その55 逆転のブランディング

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なぜこんなツマラナイものにこだわるのだろう。そういう「ちょっと変わった人」っていますよね。市川さんはまさにそういう人。でもそういう人が今の時代にはとても大事。なぜなら一見ビジネスになんの関係もなさそうな、絶対にお金にならなそうなものが、価値を生み出す時代だから。凝り固まった自分の頭をほぐすために、ぜひ一度(騙されたと思って)市川ワールドへ足を踏み入れてみてください。

 

先日、家の近所にチーズケーキ屋さんを発見したんです。
そこのチーズケーキ、ちょっと変わってて・・・
出来て1日目のチーズケーキから、5日目のチーズケーキを選べるって仕組みになっています。
酸味のあるチーズケーキが、徐々に熟成されて味が濃く、まろやかになるのだとか。
味の好みに合わせて熟成の日数が選べるって仕組みです。

で、僕みたいな性格の悪い、女の子にモテない理屈っぽいタイプの人間は気付いちゃいますよ。
「良い商売してんな」って。

だって、売れ残っても「熟成」って言えるんですから!
「売れ残りじゃないんです、あえて熟成させているんです!」って。
正直、上手いことやるなって感心しましたよ。
しかも「追熟」とかって言葉を使って、ブランディングしてるんですよ!
(ちなみに、「追熟」って、一般的に果物なんかに使われる言葉みたいですね)
いやぁ、ものは言いようですね。

そう言えば、ワインみたいに、年を得ても価値が下がらないってのありますよね。
経年での味の変化で、不味くなったら論外かもしれませんが、その味の変化が好きって人が一定いた場合、供給量(限られた在庫)も年々減っていく中で、その価値(価格)が保たれているんでしょうね。

一般的には「経年=価値が下がる」って認識ですよね。
会計でも「減価償却」ってのがありますから、年月が経つことによって価値が下がっていくというのが一般的なんです。
その逆をいくものがあるって面白いですよね。

例えば、特定の車にもそういうのは起こるかもしれません。
会社の減価償却でもおなじみのやつですね。
まぁ、弊社には役員車もないし、営業車のプリウスはリースなので関係ないんですが・・・
車の中で、経年でも一定の価値(相場価格)を保っているのは、クラシックカーやスーパーカーの類でしょうか。
いずれにしても、市場に出回っている数が需要に比べて極めて少ないケースですよね。
仮に供給量がそれなりにあったら、価値は上がらないんじゃないでしょうか。
例えば、日産スカイラインGT-R(R32やR33)が供給量が多く、ダブついていたら?
燃費も悪いし、家族ウケ悪いし、めちゃくちゃ安いと思います。
結局、需要と供給のバランスなんでしょうかね。
将来、少数でも一定の需要が見込まれ、確実に供給量が減っていく物って、価値が保たれる可能性があるってことですね。
(土地のように経年劣化が無いものは別物として考えています)

ちなみに、冒頭でご紹介したチーズケーキは、1日目であろうが「追熟」の進んだ5日目であろうが、価格は同じです。
価格を上げると、安い1日目のチーズケーキを買ったお客様が、お客様自身で「追熟」させちゃったら・・・
消費期限切れが迫る在庫をさばけないですからね。
有名な天ぷら屋さんで、食材である魚を熟成させるのに冷蔵箱(氷を使った冷蔵庫)で微調整するって職人さんがいたんで、もしかするとチーズケーキの「追熟」にも高い技術、経験が必要かもしれませんけども。
いずれにしても、生鮮食品にとって致命的な消費・賞味期限までの残り日数という経年劣化を、「追熟」というブランディングで価値をつけて逆転するって面白いです。
なお、チーズケーキの味は、確かに変化を感じますが、ぶっちゃけ好みですね。
酸味のある若いチーズケーキが好きな人もいるでしょうし、追熟が進んだ5日目のこくのある味が好きな人もいるでしょうから。

ちなみになんですが、経年の逆でも価値があるっぽくブランディングすることも可能です。
つまり、時期が早いことは本来マイナス要因だけど、そう感じさえないようにするってことです。
例えば、「早摘み」とかね。
もちろん、早く摘むことにも大なり小なり価値はあるんでしょうけど、訳あって摘採適期より早い時期に摘む必要があった場合、通常、価値としてはマイナスになりますよね。
そんなとき、「早摘み」って言っちゃえば良いのです!
なんだか特別な感じしません?

印象なんて、ブランディングを駆使すれば、簡単に創れちゃいますよね。

なんの指南をしてるんだろう、僕は・・・
(僕=ブランディングエージェンシーのファウンダー・代表取締役会長)

 

 

 

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著者/市川 厚(いちかわ あつし)

株式会社ライオンハート 代表取締役会長
https://www.lionheart.co.jp/

LH&creatives Inc.(フィリピン法人) CEO
https://lionheart.asia/

<経歴>
三重県の陶芸家の家に生まれる。
(僕が継がなかったので、父の代で終焉を迎えることになる…)
大学時代、遅めの中二病を発症。経済学部に入ったのに、何を思ったか「ファッションデザイナーになるんや!」と思い立ち、大学を中退。アパレル企業に就職。
ところが、現実は甘くなく、全く使えない僕に業を煮やした社長から、「Webサイト作れないとクビだからな!」と言われ、泣く(T_T)パソコンの電源の付け方も知らなかったけど、気合でWebサイト制作を習得。しかし、実際のところは、言い訳ばかりで全く成長できず・・・怒られて、毎日泣く(T_T)そんな頃、「デザインにも色々ある」と改めて気づいて、広告業界へ転職、広告制作会社のデザイナーとしてのキャリアをスタート。
「今度は言い訳をしない!」と決めて仕事に没頭し、四六時中仕事していたら、黒目がめくれ上がってきて、眼科医から「失明するよ」と言われ、ビビる。2004年勤務先で出会った同僚や友人を誘って起業、有限会社ライオンハートを設立(現 株式会社ライオンハート)。ところが、創業メンバーとあっさり分裂、人間不信に。残ったメンバーと再スタート。
2014年、設立10周年を機に、創業メンバーで唯一残っていた人間を日本法人の社長にし、自身は会長になり動きやすい状態を創る。この頃からブランディングエージェンシーを名乗り始める。
2016年、フィリピン(マニラ)にITアウトソーシング企業(LH&creatives Inc.)を設立。設立準備期間から家族とともに移り住み、フィリピンで3年半を過ごす。
フィリピン人マネジメントを通して、猜疑心の塊になり、性悪説に変わる。
2019年6月、日本に帰国し、日本法人のマネジメントに復帰。社内コミュニケーションを充実させるために席替えしたり、誰も掃除しない椅子をきれいにしたり、「眠いときはしゃべった方が良いよねッ」ってスタッフに話しかけながら仕事をするなど、独自のインナー・ブランディングの理論を実験していたところ、会社の調子が上がった。そもそもブランディングってなんだ?と思っていたところに、BFIの安田さんと出会い、勝手にご縁を感じてコンサルを受けてみる。そしたら安田さんに誘われ、2020年、anote konoteに参加することに。

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