人は何のために働くのか。仕事を通じてどんな満足を求めるのか。時代の流れとともに変化する働き方、そして経営手法。その中で「従業員満足度」に着目し様々な活動を続ける従業員満足度研究所株式会社 代表の藤原 清道(ふじわら・せいどう)さんに、従業員満足度を上げるためのノウハウをお聞きします。
第112回 ビジョンで飯は食えるのか?

安田さんが最近コラムに書かれていた「ビジョンで飯は食えるか」というテーマがすごく面白いなと。

ありがとうございます。これまでもビジョンやミッションが大事だと言っていたんですが、一周回って「ビジョンでしか飯が食えない時代」になりつつあるんじゃないかと思っていて。もちろん、ちょっと前に流行った「ホームページに綺麗事を並べるだけのビジョン経営」とは全く違う意味ですが。

そうですね。当時はビジョンとかミッションという言葉すらあまり使わずに、もっとわかりやすく「ぐっとくる会社をもっと」なんて言っていました。中小企業ならではのこだわりをブランドに変えていこうという意味だったんです。

それがいつの間にか、「SDGs」や「パーパス」といった流行り言葉を掲げるだけの、ファッションのようなものになってしまった。「とりあえずこれ言っとけばいいだろ」みたいな枠組みばかり先行していますよね。

そうなんです。「SDGsのバッジをつけておけばいい会社に見えるだろう」みたいな(笑)。そんな手軽でお金のかからない販促ツールとして使われている。昔は中小企業のホームページなんて、社長の挨拶と住所と創業年くらいしか載っていなかったのに、今はどこも立派なビジョンを載せていますから。

ゴルフ場の「紳士淑女のスポーツ」という建前と同じですよ。ジャケット着用だ、半ズボンは駄目だとうるさいことを言うわりに、プレー中はお金や女の下世話な話ばかりしている(笑)。「どこが紳士なんだ」っていう違和感じゃないですか。

アメリカのゴルフ場なんて、Tシャツにスニーカーでビール飲みながら「夕方からハーフ回ろうぜ」って感じで、すごく気軽で楽しそうですよ。本来遊びなんだからそれでいいじゃないかと。「紳士淑女」を掲げるなら、入会審査で年収じゃなくて人格を見るべきですよね(笑)。

まさに。オープンハウスさんなんかは、ある意味ですごく正直ですよね。「ガンガン働いて稼ぎたい奴来い!」というメッセージと実態が一致しているから、そこに共感する野心的な若者が集まってくる。今の若い子だって、お金や成功への欲求がないわけじゃないですから。嘘がないから気持ちいいんです。

そうなんですよ。ビジョンやミッションというのは、日常の業務で判断に迷ったときの「判断基準」になっていなければ意味がありません。「Aを取ればBは取れない」というトレードオフの中で、「うちは迷わずAを取る」と決めるのがビジョンです。

「うちは世界平和を目指す」と大きなことを言っても、目の前のクレーム対応一つにその精神が生かされていないなら、それは嘘と一緒ですからね。「業界を変えたい」と言いながら、やっていることは旧態依然とした商習慣のまま、なんてこともよくありますし。

そうそう。だから「8割のことはできないけど、この2割だけは徹底的にやる」と宣言すること。それができないなら、掲げないほうがマシです。SDGsなんて掲げる前に、「私たちが大事にしているのはこれだ」という小さなこだわりを言葉にするべきなんです。

ええ。元々花札屋さんで、このままじゃ食っていけないから必死でファミコンを作った。「運を天に任せる」という社名の通り、世のため人のためというより自分たちが生き残るために何でもやるという姿勢そのものが、ある種のビジョンになっています。
対談している二人
藤原 清道(ふじわら せいどう)
従業員満足度研究所株式会社 代表
1973年京都府生まれ。旅行会社、ベンチャー企業を経て24歳で起業。2007年、自社のクレド経営を個人版にアレンジした「マイクレド」を開発、講演活動などを開始。2013年、「従業員満足度研究所」設立。「従業員満足度実践塾」や会員制メールマガジン等のサービスを展開し、企業のES(従業員満足度)向上支援を行っている。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。


















