「変化だ、変化だ、変化が大事だ」とみなさんおっしゃいますが、会社も商品も人生も、「変えなくてはならないもの」があるのと同様、「変わらないもの」「変えてはならないもの」もあるのです。ではその境目は一体どこにあるのか。境目研究家の安田が泉先生にあれやこれや聞いていきます。
第45回「腹と気が生み出す力」
前回、第44回は「義務と権利の境目」
本当か嘘かわからないんですけど。
何ですか?
昔の日本女性は米俵2つ担げたって。本当なんですか?
本当ですね。写真も残ってますから。
昔の人は身体能力が高かったということですか?
体の使い方が上手かったと言われてますね。
体の使い方?
アフリカとかでは、頭の上にでっかい壺を載せて歩いてる女性が普通にいます。
たしかにいますね。
体の使い方がぜんぜん違うみたいです。
ということは、潜在的には誰でもできるってことですか?
時代劇に出てくるカゴがあるじゃないですか。
かご?「おサルのかご屋」の?
そう。前と後ろで人が担ぐやつ。
人を乗っけて移動する。
そうそう。あれ実は、めちゃくちゃ重いんですよ。
そりゃあ、人間入れてますもんね。
カゴ自体がものすごく重いんです。
そうなんですか?
あんなの現代人には絶対に担げません。2人で担ぐのも大変ですよ。
そんなに重いんですか?
坂とか登るのは地獄です、あれ。
そんな重いものに人間を入れて運んでたんですか?
じつは1回持ったことがあるんですけど。あれで人を運ぶなんて考えられないですよ。
時代劇では人を乗せて走ってますよ。
本当に走ってたんですよ。
現代人には無理?
絶対に無理でしょうね。
それは……どういうことなんですか?やっぱり昔の人は身体能力が高かったんですか。
体の使い方がぜんぜん違うんだと思いますね。力の使い方とか。
現代人は「忘れてしまってるだけ」ってことですよね。
そうです。ゴールドジムでバリバリ筋トレやってる税理士がいるんですけど。
ムキムキの税理士さん?
はい。引っ越しの時に無理やり駆り出したんですけど、残念な生き物状態でした。筋肉はムキムキなんですけど(笑)
ムキムキなのに力がないってことですか?
力の使い方がダメなんですよ。ヒョロヒョロの引越し屋のお兄ちゃんのほうがぜんぜん運べます。
たしかに。引っ越し屋のお兄ちゃんで、細いのにすごい怪力の人っていますよね。
「なんでこんな重い荷物ひとりで持てんの?」みたいな。
腕もめちゃくちゃ太いわけじゃないのに。
体とか筋肉の使い方が違うんですよ。
そういうのは、現代では教えてくれる人はいないんですか?
和服の先生とか。
和服の先生?
知り合いに和服の先生がいるんですけど「和服というのは腹で着る」と。
腹で着る?
和服は重心が後ろにあって「腹で着る」らしいです。洋服は「肩で着る」そうで、前に傾いて歩くらしいです。
確かに、前に体重を移動しながら歩きますよね。
現代人はそうですよね。でもそれは洋服の歩き方。
へぇ~。でも後ろ体重でどうやって前に進むんですか?
後ろに重心かけて、すり足のように歩いていくらしいんですよ。足で草履を掴みながら歩く。
ものすごく難しそうな歩き方ですね。
それが本来の和の歩き方なんですよ。今とは重心とか歩き方もぜんぜん違う。
でも考えてみたら、ついこの間ですよね。江戸時代とか明治とかいったら。
考えようによっては最近ですね。
動物の進化の速度からいくと100年200年なんて一瞬ですよ。つまり身体的にはそんなに変わってないはず。
肉体的にはほとんど変わってないんじゃないですか。
ということは、すごく不向きな体の使い方をしてるってことですか?現代日本人は。
そうじゃないですか。
本来は着物のほうがいいんですかね。
どうなんですかね。まあ体的にはいいみたいですけどね。
「ゴムひもがよくない」って言う人もいますよ。
基本、着物はノーパンですからね。
ふんどしもしないんですか?
先生はノーパンがいいと言ってました。
パンツ履かないだけで体調が変わるっていいますよね。
日本人の体に合ってないんでしょうね。
そう言えば飛脚も、すごい距離を1日で走ったとか言われてるじゃないですか。
あれは本当みたいです。日付の入った文献が残っているので。リレーみたいに中継はするらしいですけど。
それにしても、ものすごい速さですよね?
異常なぐらい速いです。昔は舗装もされてなかったし、靴もいまみたいなナイキのシューズじゃなく草履で走ったわけですからね。
昔の日本人って短足のイメージですけど。それも理にかなってたんですか?
重い物を持って移動するときは重心が低いほうがいいですもん、やっぱり。重心が高いと山登りとかも大変ですからね。
日本人はいつ頃まで高い身体能力を維持してたんですか?
西洋文化が入ってきて、体の使い方が変わったんでしょうね。機械とか車とか。
じゃあ戦前ぐらいまでは、いまで考えたら「おぉ~」みたいな人いたんですかね。
いたと思います。気の入れ方が違う人。