第89回 「仕事」と「遊び」に境界線は必要か

この対談について

人は何のために働くのか。仕事を通じてどんな満足を求めるのか。時代の流れとともに変化する働き方、そして経営手法。その中で「従業員満足度」に着目し様々な活動を続ける従業員満足度研究所株式会社 代表の藤原 清道(ふじわら・せいどう)さんに、従業員満足度を上げるためのノウハウをお聞きします。

第89回 「仕事」と「遊び」に境界線は必要か

安田

藤原さんがメルマガで書かれていた「休みと働くことの境界線」というテーマが非常に興味深くて。仕事以外の時間を休みや遊びの時間だと考えるのが一般的だけど、違うんじゃないかという。


藤原

面白いテーマですよね。休みとは何かの前に、そもそも「仕事」をどう定義するのか、という話でもあるわけで。

安田

そうそう。一般的には「お金が発生している時間」が仕事だと認識されてますよね。そういう意味では、好きなことでお金を稼いでいるYouTuberだって立派な仕事なんですけど、でも「あんなのは仕事じゃない!」っていう人もいるじゃないですか。


藤原

そうですねぇ。「仕事は我慢の対価としてお金をもらうもの」「苦労してこそ価値がある」という価値観が、特に日本では根強いのかもしれません。私も昔「仕事が楽しい」と言ったら、先輩に「そんなのはちゃんと仕事をしていない証拠だ」って怒られたことがあります(笑)。

安田

笑。でも私としてはむしろ「我慢していれば仕事なのか?」と問いたいんです。例えば営業マンなのに売上ゼロだったら、それは果たして「仕事をした」と言えるのか。


藤原

確かに。実際に我慢や努力はしているのかもしれないけれど、成果主義的に考えればそれは仕事じゃないですね。

安田

でもそういう人って意外とたくさんいる気がするんです。営業だけじゃなくてあらゆる職種で、「成果を出していないのに給与をもらっている」という人がね。でも本人としては「タイムカードを押し、会社に自分の時間を預けている状態なんだから、これは仕事なんだ」と言う。


藤原

つまり多くの人にとって仕事とは「自由を失っている時間」なんですよね。だからこそ遊びや休みが対極の「自由時間」として存在する。

安田

ああ、なるほど。ちなみに私はクライアントとの打ち合わせを平日の午後に限定してるんですけど、そうすると「その時間しか仕事していないのか」と思われることが多くて(笑)。でも実際はそれ以外に早朝からメルマガを書いたり、新しい企画を練ったりしているわけです。


藤原

わかります。あくまで打ち合わせの時間として設定しているというだけなんですよね。コロナ禍以降にリモートワークが普及したことで、多くの会社員の方もその感覚に少し近づいたかもしれませんね。仕事とプライベートの境界が、物理的に曖昧になったので。

安田

確かに確かに。ただその一方で、部下がちゃんと仕事をしているか監視するツールが導入されたりもしました。そう考えると、仕事とプライベートの境界線が曖昧な状態は、意外と成り立たせるのが難しいのかもしれないですね。


藤原

そうですねぇ。ちょっと違う視点で言えば、仕事って「生きるために必要なこと」と定義することもできるじゃないですか。そう考えれば、食事や睡眠も生きるために必要=仕事と言えるかもしれない。

安田

言われてみればそうですね。そうなってくると、リフレッシュのための旅行なんかだって「仕事の一部」と言えてしまいそうです。


藤原

そうなんですよ。人間は動物と違って、本能を満たすだけでは生きていけませんから。そう考えれば遊んでいる時間だって、重要な仕事だと言える。

安田

確かに確かに。漫画を読んでる時間だって、仕事なんですよね。


藤原

そうそう。むしろ休日中にいいビジネスアイデアが生まれることもあるじゃないですか。

安田

わかります。だから個人的には「人生のあらゆる活動が仕事だし、同時に遊びでもある」という感覚なんですよ。ただ世の中の多くの人はそこを明確に分けたがる。


藤原

とにかく「仕事以外の時間」をいかに長く確保するか、という感覚なんでしょう。ともあれ、「決められた時間に会社に行く」という会社員のスタイルを選んでいるのもまた自分なわけで。それが嫌なら他の働き方をするのも自由なんですけど。

安田

個人的には、むしろ意識的に「仕事=遊び」と考えることでパフォーマンスが上がるんですよ。逆に、歯磨きやストレッチのような面倒なことは、「この肉体という資本を維持するための重要な仕事だ」と捉える(笑)。私はそんな感じでやっています。

藤原

は〜、面白いですね(笑)。普通は仕事を義務、遊びを権利と考えがちですが、安田さんはその定義を自在に入れ替えているわけですね。

安田

そうかもしれません(笑)。でもこの考え方のおかげで、面倒なことにも前向きに取り組めるので、我ながらいい発明だと思っています。

 


対談している二人

藤原 清道(ふじわら せいどう)
従業員満足度研究所株式会社 代表

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1973年京都府生まれ。旅行会社、ベンチャー企業を経て24歳で起業。2007年、自社のクレド経営を個人版にアレンジした「マイクレド」を開発、講演活動などを開始。2013年、「従業員満足度研究所」設立。「従業員満足度実践塾」や会員制メールマガジン等のサービスを展開し、企業のES(従業員満足度)向上支援を行っている。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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