その196 コスプレ

おもに男性のファッションのジャンルでアメリカンカジュアル、通称アメカジというのがあります。

20世紀のアメリカの文化をベースに、労働者が着たワークウェア、軍人のミリタリーウェアなどをファッションに落とし込んだもので、逆輸入的に海外で「Amekaji」と呼ばれることもあるんだとか。

とはいえ、世間ではまったくメジャーなジャンルではなく、そもそも愛好者が多い本場は日本、広げてもアジア圏の一部にとどまります。
アメリカの実用的な服飾を模して発展したファッションが、ぜんぜん現代のアメリカと関係ないのはたいへん面白いところですが、このスタイルにはひとつ、大きな問題があります。

それは、実生活との融和を図るのがむずかしいところです。

昔の空軍でパイロットが着ていたジャケット、山林火災の消防士が耐熱のために履いていた片足1.5kgのブーツ、丈夫なダック生地でできているうえに膝まわりはそれが二重になったパンツなど、日本でほとんどインドアで生きている人間には無駄ばかり、というより無駄しかありません。

にもかかわらず、こだわりをもって「本物らしさ」を追求したアイテムで身を固めた人は、今日ひと言で切って捨てられます。

「コスプレ」と。

コスプレはそれが趣味として存在しているジャンルですから、この言葉に特定の意図はないはずですが、この場合は明らかに嘲るようなニュアンスが感じられるでしょう。

ファッションは自己満足といいますが、日々のリアルな生活と乖離しているということは、それだけで否定的な気持ちを駆り立てるものがあるのです。

しかし、それはアメカジに限った話でしょうか。

ふた桁万円のブランドバッグを胸に抱えて通勤電車に乗りこんでいくこと、ロレックスをシャツの袖に隠しながら冷や汗をかいてヘコヘコすること、ペアローンを組んでタワマンに住むこと、残価クレジットでアルファードに乗ること、すべてバカにするひとはいるでしょう。

同時に、バカにされることがあっても、それらを間違っていると証明することは誰にもできません。

もしかしたら、いつか、
「べつに、タワマンくらい住むでしょ」
「次は自分用にベンツ買おうかな」
となったとき、そのときはコスプレが本物になっているのかもしれないのです。
 

 

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著者自己紹介

「ぐぐっても名前が出てこない人」、略してGGです。フツーのサラリーマン。キャリアもフツー。

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