第354回 最後にババを引くのは誰か?

この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第354回「最後にババを引くのは誰か?」


安田

NTTは雇用者の34万人分の業務をAIに置き換えるそうです。

久野

NTTに限らずですよ。実際リストラしてる会社だってあるわけじゃないですか。

安田

水面下でどんどん進んでいるんでしょうね。

久野

みんな言わないでコツコツやってる感じじゃないですか。

安田

どの部署がAIに置き換わるんですか。やはり管理職?

久野

一般職の部分が大きいと思います。いわゆる事務職ですね。

安田

いかにもAIに置き換えられそうな仕事ですよね。

久野

自動化出来るところって結構あるんですよ。まずは自動化するための人を入れて、そこをどんどん減らしていくと思います。

安田

つまり100人でやっていた事務職を10分の1にするとか、そんな感じですか?

久野

そういうことだと思います。

安田

事務職の人って世の中にたくさんいると思うんですけど。今後どうなっていくんでしょう。

久野

一定数は生き残るんですけど、生き残る条件としてAIをめちゃくちゃ使いこなせること。ここが最低ラインじゃないですか。

安田

つまりAIを使って事務職を減らすことが事務職の仕事になっていくと。

久野

もうそれに尽きると思います。だから減るというより集約される感じ。例えば秘書とか分かりやすいですよね。GoogleGeminiを使って自動的に日程調整するとか。

安田

そんなことが出来るんですか?

久野

出来るようになりました。わざわざ秘書の人が日程を見て「いついつ社長が空いてます」みたいな仕事はもう無くなるんですよ。

安田

Google Geminiが勝手にスケジュールを入れるってことですか?

久野

例えば役員や部長には秘書がつくじゃないですか。その数を減らしてGeminiを導入する。そうすると役員会や部長会のスケジュールを簡単に設定できます。

安田

なるほど。でも「AIじゃ嫌だ」って人もいそうじゃないですか。秘書に調整してほしいとか。一声かけてほしいみたいな。

久野

そういう人は別料金じゃないですか。

安田

別料金?

久野

人間がサポートするサービスは追加料金を加算するようになると思います。

安田

なるほど。人間がやると高くなるわけですね。じゃあそこもどんどん減っていく感じでしょうか。

久野

そう思います。特定の年代の人に向けたサービスというか。逆に若い子はもう電話なんてしてくれるなと思ってますし。

安田

確かにそうですね。人が関わらない方が快適というか。

久野

むしろそれが当たり前になっていますから。現場もどんどん若いメンバーに切り替わっていく。そして今まで10〜20人でやっていた仕事を1人でこなす人が出てくる。

安田

完全自動化にはなりませんか?

久野

意思決定がいるので。最後の確認だけは人間がしなきゃいけない。誰の確認もなく全自動で動く会社には経営者もいらないって話になっちゃう。

安田

本当ですね。意思決定まで委ねたら人間は何をすればいいのか。いずれにしてもAIが使えることはもう必須だと。

久野

使えなかったらまずいと思います。とくに事務職と管理職は。

安田

昔ながらのお局さんみたいな人はもういなくなっちゃう?

久野

厳しいでしょうね。年齢が上がってきて自然淘汰されていくか。どこかでリストラされるのか。

安田

50代の人も今からAIを学ばないとダメですか?

久野

年齢は関係ないです。自主的に学ばない人はヤバいという感覚がないと。

安田

分からないことがあればそれこそAIに聞けばいいんですよね。

久野

そうそう。なんでも教えてくれますから。ただ行動しない人ってAIと会話すらしてないから。

安田

「人間じゃなきゃ嫌だ」という人に向けてやっていくしかないですね。

久野

人間がやるサービスは凄く高くなるでしょうけど一定のニーズはあると思います。

安田

久野さんの会社はどんどん人を増やしてますけど。そっちのサービスに向かってるんですか?

久野

うちが増やしているのは売上を作る人材なので。例えば給与計算ってお客さんにとっては間接業務ですけど、うちにとっては直接業務なんですよ。

安田

そこはAIに変わっていかない?

久野

いきなりAIには変わらないと思います。ここ5年ぐらいは仕事として安定している。その次のフェーズとしてはお客さんの仕事をAIに置き換えていくサポートですね。

安田

ああ、なるほど。

久野

事務職全般がだんだん減っていくんですが、減るまでのビジネスチャンスは大きくある。ただ終わった後が怖いので引き際が大事だと思います。

安田

ババ抜きみたいですね。最後まで人を抱えている会社が大変なことになりそう。

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久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/  

安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

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