この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。
安田
久野
はい。既存社員の給料を上げなくちゃいけない会社が増えています。
安田
それってつまり時給千円以下で雇っていたってことですよね。
久野
安田
6割の会社に時給千円以下の人がいると。そんなに世の中の給料って安いんですか。
久野
いやいや、安田さんはご存知ないだけで。実際そういう会社は多いです。パートさんとか、中小だと固定残業がたくさんついているとか。
安田
なるほど。固定残業代を抜くと時給が千円以下になってしまうと。
久野
はい。固定残業は時給の基礎単価にならないので。固定残業を抜いて最低賃金を超えていなくちゃいけない。
安田
初任給25万でも固定残業代を除けば千円以下のケースもある。
久野
そうです。そういうのも含めると6割ありますよっていう話。
安田
最低賃金を下回っているかどうかって社労士さんがチェックするんですか?
久野
給与計算を請け負っている場合はそうですね。最低賃金のチェックをして昇給する仕事があります。これが結構面倒で。
安田
面倒くさそうですよね。ちなみに「最低賃金を下回っている人がいる」という会社は2023年が43%。それが2024年は59%に増えた。
久野
去年から何もやってなかったってことですよね。最低賃金ギリギリまで上げてそのまま放置しちゃった。そりゃ1年後にはこうなりますよ。
安田
放置はまずいですよ。最低賃金はいずれ1500円になると言われているので。
久野
高市さんなら絶対やると思います。最低賃金1500円はもう確実ですから、7.2%ぐらい上げていかないと追いつかない。
安田
久野
安田
確かに最低賃金ギリギリですね。それでは人材獲得は厳しいってことですよね。
久野
厳しいですね。プラス3%ぐらい上げないと採用出来ない。毎年10%ぐらい上げていかなきゃいけないんじゃないですか。
安田
中小企業はどんどん廃業が進んでいくと言われています。2〜3割の中小企業が退場する可能性があると。
久野
全体で2割はいくと思います。値上げができていない会社は厳しいです。利益を圧迫しているだけなので。
安田
利益を削って給料を増やして、それでも黒字の会社はまだ大丈夫ってことですね。
久野
今は大丈夫ですけど、これからどんどん最低賃金が上がっていくと厳しい。値上げしないと無理じゃないですか。ただ値上げするとお客さんが選び始めるので。
安田
値上げしても売れる魅力がないと厳しいってことですよね。
久野
そう思います。大企業は最低賃金なんて無視してどんどん上げてきますから。
安田
久野
いずれ1500円どころじゃないペースで昇給が始まります。中小企業もこれにある程度合わせていかないと。もう若手人材は採れない。
安田
中小企業から20〜30代が消え失せるかもしれませんね。
久野
安田
難しいですよ。給料を上げても社員のスキルが上がるわけじゃないし。上げた時は喜びますけど人間ってすぐその給料に慣れちゃうじゃないですか。
久野
安田
仮に経常利益1億円の会社があったとして。100人従業員がいたら1人当たり100万円じゃないですか。つまり1人100万年収を上げたら利益がゼロになる。
久野
そうですね。でも1人100万円なんてあっという間ですよ。
安田
やはり値上げして従業員1人あたりの利益を増やしていく他ないんでしょうね。
久野
それ以外に方法はないと思います。ただ値上げして売れ続ける会社ばかりではないので。そう考えると最低でも2割ぐらいはなくなるんじゃないですか。
安田
久野
この5年で2割。そのあとまたどんどん増えていくと思います。
安田
新しい会社も出てくるでしょうけど。既存の中小企業は半分ぐらいになっちゃうかもしれませんね。
久野
半分まで行くかどうかはわかりませんけど。年間倒産件数は今の3倍ぐらいにはなるんじゃないですか。
安田
日本には3〜400万社あると言われていますから。90万社以上が倒産しちゃうってことですね。
久野
それくらい1500円のインパクトは大きいってことです。
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安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。