「変化だ、変化だ、変化が大事だ」とみなさんおっしゃいますが、会社も商品も人生も、「変えなくてはならないもの」があるのと同様、「変わらないもの」「変えてはならないもの」もあるのです。ではその境目は一体どこにあるのか。境目研究家の安田が泉先生にあれやこれや聞いていきます。
第17回 「国家の役割はどう変わる?」
前回第16回は「大国のノスタルジー」
大国の覇権争いになったら「アメリカ組の一員にならざるを得ない」って話でしたよね?
そうですね。
でも、実際どうなんでしょう?「ロシアが攻めて来る」と思ってる日本人って、あんまりいないと思いますけど。
現実的じゃないですね
中国に関しては「尖閣問題」があるので、攻めてくると思ってる日本人って、結構いるんじゃないですか。
いますね。
泉さん的にはどうなんですか?
攻めてこないと思います。「攻めてくる雰囲気だけは醸し出しとく」っていう外交手段ですね。
何のためにですか?
有利な交渉をするためですよ。
でも、脅せば脅すほどアメリカから武器が渡ってきて、どんどん日本が強くなっていっちゃうじゃないですか。
どんなに強くなっても、絶対に日本は攻めてこないと思ってますから。
それは、どうして?
「戦争犯罪だ」とか、ガンガン言って叩いておけば、何もできない。べつに反論もしないし、叩き放題なんで。
でも中国とか韓国の世論は「また日本は軍国化して攻めてくる」とか言ってますけど。
実際には、そんなこと信じてる人なんて、ほとんどいませんよ。
いませんか?
だって中国人も韓国人も、日本にいっぱい旅行に来てますよね。
来てますね。
マスコミが視聴率上げるために、煽ってるだけのような気がしますね。
じゃあ、やっぱり外交カードに使ってるだけですかね?
国民の不満とかエネルギーを外国に向けてたほうが、内乱が起こらないので。それも政治の手法なんですよ。
内乱が起こる可能性があるんですか?
やっぱ一党独裁とかって、本当はみんな嫌じゃないですか。
政府もそれが分かってると?
分かってるから、そこを言われたら嫌なんで「外国に不満ぶつけておけ」っていう。
なるほど。でも、たしかに中国の歴史って、中から崩れてますもんね。
今までずっと、そうです。毎回、農民の反乱でやられてるんですよ。蜂起されたらアウトですね。
10億人が蜂起したら止められないですよね。
はい。小さい火でも、一回火が付くとブワーって広がっていくんですよ。で「あっという間に国がつぶれていく」っていうのが過去の歴史。
そのために、仮想敵国みたいなのをつくったほうがいいと。
内乱を鎮めるより簡単ですからね。
でも、やっぱ「領土を広げたい」っていう野心も、あるんじゃないですか?
いや、今はもうないと思いますね。
大国には領土的野心なんてもうないんですか?クリミア問題とかもありますけど。
ああいうのは、ほぼすべて「外交カード」か「国の力を誇示するため」だと思います。
じゃあ、領土的野心というよりも、国内に向けたアピールですか?
私はそう思いますね。
なるほど。ちなみに今、中国とアメリカが経済で争ってますよね?
やりあってますね。
つぶし合ってるようにも見えるんですけど。アメリカから見て中国って、それほどの脅威なんですか?
国民の数と、変化の早さみたいなのを考えたら、すごい脅威じゃないですか。
中国が一気に、経済の覇権を握る可能性もあると?
一気にいくかもしれませんね。どんどん新しいものを取り入れて、変えていってますから。
アリババみたいな巨大企業も増えていってますね。
一党独裁だけど、柔軟な部分もあるんですよ。今は世界中の知恵を集めようとしてるんじゃないですかね。
日本人もどんどん引き抜かれてますよね?
はい。日本人もヘッドハンティングされて、いままで培ったものを中国企業に移植していってますね。
シャープも台湾の企業に買われました。
これから先もどんどん出てきますよ。
そういう意味では、軍事的にはアメリカの属国ですけど、経済的には限りなく、中華圏の属国になっていく気がします。
可能性は高いと思いますね。まあ、福沢諭吉は「韓国と中国は付き合ってはならない国だ」って言ってましたけど。
どうしてなんですか?
コミュニケーションをしても無駄だと。嘘をつかれたり、話をひっくり返されるので。
じゃあ当時から、福沢諭吉はアメリカ寄りだったんですか?
たぶん、そっちだったと思いますよ。その頃からアメリカとの国交が強くなりましたから。
今後はどうなるんですか?軍事ではアメリカ、経済では中国、領土問題ではロシアと、それぞれ付き合っていかなくちゃいけないですけど。
経済に関しては、国家と関係ない新たなマーケットができるような気がします。
ほぉ。
今のマーケットって、国家をベースにしてるじゃないですか。為替があったりとか。
そうですね。
今はブロックチェーンの技術があるので、国家じゃないところに新しい経済圏ができると予想してます。
でも、そういうマーケットって、それこそ大国の間での奪い合いになるんじゃないですか?
新しい共同体をつくって、そこで価値の流通を起こしていけば、国とは関係ないところで回って行くと思います。
その場合、税金はどうなるんですか?
たぶん、そこがいちばん難しいところでしょうね。
所得税や法人税を徴収しないと、国家は運営できませんよ。
国家の役割が縮小していくような気がするんですよ。
役割が縮小?
これまでは、国が通貨を発行して、武力で領土と国民を守って、市場を維持して、と全部やってきたわけです。
それが変わっていくと?
まずマーケットが変わっていく。
新しい共同体ってことですか?
別の信用経済が生まれたら、これまでのマーケットは縮小していって、必要最小限の衣食住だけになっていく。
税金払って、国家に市場を守ってもらわなくても「ぜんぜんやっていける」みたいな?
そうです。
そのマーケットって、バーチャルなイメージですか?
バーチャルですね。
じゃあ、GoogleやAmazonがくっついて、新たな商圏みたいなものをつくるんですか?
具体的には分かりませんけど、新たな市場が生まれることは確かだと思います。
じゃあ、その市場の支配者というか、トップが誰になるかは、まだ分からない?
トップは、いないんじゃないですか。
じゃあ、誰が秩序を守るんですか?
ブロックチェーンみたいなテクノロジーですね。
そんなこと可能なんですか?
インターネットだってそうじゃないですか。
確かに。インターネットには親分がいないですね。
武力とか、法律とか、そういう概念を超えた秩序が生まれると思います。
テクノロジーが支える「機械的なマーケット」という感じですか?
いや、すごく「有機的なマーケット」だと思います。
…次回へ続く…