泉一也の『日本人の取扱説明書』第41回「内向型の国」
著者:泉一也
日本でビジネスを行う。それは「日本人相手に物やサービスを売る」という事。日本人を知らずして、この国でのビジネスは成功しません。知ってそうで、みんな知らない、日本人のこと。歴史を読み解き、科学を駆使し、日本人とは何か?を私、泉一也が解き明かします。
俳句、能、禅、日本独自の文化であるが、この3つに共通しているのは内向。俳句では言葉少なく、内面を静かに表現する。能は顔を見せず、禅に至っては不動という表現である。「人見知り」を英訳すると「shyness」だが、シャイという言葉では人見知りを十分表現できない。この微妙な内氣さは、日本人独特のセンスであろう。
日本人は本来内向型にも関わらず、外向型を評価しがちである。就職面接では、どんな面接官の前でも饒舌に自分を語り、ディスカッションでは率先して意見を戦わせたほうが評価は高くなる。日本の企業教育ではプレゼンテーションやリーダーシップはじめ外向型の教育が主である。よって、研修ではグループディスカッションをして発表、という形式が多い。この日本らしさのない評価と研修は氣持ち悪い。
今でも鮮明に覚えている。小学校低学年の頃、友達Aと母親とタクシーに乗って、そのAが運転手さんに運転のことをあれこれ聞き、楽しく会話した。タクシーから降りた時、母から「あんたも、A君のように誰とでも会話できなあかんけど、ようせんからなあんたは。。」と残念そうに言われた。反発したい気持ちがあったが内向的なので言葉にならず、自分がダメなことだけが残った。
内向型は大勢の人と関わることがストレスとなるので、ITでネットワーク化された多様性社会は生きづらい。SNSなどはもっての他だ。引きこもりになりたくなるのもわかる。表面的な世間話が嫌いなので、雑談の輪に入りにくいから知人友人が増えない。内向型で芸能人になっている人がいるが、多くの目にさらされて、多くのファンと関わるというのは苦行だろう。芸能界を早くに引退する人たちの氣持ちが少しわかる。目立ちたくないのに、自由に表現すると目立ってしまう。喜んでくれる人が一人でいいのに、大勢に喜ばれ、嬉しいけどしんどいのだ。この矛盾の世界に内向型の人は生きなければならない。