変と不変の取説 第3回「使えるお金・使えないお金」

「変化だ、変化だ、変化が大事だ」とみなさんおっしゃいますが、会社も商品も人生も、「変えなくてはならないもの」があるのと同様、「変わらないもの」「変えてはならないもの」もあるのです。ではその境目は一体どこにあるのか。境目研究家の安田が泉先生にあれやこれや聞いていきます。

 第3回 「使えるお金・使えないお金」

前回「お金が崩壊するとき」では、人間がお金を稼ぐ目的やその方法、これからのお金の価値にについて話が進みました。

安田

「お金はいずれ崩壊する」ってことでしたね。

はい。崩壊して、復活して、また崩壊しての繰り返し。

安田

単純に考えるならば、お金って権利だと思うんですよ。

権利ですか。

安田

はい。例えば1億持ってたら、自分が一切何もやらなくても「1億円分は誰かに働いてもらえる」という権利。

なるほど。貯金イコール権利の貯蓄ということですね。

安田

はい。お金さえ持ってれば、いっさい役に立たなくても、食べたり、飲んだり、肩を揉んでもらったり、できる権利。

逆の立場でいうと、その分の仕事を「誰かが肩代わりしなくてはならない」ということになりますね。

安田

そうなんです。だから金融経済が、どんどんふくらんでいくと・・・

金融でお金を増やした人たちの権利が、どんどん増えていく。

安田

はい。すると、残りの人たちは、借金したわけでもないのに、その分働かなきゃいけなくなる。

なるほど。嫌な社会ですね。

安田

その嫌な権利の半分を、世界のトップ数十人が握ってるわけですよ。

これから、その割合はもっと増えていくでしょうね。

安田

そうなってくると、この数十人は「いないほうが、いいんじゃないか」って気がするんですけど。

抹殺してしまえと?

安田

いやいや、私は平和主義者なので。抹殺するんじゃなくて、仲間はずれにするんですよ。。

仲間はずれ?

安田

いくら金をつまれても、あなた方には一切何も売りません。一切サービスしません。という風にしたらどうでしょう?

人類みんなで仲間はずれにすると(笑)

安田

はい。そしたら、その人たちの権利分の「お金と交換に、やらなくちゃいけないこと」はやらなくて済む。

いいですね。じゃあ、世界を半分に分けて「こっちはこっちでやるから、そっちはそっちでやっといて」と。

安田

はい。そっちはお金持ちだけでやっててください、と。

そっちは、十数人しかいませんけどね、と(笑)

安田

お金以外の「新たな価値交換ルール」を作れば、可能じゃないですか?

地域通貨とかは、でき始めてますね。

安田

でもやっぱり、ほとんどの人は地域通貨ではなく、円を欲しがるでしょうね。

金持ちの思うツボですね。

安田

そうなんですよ。お金を欲しがれば欲しがるほど、金持ちの思うツボ。

何とかなりませんか?

安田

だから私は、物々交換を推奨してるんですよ。

物々交換ですか?

安田

はい。私自身も仕事の2割くらいは物々交換でやってます。

おもしろい!

安田

これを政策としてやったらどうですかね。

政策ですか?

安田

物々交換でしか手に入らないものを決めるんですよ。お米とか、野菜とか。

「あなたの持ってるお金では、これは買えませんよ」と。

安田

はい。シャネルとか、ダイヤモンドとか、贅沢品はお金で買えるんです。でもお米とか、食べ物とか、必需品は「働かざる者食うべからず」で、何か労働しなくちゃ手に入らない。

「ありがとう」と言ってもらえる価値が、流通するのが経済なんですよ。本来は。

安田

でも「お客様は神様です」とか言っちゃってますから。

お金をもらった側が「ありがとうございます!」って頭を下げてしまう。

安田

変ですよね。

社会全体がお金の暗示にかかってますね。

安田

ぶっちゃけ、泉さんはどうなんですか?

私ですか?

安田

はい。実際問題として、泉さんに講師をお願いして「感謝しています」「でもお金ないんです」では受けないでしょ?

いや、そんなことないですよ。そこがお米屋さんだったら「1年間泉さんのお米まかしといてください」とかでも、ぜんぜん大丈夫。

安田

ホントですか?お米の依頼ばっかり増えちゃいますよ。

今の生活がやっていければ、ぜんぜんOKです。たとえば、東京電力で研修したら「泉さん1年間電気代いいっすよ」みたいな。(笑)

安田

すごいですね。

だって、そのほうが気持ちいいですよ。

安田

でも実際には、泉さんみたいな人は稀で。やっぱり、ものじゃなくて金でほしいと。

圧倒的にお金の方が人気ありますね、残念ながら。

安田

たとえば、現金3万円より5万円分のお米の方が得ですよね。どうせ食べるんだから。けどみんなお金ほしがるでしょ?あれはなぜですかね。

やっぱり「自由にいろんなものに換えられるから」でしょうね。

安田

財布に現金がたくさん入ってると、それだけで豊かな気分になりますもんね。

安田さんはどうなんですか?やっぱり嬉しいんですか?

安田

財布に現金がいっぱい入ってたら?

はい。

安田

いや、別に嬉しくはないけど、安心はします。

嬉しくはない?

安田

う〜ん。やっぱり、嬉しいですね(笑)

安田さんも洗脳されてますね(笑)

安田

それは否定できませんよ。100%物々交換でいいとは、やっぱり言えません。

今の生活が、何不自由なく出来るとしても?

安田

はい。それとは別に自由になるお金は欲しいです。億とかは要りませんけど。

いくらぐらい欲しいんですか?

安田

年間200万円くらい。

じゃあ逆に、現金はそのくらいあればいいと?

安田

家賃が要らなくて、電気代や水道代もかからず、食料ももらえるんだったら、それだけあればハッピーですね。

もう一回、昔みたいに「お金使いまくる」みたいな欲求はないですか?

安田

ないんですよ。

そうなんですね。

安田

昔は常に財布に50万円くらい入ってて、年間に何千万円も使ってました。

知ってます(笑)

安田

でも、ぜんぜんハッピーじゃなかったです。

今振り返ってみれば?

安田

いや、その当時から、ぜんぜんハッピーじゃなかった。

多くの人はそれを望むんですけどね。

安田

たぶん人によるんですよ。

どういうことですか?

安田

人によって適量があるんですよ、お金の。

おもしろい。

安田

私は「現金200万円が一番ハッピー」という星の元に生まれてるんですよ。

それ以上あっても意味ないと?

安田

かえって不幸になってしまう。じっさい、いまの方が充実してますもん。

そう、思い込んでるだけかもしれませんよ。

安田

たくさんあったとしても、きっと使わないですね。今だったら。

なぜですか?

安田

一番快適な金額というのが分かってしまったから。

まあ僕も「今よりもっともっと稼ぎたい」とは思わないですからね。

安田

いつ頃思わなくなりました?

けっこう前ですね。ある程度稼げて、生活していけるようになったら、そういうのはなくなりました。

安田

学習がはやい。さすがです。

いやいや。

安田

私なんか、必要以上にお金を欲しがり続けて、無意味につかって、結局虚しかっただけですもんね。

月に行ったらよかったのに。

安田

思いつきもしなかったですね。

ホントに。よく、あんなこと考えつきますよね。

安田

やっぱり才能ですよ。お金を稼ぐのも能力ですけど、使うのにも能力がいるんですよ。

能力以上には使えないと。

安田

はい。使ったら不幸になると思います。

…次回第4回へ続く…


場活師/泉一也と、境目研究家/安田佳生
変人同士の対談


第1回:「変わるもの・変わらないもの」
長い間、時間をかけて構築された、感覚や価値観について問い直します。

第2回:「お金が崩壊するとき」
お金の価値が変わると、お金を稼ぐ方法、稼ぎたい理由も変わってきます。

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