーシップを活かしたチームづくりを目指す

みたいな内容ですよね?

とスラリと答えます。

「そうなんです」

「ウチって、『真面目な社員』が多くて、特にリーダー層の人たちは『優秀でなければいけない、完璧であらねばならない』というイメージにとらわれすぎているんですよ」

「それで、失敗すること、間違えてしまうことを“悪”と捉えてしまい、結局、動きが遅くなってしまう、、」

そんな状況のようなのです。

先行きが不透明で将来予測が簡単ではない時代です。

常に正解を提示するリーダーを務めようとするなど、不可能に近いこと。

「正解ではないかもしれないけど、自分なりの考え」を提示して、状況に応じて臨機応変に対応する。

「不完全な自分」を認め、周囲に「オープンに接する」ことで、周囲の考えやアイデアを集められる。

そこから新しい気づきを得て、「皆でアップデート」していく。

「そんなリーダートレーニングを作っていきたいんです!」と人事マネジャーさんは語ります。

「完璧、優秀でなければアカン」という呪縛に囚われ、自ら苦しみ、、

正解に固執して周囲の柔軟な発想をも妨げてしまう、、

実際に、多くの組織にそのようなリーダーの苦悩が存在しています。

そんな流れから、人事担当役員のTさんがポロリと語ります。

「日本には『侘び寂び』ってあるやろ?」

「完璧なモノと不完全なモノの対比とした、『日本人の美意識』よ」

「劣化したり、不足したり、欠けたりしている『不完全な状態』を否定的に捉えるんやなく、、」

「むしろ自然や時間の経過による様々な変化に美しさを見出し、生まれた静寂を受け入れ『深く味わう』という美学」

「僕はそんな『侘び寂び』を感じられるリーダートレーニングを作りたいんよ」

枯山水の庭園、古びた神社仏閣、不揃いな茶碗、散りゆく桜、夕暮れ時の街の風景、などなど。

これらは不完全さや時間の経過、簡素な中に潜む奥ゆかしさや静けさを“美”と感じる日本独自の美意識を表しています。(高松調べ)

何やら「素敵なイメージ」を共有いただきましたが、こんなところから「組織開発」に携わらせていただくことが、私の仕事なのであります。

 

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高松 秀樹(たかまつ ひでき)

たかまり株式会社 代表取締役
株式会社BFI 取締役委託副社長

1973年生まれ。川崎育ち。
1997年より、小さな会社にて中小・ベンチャー企業様の採用・育成支援事業に従事。
2002年よりスポーツバー、スイーツショップを営むも5年で終える。。
2007年以降、大手の作法を嗜み、業界・規模を問わず人材育成、組織開発、教育研修事業に携わり、多くの企業や団体、研修講師のサポートに勤しむ。

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