第73回 人間の「愚かさ」に眠るビジネスチャンス

この対談について

人は何のために働くのか。仕事を通じてどんな満足を求めるのか。時代の流れとともに変化する働き方、そして経営手法。その中で「従業員満足度」に着目し様々な活動を続ける従業員満足度研究所株式会社 代表の藤原 清道(ふじわら・せいどう)さんに、従業員満足度を上げるためのノウハウをお聞きします。

第73回 人間の「愚かさ」に眠るビジネスチャンス

安田

今日は、人間って賢いのか馬鹿なのかっていう話をしてみたくて(笑)。ちょっと哲学的ですけど、意外とビジネスにも通じるテーマなんじゃないかと。


藤原

面白いですね。人間は他の動物に比べて「頭がいい」と思われていますけど、本当にそうなのかと。

安田

そうそう。確かに人間は言葉も喋れるし、計算もできるし、宇宙にだって行ける。明らかに知的な存在ではあるんですが、でも一方で「なんでこんな変なことをやるんだろう」って思うことも多い。例えばゼロカロリーの食品にお金を使ったり、地球の裏側まで旅行に行ったり(笑)。


藤原

本当ですね。丈夫なズボンよりも穴の開いたズボンの方が高かったりしますし(笑)。もちろんそれはそれで人間の魅力なんですけど。

安田

お酒を飲みすぎて大失敗したりね(笑)。人間ドックに欠かさず行くような健康志向の方が、毎日煙草をガンガン吸っていたり。頭はいいはずなのに、ちょいちょい愚かな行動を挟みたがるんですよね。


藤原

そうそう。そこも含めて「人間」なんでしょうね。

安田

そんな「賢い面」と「愚かな面」があるわけですが、ビジネスでアプローチするならどっちが儲かるんでしょうね。


藤原

うーん、賢い=合理性と考えるなら、大手企業なんかは基本的にそっちを狙っている気がしますね。そういう意味では小規模の会社は「愚か」なマーケットを攻めてもいいのかもしれません。

安田

ああ、なるほど。それでいうと愚か=感情みたいになりますかね。


藤原

ああ、わかりやすいですね。大企業は「安い」「速い」「便利」といった合理性に訴求するマーケットで戦い、中小企業は「楽しい」とか「嬉しい」とか「共感する」といった感情訴求のマーケットで戦う。

安田

そうせざるを得ないという部分もありますよね。中小企業は価格もスピードも大手には敵わないわけで、合理性以外の部分に訴えるしかないというか。


藤原

確かに確かに。「太るとわかっていても甘いものを食べる」「破れたジーンズに数万円払う」そういう人間の不思議な行動にビジネスチャンスを探すわけですね。

安田

面白いですねぇ。理屈じゃ説明できないんだけど、なぜか感情は満たされてしまう。重ね重ね人間って不思議な生き物です。


藤原

でも真面目な話、これからは理屈で勝負する分野はAIにどんどん奪われていくと思いますよ。合理的な提案なんて、まさにAIが得意とするところですから。

安田

確かに。実際保険の営業などは、もうAIに勝てなくなってきているらしいですよ。お客さんの状況をいろいろ聞いて、その上でベストなプランを瞬時に提示してくれるので。


藤原

そういう仕事ではもう人間に勝ち目はないですよね。合理性ばかりを追求していては、やがて利益は出なくなっていく。そういう意味では、今後は人間の感情をどれだけ理解できているかが肝になっていくと思いますね。

安田

なるほど。逆に今苦しんでいる会社は合理性だけを信じているのかもしれませんね。


藤原

そうかもしれません。「なぜこの商品が売れないのか」「なぜスタッフが動かないのか」そういう問いにしても、理屈だけで考えていてはもうダメなんですよね。なかなか難しい時代になってきました(笑)。

安田

確かに(笑)。でもまあ、「人間は愚かだ」なんて偉そうに語ってますけど、そういう私自身も同じで。今まで自分が買った物を全部目の前に並べてみたら、「合理的に必要なもの」なんて2割もあるかどうか(笑)。


藤原

笑。食事も同じで、最低限必要な栄養素だけ摂れば生きていけますけど、それじゃ心は満たされないじゃないですか。そう考えると人間の「愚かさ」って、豊かさと表裏一体な気がします。

安田

確かに確かに。「米が高すぎて買えない!」なんて言いながら、美容院で数万円払ってパーマをかけたりしてますから(笑)。


藤原

そうそう。洋服だって、洗い替えが1枚ずつあればいいのに、新しい服が欲しくなる。それが人間なんでしょうね。

 


対談している二人

藤原 清道(ふじわら せいどう)
従業員満足度研究所株式会社 代表

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1973年京都府生まれ。旅行会社、ベンチャー企業を経て24歳で起業。2007年、自社のクレド経営を個人版にアレンジした「マイクレド」を開発、講演活動などを開始。2013年、「従業員満足度研究所」設立。「従業員満足度実践塾」や会員制メールマガジン等のサービスを展開し、企業のES(従業員満足度)向上支援を行っている。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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