第130回 「6000万円の刀」を安いと感じるマニアの金銭感覚

この対談について

“生粋の商売人”倉橋純一。全国21店舗展開中の遊べるリユースショップ『万代』を始め、農機具販売事業『農家さんの味方』、オークション事業『杜の都オークション』など、次々に新しいビジネスを考え出す倉橋さんの“売り方”を探ります。

第130回 「6000万円の刀」を安いと感じるマニアの金銭感覚

安田

今日は、倉橋さんの本業にも関わる「マニアックな収集品」について聞きたいんです。万代さんってフィギュアとかブリキのおもちゃとか、ずっと扱ってこられたじゃないですか。


倉橋

ええ、主力カテゴリーの一つですね。

安田

私も収集癖があるんで人のことは言えないんですが(笑)、三葉虫の化石とか手作りナイフとか、常人には理解できないものに大金を出す人っていますよね。でもこういうマニアックなものって、「欲しい人」がいなくなったらゴミになっちゃうじゃないですか。


倉橋

まあ、興味のない人からすればそうでしょうね(笑)。

安田

どこかで価値が暴落するリスクもあるのかなと思うんですが、意外と古いおもちゃなんかはずっと値段が上がり続けてたりする。こういうマニアック市場って、この先どうなっていくと思いますか?


倉橋

廃れることはないと思いますね。例えばいま富裕層の間でものすごく話題になってるのが「クラシックカー」なんですよ。何千万円もする最新のスポーツカーじゃない。なぜかというと、ああいうのはお金さえあれば誰でも買えるわけです。

安田

ああ、なるほど。確かにそうだ。買う人がたくさんいればそれだけ作ればいいのだし。


倉橋

そうそう。だから超富裕層になると、新車には興味がなくなってくる。それよりも、世界に数台しかないオールドの超クラシックカーを手に入れたくなるんですって。

安田

は〜、なるほど。でも移動費も保管費もメンテナンス費も桁違いですよね。しかも乗り心地は最悪という(笑)。


倉橋

そうですよ(笑)。燃費も悪いし、クーラーも効かない。でもそれがいいんです。

安田

不便さも含めて愛でるわけですね。


倉橋

そうです。数が少なければ少ないほど価値がある。「あのオークションで大谷選手と競り勝って手に入れた」みたいなストーリーも含めて、心が乱される体験を求めてるんです。クラシックカーは今、その極みだと思いますね。

安田

マニアがお年寄りになって引退しても、また新しい世代のマニアが必ず出てくるんでしょうか?

倉橋

出てくると思いますね。そういえばこの間ウチに「織田信長の刀」が持ち込まれたんです。「6000万円でどうですか」って。

安田

6000万円! 家が買えますね。

倉橋

丁重にお断りしましたけど、本当に織田信長の刀なら、6000万円でも安いと考える人がいてもおかしくない。そもそも戦国時代から令和まで、一度もゴミ扱いされずに大切にされてきたということは、これはもう一過性のブームとは言えないと思うんです。

安田

確かになぁ。一方で、ポケモンカードなんかはバブルが弾けて値段が下がったとか言うじゃないですか。価値が残るものと暴落するものの違いは何なんでしょう?

倉橋

うーん、やっぱり「寝かせて価値が上がっていくもの」と「今流行ってるだけのもの」の違いでしょうね。そもそも信長の刀っていうのは、もうこれ以上増えないじゃないですか。でもポケモンカードは、この数年でメーカーが爆発的に増刷したんです。供給過多になれば、当然相場は崩れます。

安田

単純な需給バランスですね。増えすぎたから価値が下がった。

倉橋

そうだと思います。供給量をコントロールできてるかどうかが重要ですね。最近、中国の「ラブブ」っていうフィギュアがブレイクしたんですけど、9月だけで3000万円くらい売ったんですよ。

安田

すごいですね! 単一商品でそんなに売ったんですか。

倉橋

ええ。でも10月になったら1300万円、11月には500万円と、みるみる落ちていって。やっぱり爆発的に流行るトレンドものっていうのは、こういう動きをするんです。

安田

なるほどなぁ。じゃあ数はもう増えない昔のブリキのおもちゃなら、資産価値として手堅いということですか。

倉橋

そうだと思います。ブームで一時的に上がりすぎることはあっても、数が少ないものには一定のコレクターが必ずいますから、底値はそんなに下がらない。

安田

ある意味、金(ゴールド)みたいなもんですね。

倉橋

そうですね。特に「オールドのもの」は値崩れしにくい。骨董品とか収集してると、よく家族から「こんなゴミ集めて!」って怒られますけど、実は資産価値があったりするんですよ。

安田

見る目さえあれば、資産運用になり得ると。でも不思議なのは、マニアの総数です。日本も世界も人口が減っていく中で、マニアの数自体が減ったら、さすがに価値も落ちていくんじゃないですか?

倉橋

うーん、人口が減っても「男性」がいる限り大丈夫だと思いますよ。男性って、何かをコレクションしないと生きていけない生き物なんじゃないかと思うんです(笑)。僕も昔、漫画の古本屋をやってましたけど、男の人はやっぱり1巻から全巻セットで買っていくんですよ。

安田

ああ、確かに! 背表紙がズラッと並んでるのを見て満足したいんですよね。

倉橋

そうなんです。1巻から15巻まであって、もし6巻だけ欠けてたら、わざわざ別の店に探しに行きますから。でも女性のお客様は、どちらかというと「レンタル」が多かった。

安田

へぇ、女性のほうが現実的というか。

倉橋

「読めればいい」「家に置いておいても邪魔」という感覚なんでしょうね。所有欲求は圧倒的に男性のほうが強いと思います。

安田

そう考えると、男という生き物が絶滅しない限り、マニアック市場は安泰だと(笑)。

倉橋

そう思います。僕もパタゴニアのダウンジャケット、一時期むちゃくちゃ集めてましたから。奥さんに「同じやつ買うのやめてくれない?」って言われるんですけど、「いや、これはここが違うんだ」って言い訳して(笑)。

安田

はたから見れば完全に一緒なんでしょうけどね(笑)。

倉橋

そうそう(笑)。でもコレクターにとっては全くの別物なんですよ。その微妙な違いに惹かれる人がいる限り、この商売はずっと続くと思います。


対談している二人

倉橋 純一(くらはし じゅんいち)
株式会社万代 代表

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株式会社万代 代表|25歳に起業→北海道・東北エリア中心に20店舗 地域密着型で展開中|日本のサブカルチャーを世界に届けるため取り組み中|Reuse × Amusement リユースとアミューズの融合が強み|変わり続ける売り場やサービスを日々改善中|「私たちの仕事、それはお客様働く人に感動を創ること」をモットーに活動中

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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