事務スタッフが定着しない理由〜お医者さんは、なやんでる。 第150回 〜

第150回 「事務スタッフが定着しない理由」

お医者さん
お医者さん
はぁ……このあいだ採用したばかりなのにもう辞めるなんて。
お医者さん
お医者さん
なにが「仕事が難しい」だ。まったく、最近の若い子は根性がない。
随分とご立腹ですね、先生。どうされたんですか?
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
どうもこうもないよ。高い求人費をかけて採用した事務スタッフが、たった1ヶ月で辞めてしまったんだ。って、君は確か……
ご無沙汰しております。ドクターアバターの絹川です。お医者さんの様々な相談に乗りながら「アバター(分身)」としてお手伝いをしている者です。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
ああ、そうだそうだ、ドクターアバターの絹川くんだ。……それにしても、我々の業界は相変わらずの採用難だよ。事務スタッフすらまともな人が採れなくなってきている。
確かに、医師や看護師に比べれば、事務員さんの採用難易度は低いですからね。ちなみに先生の言う「まともな人」ってどんな人なんですか?
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
別に特別なことは求めちゃいないさ。普通に仕事を覚えて、普通に働いてくれるだけでいい。簡単だろ?
まあ、確かにそれだけ聞けば普通のことではありますけど。今回辞めてしまった方はそうじゃなかったんですか?
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
ああ。クリニック受付の経験があるっていうからすっかり安心していたんだ。それなのにいざ現場に入ってみたら全然ダメでさ。「経験あるんだから大丈夫だろ?」って聞いたら、「前のクリニックとシステムが違う」って。
ああ……なるほど。ちなみにその方に対してシステム関連の研修などは行ったんですか?
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
研修? いやいや、そういう手間を省くために高い給与を出して経験者を採用しているんじゃないか。仮にわからないところがあったとしても、別に自ら学べばいいじゃないか。
いや先生……それはちょっと酷かもしれませんよ。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
む……なぜだ?
そもそもの話、電子カルテやレセプトコンピューターなどのシステムにはいろいろな種類があります。小さなメーカーが乱立しているので、たとえ経験者といえど、前の職場と同じシステムに巡り合うケースはなかなかないでしょうね。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
いや、だから仮にそうだとしてもだな、新たに勉強すればいいだけだろ? メーカーが違ったって、別にやることはそう変わらないんだ。すぐ覚えられるだろうに。
いやいや、事はそう簡単ではありません。システム自体の理解はできたとしても、それをどのように運用しているかはクリニックごとに違うわけです。場合によっては、非常に独特なオペレーションで運用されていることもある。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
オペレーションって……そんなの前任の事務員が勝手に作ってたから、僕に言われてもわからないよ。
お言葉ですが先生、今回の事務員さんも同じ気分だったんじゃないでしょうか。前任者しかわからない運用、つまり属人化した運用は、理解するのに非常に手間がかかります。まして、それを聞く相手がいないなら尚更です。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
う……まあ、それはそうかもしれんが、でも経験者なんだから、そのへんはうまくやってくれれば……
もちろん対応できる人も中にはいるでしょうが、稀だと思います。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
…そ、そんなことを言われても、じゃあ逆にどうすればよかったというんだ。求人票に「ウチはこういうシステムをこういう風に運用しています」と書いておけとでも?
それも1つの手だと思いますよ。ただ、先ほども言ったように「同じシステムを使っている」ということ自体がレアだと思っていた方がいいです。仮にそういう方が見つかったとしても、運用法が違えばやっぱり教育は必要です。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
……なるほど。あらためて考えてみれば今回の件、間違っていたのは僕の方なのかもしれないな。
お医者さんは何かと忙しいですから、事務員さんの仕事内容まで把握するのは簡単じゃないですよね。とはいえ、受付がギスギスしていると、他の職員だけでなく患者さんにも悪影響がありますし。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
確かにそうだ。そうならないためにも、研修的なものをちゃんと用意する必要があるのかも。
あるいは、いつでも参照できるマニュアルを作成しておくのもいいと思います。それを一通り読んでもらった上で、1〜2日の研修をすればかなり理解は深まるはずです。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
なるほど、それはよさそうだ。さっそく動いてみるよ!

 

医療エンジニアとして多くの病院に関わり、お医者さんのなやみを聞きまくってきた絹川裕康によるコラム。


著者:ドクターアバター 絹川 裕康

株式会社ザイデフロス代表取締役。電子カルテ導入のスペシャリストとして、大規模総合病院から個人クリニックまでを幅広く担当。エンジニアには珍しく大の「お喋り好き」で、いつの間にかお医者さんの相談相手になってしまう。2020年、なやめるお医者さんたちを”分身”としてサポートする「ドクターアバター」としての活動をスタート。

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