第101回 なぜ年齢とともに「1年」が加速するのか?

この対談について

人は何のために働くのか。仕事を通じてどんな満足を求めるのか。時代の流れとともに変化する働き方、そして経営手法。その中で「従業員満足度」に着目し様々な活動を続ける従業員満足度研究所株式会社 代表の藤原 清道(ふじわら・せいどう)さんに、従業員満足度を上げるためのノウハウをお聞きします。

第101回 なぜ年齢とともに「1年」が加速するのか?

安田

もう年末ですね。ついこの間お正月を迎えたばかりのように感じますけど。


藤原

本当にそうですよね。年々時間が経つのが早くなっているような気がします。

安田

わかります。特に50代になってからは顕著です。「あれ、もう半年経ったの?」なんて感覚は、20代の頃にはなかったですから。


藤原

そうかもしれません。まぁ私は20代前半ぐらいから「あっという間だな」とは感じていたタイプではあるのですが(笑)、それでも今ほどじゃないですからね。

安田

地球の自転速度自体が上がっていて、物理的に1日が短くなっているなんて説もあるらしいですよ(笑)。あとは生きてきた期間が長くなればなるほど、相対的に1日の体感時間が短くなるという見方もありますよね。


藤原

ああ、よく言われますよね。でも実はそれ、あまり腑に落ちていないんです。「長く生きているから短く感じる」という比較論だけでは説明がつかない気がして。

安田

わかります。江戸時代の50歳の人や昭和初期の50歳の人も、若者よりは早く感じていたでしょうけど、現代の体感的な早さはきっとそれ以上ですよね。スマホの普及で「隙間時間」が消滅しちゃったことも大きいんじゃないでしょうか。


藤原

ああ、それはあるでしょうね。何もしない空白の時間がなくなってしまった。

安田

そうなんです。何もやることがない時の10分は長く感じますが、タスクがぎっしり詰まっていると「もう今日が終わっちゃった」となるじゃないですか。


藤原

今の「タスクが詰まる」という話にも通じるんですが、そもそも現代は「やりたいこと」と「やれること」の距離が極端に短くなりましたよね。東京から大阪へ行くのも、今なら新幹線で2時間半ですけど、江戸時代なら2週間はかかっていたわけで。

安田

お伊勢参りも、昔は一生に一度行けるかどうかだったわけですもんね。近所の人を代表して誰か一人が行く、みたいな一大イベントだった。


藤原

ええ。手段が進化して「やれること」が爆発的に増えた結果、「あれもできる、これもできる」と想像が膨らみ、やりたいことが次々と出てくる。それを全部やろうとしてスケジュールが埋まり、時間が加速していく……そんな感覚なのかなと。

安田

確かに確かに。最近はやりたいことが多すぎて、本を読む時間すらなくて。「これも読みたい、あれも読みたい」と思っているうちに1年が終わってしまう(笑)。


藤原

ああ、わかります(笑)。安田さんの場合は、小さなお子さんがいらっしゃるというのも大きいでしょうね。

安田

ああ、確かに。昔は風呂に入るのすら面倒くさくてダラダラしていたんですが、今はもう仕事も育児もあるので、決めたルーティンをサクサクこなさないと回らない(笑)。


藤原

なるほど(笑)。決められたことを淡々とこなしていくと、余計に時間が経つのが早くなりそうですね。

安田

そうなんです。あと、これはあまり良くないことかもしれませんが、50代になって時間が早いのは「何も考えずに生きているから」かもしれないと。昔はもっと立ち止まって考える時間があったんですが、今は気づいたらもう寝る時間、みたいな状態で。


藤原

規則正しく生きることは素晴らしいんですけどね。思考停止した状態で1週間が過ぎ去ってしまう怖さもまたある。

安田

そうそう。とはいえ、毎日深刻に立ち止まって考えているのも大変ですしね。そう考えると、1年の大半は昨日や一昨日と同じような何気ない日々でいい。その中で、時折立ち止まって考える時間を持つのが、実は「極上の人生」なんじゃないかと最近は思っています。

藤原

なるほど。確かに何事もない日常がベースにあるからこそ、立ち止まる時間の価値が際立つのかもしれませんね。

安田

そうなんです。それにそのルーティンをやると決めたのは自分自身ですからね。子どもをお風呂に入れるのも、毎朝30分かけて丁寧に歯を磨くのも、誰かにやらされているわけではない。

藤原

30分もかけるんですね(笑)。でも実際その通りですよね。我々はかつての自分が考えたことに沿って毎日を生きている。

安田

そうそう。この肉体って、ある意味「地球から借りている」ものだと思うんですよ。だからお返しするまでしっかりメンテナンスしないといけない。まぁ、そのメンテナンスだけで1日の半分が終わっちゃうんですけどね(笑)。

藤原

確かに(笑)。脳がいつでも活発に動くようにしておくという意味では、適度な負荷をかけることもメンテナンスの一つなんですよね。そう考えると、自分で決めたスケジュールで1年があっという間に過ぎていくのも、実はすごくラグジュアリーなことなのかもしれません。

安田

そうかもしれませんね。若い頃に戻りたいと思わないのも、いま自分が決めた通りにしっかり生きているという充実感があるからなんでしょう。


対談している二人

藤原 清道(ふじわら せいどう)
従業員満足度研究所株式会社 代表

Twitter note

1973年京都府生まれ。旅行会社、ベンチャー企業を経て24歳で起業。2007年、自社のクレド経営を個人版にアレンジした「マイクレド」を開発、講演活動などを開始。2013年、「従業員満足度研究所」設立。「従業員満足度実践塾」や会員制メールマガジン等のサービスを展開し、企業のES(従業員満足度)向上支援を行っている。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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