変と不変の取説 第17回「国家の役割はどう変わる?」

「変化だ、変化だ、変化が大事だ」とみなさんおっしゃいますが、会社も商品も人生も、「変えなくてはならないもの」があるのと同様、「変わらないもの」「変えてはならないもの」もあるのです。ではその境目は一体どこにあるのか。境目研究家の安田が泉先生にあれやこれや聞いていきます。

 第17回 「国家の役割はどう変わる?」

前回第16回は「大国のノスタルジー」

安田

大国の覇権争いになったら「アメリカ組の一員にならざるを得ない」って話でしたよね?

そうですね。

安田

でも、実際どうなんでしょう?「ロシアが攻めて来る」と思ってる日本人って、あんまりいないと思いますけど。

現実的じゃないですね

安田

中国に関しては「尖閣問題」があるので、攻めてくると思ってる日本人って、結構いるんじゃないですか。

いますね。

安田

泉さん的にはどうなんですか?

攻めてこないと思います。「攻めてくる雰囲気だけは醸し出しとく」っていう外交手段ですね。

安田

何のためにですか?

有利な交渉をするためですよ。

安田

でも、脅せば脅すほどアメリカから武器が渡ってきて、どんどん日本が強くなっていっちゃうじゃないですか。

どんなに強くなっても、絶対に日本は攻めてこないと思ってますから。

安田

それは、どうして?

「戦争犯罪だ」とか、ガンガン言って叩いておけば、何もできない。べつに反論もしないし、叩き放題なんで。

安田

でも中国とか韓国の世論は「また日本は軍国化して攻めてくる」とか言ってますけど。

実際には、そんなこと信じてる人なんて、ほとんどいませんよ。

安田

いませんか?

だって中国人も韓国人も、日本にいっぱい旅行に来てますよね。

安田

来てますね。

マスコミが視聴率上げるために、煽ってるだけのような気がしますね。

安田

じゃあ、やっぱり外交カードに使ってるだけですかね?

国民の不満とかエネルギーを外国に向けてたほうが、内乱が起こらないので。それも政治の手法なんですよ。

安田

内乱が起こる可能性があるんですか?

やっぱ一党独裁とかって、本当はみんな嫌じゃないですか。

安田

政府もそれが分かってると?

分かってるから、そこを言われたら嫌なんで「外国に不満ぶつけておけ」っていう。

安田

なるほど。でも、たしかに中国の歴史って、中から崩れてますもんね。

今までずっと、そうです。毎回、農民の反乱でやられてるんですよ。蜂起されたらアウトですね。

安田

10億人が蜂起したら止められないですよね。

はい。小さい火でも、一回火が付くとブワーって広がっていくんですよ。で「あっという間に国がつぶれていく」っていうのが過去の歴史。

安田

そのために、仮想敵国みたいなのをつくったほうがいいと。

内乱を鎮めるより簡単ですからね。

安田

でも、やっぱ「領土を広げたい」っていう野心も、あるんじゃないですか?

いや、今はもうないと思いますね。

安田

大国には領土的野心なんてもうないんですか?クリミア問題とかもありますけど。

ああいうのは、ほぼすべて「外交カード」か「国の力を誇示するため」だと思います。

安田

じゃあ、領土的野心というよりも、国内に向けたアピールですか?

私はそう思いますね。

安田

なるほど。ちなみに今、中国とアメリカが経済で争ってますよね?

やりあってますね。

安田

つぶし合ってるようにも見えるんですけど。アメリカから見て中国って、それほどの脅威なんですか?

国民の数と、変化の早さみたいなのを考えたら、すごい脅威じゃないですか。

安田

中国が一気に、経済の覇権を握る可能性もあると?

一気にいくかもしれませんね。どんどん新しいものを取り入れて、変えていってますから。

安田

アリババみたいな巨大企業も増えていってますね。

一党独裁だけど、柔軟な部分もあるんですよ。今は世界中の知恵を集めようとしてるんじゃないですかね。

安田

日本人もどんどん引き抜かれてますよね?

はい。日本人もヘッドハンティングされて、いままで培ったものを中国企業に移植していってますね。

安田

シャープも台湾の企業に買われました。

これから先もどんどん出てきますよ。

安田

そういう意味では、軍事的にはアメリカの属国ですけど、経済的には限りなく、中華圏の属国になっていく気がします。

可能性は高いと思いますね。まあ、福沢諭吉は「韓国と中国は付き合ってはならない国だ」って言ってましたけど。

安田

どうしてなんですか?

コミュニケーションをしても無駄だと。嘘をつかれたり、話をひっくり返されるので。

安田

じゃあ当時から、福沢諭吉はアメリカ寄りだったんですか?

たぶん、そっちだったと思いますよ。その頃からアメリカとの国交が強くなりましたから。

安田

今後はどうなるんですか?軍事ではアメリカ、経済では中国、領土問題ではロシアと、それぞれ付き合っていかなくちゃいけないですけど。

経済に関しては、国家と関係ない新たなマーケットができるような気がします。

安田

ほぉ。

今のマーケットって、国家をベースにしてるじゃないですか。為替があったりとか。

安田

そうですね。

今はブロックチェーンの技術があるので、国家じゃないところに新しい経済圏ができると予想してます。

安田

でも、そういうマーケットって、それこそ大国の間での奪い合いになるんじゃないですか?

新しい共同体をつくって、そこで価値の流通を起こしていけば、国とは関係ないところで回って行くと思います。

安田

その場合、税金はどうなるんですか?

たぶん、そこがいちばん難しいところでしょうね。

安田

所得税や法人税を徴収しないと、国家は運営できませんよ。

国家の役割が縮小していくような気がするんですよ。

安田

役割が縮小?

これまでは、国が通貨を発行して、武力で領土と国民を守って、市場を維持して、と全部やってきたわけです。

安田

それが変わっていくと?

まずマーケットが変わっていく。

安田

新しい共同体ってことですか?

別の信用経済が生まれたら、これまでのマーケットは縮小していって、必要最小限の衣食住だけになっていく。

安田

税金払って、国家に市場を守ってもらわなくても「ぜんぜんやっていける」みたいな?

そうです。

安田

そのマーケットって、バーチャルなイメージですか?

バーチャルですね。

安田

じゃあ、GoogleやAmazonがくっついて、新たな商圏みたいなものをつくるんですか?

具体的には分かりませんけど、新たな市場が生まれることは確かだと思います。

安田

じゃあ、その市場の支配者というか、トップが誰になるかは、まだ分からない?

トップは、いないんじゃないですか。

安田

じゃあ、誰が秩序を守るんですか?

ブロックチェーンみたいなテクノロジーですね。

安田

そんなこと可能なんですか?

インターネットだってそうじゃないですか。

安田

確かに。インターネットには親分がいないですね。

武力とか、法律とか、そういう概念を超えた秩序が生まれると思います。

安田

テクノロジーが支える「機械的なマーケット」という感じですか?

いや、すごく「有機的なマーケット」だと思います。

…次回へ続く…


場活師/泉一也と、境目研究家/安田佳生
変人同士の対談


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第1回:「変わるもの・変わらないもの」
長い間、時間をかけて構築された、感覚や価値観について問い直します。

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