お医者さんは、なやんでる。 第20回 「ネット接続してないから安心、は間違い」

第20回 「ネット接続してないから安心、は間違い」

お医者さん
お医者さん
医療の世界は情報漏洩に特に敏感だ。患者様のカルテは個人情報の山だし、絶対に外に漏らすわけにはいかない。
お医者さん
お医者さん
うちもカルテの管理はインターネット接続をしないPCでやってきた。スタッフたちからは「不便だ」と言われもするが、これも情報を守るために仕方のないことだ。
セキュリティ意識の高い病院、ということですね。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
ああ。患者様の情報は何より大事だからね。…って、君は誰だ?
ドクターアバターの絹川です。お医者さんの様々な相談に乗りながら「アバター(分身)」としてお手伝いをしています。
絹川
絹川
ちなみに先生、そのオフラインPCから別のPCにデータを移動する機会はありませんか? 例えば、学会の資料作成とか。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
ん? ああ、ごくたまにそういうことはあるね。もっとも、漏洩したらまずいデータは出さないよ。万が一、ということもあり得るからね。
なるほど。その移動はどうやって行いますか?
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
インターネットにつながっていないわけだから、USBメモリなどを使うしかないね。
実はそこが落とし穴なんです。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
ん? 機密度の低いデータをUSBで取り出すだけだよ。何も問題ないと思うが。
問題はその取り出したデータの内容ではなく、USBメモリ自体です。今はUSBメモリに入り込むウイルスがあるんですよ。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
え? ウイルス?
ええ。オンラインPCに接続した際、そのネットを経由してUSBにウイルスが入り込む。そして何も知らずそのUSBをオフラインPCに挿すと……そのウイルスがPC内の情報をこっそり盗み出すんです。再度オンラインPCに接続した際、その機密データは特定の場所に送信されてしまう。
絹川
絹川
使用者が何も気づかないうちに、情報は漏洩してしまうというわけです。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
そ、そんな恐ろしいウイルスがあるのか?
そうなんです。USBメモリ経由でのウィルス感染は、情報漏洩の事例として頻繁に報告されています。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
そんな……でも、じゃあどうすればいいんだ? オフラインもオンラインもだめだと言われたら、対応しようがない。
そこは視点の変換が必要です、先生。つまり、「オフラインだから大丈夫」という思い込みが問題なのであって、適切なセキュリティ対策を取ることができれば、オンラインでも問題はありません。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
適切なセキュリティ対策?
ええ。とはいえ、それほど大層なことをしなくても、当たり前の対策をしていればオンラインでも大丈夫なんです。でも、「とにかくオフライン厳守!」という偏った考え方で運営されている病院ほど、今のセキュリティソフト事情に疎かったりする。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
なるほど…。「オンラインは危ない」というのも、「オフラインは安全」というのも、言われてみれば思い込みだったのかもしれない。
世界的に見ても、日本というのはセキュリティ意識が非常に低い国です。野菜の無人販売なんて、日本以外の国じゃ成り立ちませんから。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
確かにそうだな。海外ならあっという間に盗まれてしまう。
お医者さん
お医者さん
とにかく、今後は電カルなども必要になっていくだろうし、オンラインのことを正しく知る必要があるのかもしれないな。
ええ、仰るとおり今後は医療においてもオンラインが重要になってきます。電カルはもちろん、遠隔診療まで当たり前に行われ始めているわけですから。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
う〜む。確かに私は、情報漏洩という”言い訳”を盾に、新しい技術から目を逸してきたのかもしれん。本腰を入れて勉強してみることにするよ。
はい。コロナと同じです。1人1人が正しい対処をすれば、国全体の感染リスクも下がります。業界をあげてオンラインに向き合っていくことが重要なんです。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
そうだな。君にもいろいろとアドバイスしてもらいたいんだが、頼めるかな?
もちろんです!
絹川
絹川

医療エンジニアとして多くの病院に関わり、お医者さんのなやみを聞きまくってきた絹川裕康によるコラム。


著者:ドクターアバター 絹川 裕康

株式会社ザイデフロス代表取締役。電子カルテ導入のスペシャリストとして、大規模総合病院から個人クリニックまでを幅広く担当。エンジニアには珍しく大の「お喋り好き」で、いつの間にかお医者さんの相談相手になってしまう。2020年、なやめるお医者さんたちを”分身”としてサポートする「ドクターアバター」としての活動をスタート。

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