「変化だ、変化だ、変化が大事だ」とみなさんおっしゃいますが、会社も商品も人生も、「変えなくてはならないもの」があるのと同様、「変わらないもの」「変えてはならないもの」もあるのです。ではその境目は一体どこにあるのか。境目研究家の安田が泉先生にあれやこれや聞いていきます。
第53回「イギリスと日本の境目」
前回、第52回は「もうヒエラルキーは通用しない」
イギリスと日本って何が違うんですか?
いきなりですね(笑)
だって似てるじゃないですか。島国で、大陸の横にあって、独自の文化で。
条件は似てますね。
イギリスって、かつては世界の半分以上を支配してましたよね。文明も最先端なイメージ。音楽もそうですし、スポーツでもゴルフ、テニス、ラグビーはイギリス発祥。
東インド会社とか、蒸気機関とか、ああいうのをつくったのもイギリスですね。
でしょ?同じような環境だったのに何が違うんでしょうか。
ヨーロッパ大陸の横にある島国のイギリスと、中国大陸の横のにある島国の日本。世界にどんどん力を広げていったイギリスは何が違ったのか。
はい。環境的には似てるのに歴史はぜんぜん違う。
まずイギリスは女王陛下が「世界中の富を持ってこい」って、海賊みたいなやつらに仕事を与えたんですよ。
すごい仕事ですね。
それでバーッと世界に行きましたと。それと、もうひとつ違ったのが金融ですね。
金融ですか。
自分たちで銀行をつくることによって、金融経済を握っていった。
スペインとかポルトガルも同じですか?
スペイン・ポルトガルは西のほうに追いやられていって、行くとこないから「船で世界行くか」みたいな感じですね。
追いやられて仕方なく?
そうです。イギリスは自分たちで戦略的に「世界の富を奪ってこい」って世界に進出していった。
なぜそんな戦略を立てたんですか?
貧しかったからですね。
それは日本よりも?
日本は日本だけで、ぜんぶ完結できてたんですよ。
環境的に「恵まれてた」ってことですか?食べ物とか。資源とか。
そうだと思いますね。
なるほど。イギリスは自国だけだとあんま豊かにならないと。
はい。
ということは「土地が痩せてる」ってことが結構大事だったんですね。
今から考えれば大事だったんでしょうね。日本は山の幸・海の幸が豊かでしたから。
天皇は「世界へ行って富を奪ってこい」みたいなことは言わなかったんですか?
言わなかったです。
それは豊かだったから?
そもそも縄文人って戦争が嫌で、日本列島までたどり着いたんじゃないかと思います。
なるほど。もともと争いが嫌いな人種だったと。
西のほうに留まっていた人たちは、戦闘民族なのかなって感じがしますね。
アフリカで生まれた人類がヨーロッパに移って、そこでしのぎを削り合ってたと。それが嫌な人が東に行った感じですか?
だってスポーツも戦闘じゃないですか。戦いですよ。
ラグビー見てるとそう思いますね。
基本、戦い好きなんですよ。オリンピックもぜんぶ戦いですから。
スポーツってイギリスかアメリカ発祥が多いですよね。
そうですね。サッカー・ゴルフ・テニスはイギリス。野球・バスケ・アメフトはアメリカ。
どちらもアングロサクソン。やっぱり戦闘民族なんですかね。
そうじゃないですか。サイヤ人ですよ。
だからスポーツが生まれる?
そう思いますね。
イギリスって音楽のイメージもありますけど。
ロックもパンクも激しいと思いますよ。
確かに激しいですね。日本発祥の音楽とかスポーツってどうなんですか。
日本の場合は前回話した「稽古」。精神鍛錬のほうが中心ですね。
競い合って「勝ち負けを決める」という感じではない?
そうですね。
でもラグビーはゲームが終わったら「ノーサイド」じゃないですか。あのへんは武道的精神に近い気がします。
「ノーサイド」は日本が発祥ですから。
え!そうなんですか?
はい。「ワンフォーオール、オールフォーワン」も日本が発祥です。
なんと!そうでしたか。
ラグビーの「ノーサイド」という概念は、あれ、日本人がつくったんです。
へぇ。じゃあ結構、日本の役割は大きいってことですね。
そうですよ。
でも、その割に日本は、どんどん欧米化していきつつありますけど。
自分を見失ってますね。
イギリスはEU離脱に向かってますけど、日本は今後どうですか?
たぶん徳川幕府みたいになっていくんじゃないですか。
え!徳川幕府ですか?
今って「王室どうしのつながり」があるじゃないですか。
はい。お互いの行き来がすごく頻繁ですよね。
「一緒に世界中の問題解決しよう」みたいなことを、やってるらしいです。そういう外交が世界を変えて行くかもしれません。
なるほど。外交の手段としての王室になるってことですか?
そうです。昔のイギリスみたいに。
昔のイギリスはどんなだったんですか?
スコットランドとかアイルランドとか、いろんな国がひとつの共和国になって行った。世界もそうなってくるんじゃないですか。
なるほど。各国の王室が協力しあってひとつの共和国が出来ていくと。
そんな気がします。
それは実現したら素敵なことですね。でもアメリカとか中国とかは、そんなこと望んでない気がしますけど。
彼らは望んでないですね。自国中心に考えてるので。
王室にそれを変える力があるのでしょうか?
どれだけ世界中の人を巻き込んでいけるかですね。