第122回 万代が「毎年5%」の賃上げを公約する理由

この対談について

“生粋の商売人”倉橋純一。全国21店舗展開中の遊べるリユースショップ『万代』を始め、農機具販売事業『農家さんの味方』、オークション事業『杜の都オークション』など、次々に新しいビジネスを考え出す倉橋さんの“売り方”を探ります。

第122回 万代が「毎年5%」の賃上げを公約する理由

安田

倉橋さんは常々「給料を上げ続けることが社長の仕事だ」と仰ってますよね。例えば「毎年〇%は上げると決めている」とか、10年後に平均年収をいくらにするとか、数値的な目標はあるんでしょうか。


倉橋

そこは明確にあります。「毎年5%アップ」それが最低ラインだと考えています。

安田

毎年5%ですか! 万代さんの企業規模を考えるとものすごい金額になりますよね。


倉橋

ええ。正直、かなり大きな金額です。でもご存知の通り、今は物価が平気で3%以上あがっている。ここでもし昇給が3%未満だったら、実質的な所得、つまり手取りは減ってしまうことになるわけで。

安田

確かにそうですね。つまり物価上昇プラス2%ぐらいは、経営者の役目だと考えているんですね。でもその理屈で言えば、もし物価が8%ぐらい上がる世の中になったら、毎年10%給与も上げなくてはいけなくなっちゃいますよ。


倉橋

そうですね。そうするつもりです。

安田

すごいな。物価が上がったら、それに合わせてスライドさせていくわけですね。


倉橋

ええ。物価上昇以上に給料を上げないと生活が成り立ちませんから。

安田

私は人を雇っていないので偉そうなことは言えませんが、確かに物価以上に給料を上げるのは経営者の仕事ですよね。それをしないのに「今までよりもっと働け」なんて言ってちゃダメで。


倉橋

そう思います。それに給与を上げるのは既存社員のためだけでもなくて、これから採用する人へのPRでもあります。優秀な人を採用するためには当然の対応なわけです。特にユニクロさんのような大手企業と戦うためには必須ですよね。

安田

ユニクロは給料も素晴らしいですからね。でも倉橋さん然りユニクロ然り給料を上げることに前向きな経営者がいる一方で、「うちは物価が上がっても給料は増やさない(増やせない)」という経営者も多いと思うんです。


倉橋

もちろん事情は様々あるんでしょうけど、その考え方では今後さらに厳しくなっていくでしょうね。ちなみに安田さんはそういう経営者さんに相談を受けたらどんなアドバイスをします?

安田

そうですね。「100人の会社を30人に絞って、一人当たりの給料を3倍にしてはどうですか」みたいなことをよく言いますね。

倉橋

ああ、なるほど。ただそれが可能なのは、職種やビジネスモデルにもよる気がしますね。僕らのような小売業は、社員やアルバイトさんの「頭数」がどうしても必要なビジネスなので、ちょっと難しいかもしれない。

安田

ああ、なるほど。給与はさておき、そもそも相応の人数を確保しなければ回らないと。

倉橋

仰るとおりです。そしてその給与についても、周辺地域の額にかなり影響されるわけです。例えばうちの店の隣にコストコさんができたとしますよね。コストコさんは日本で一番時給が高いと言われているんですけど、隣にできてしまった以上、その額を見ないわけにはいかない(笑)。

安田

確かに(笑)。働く側は「じゃあ時給の高い方にしよう」ってなりますもんね。

倉橋

そうそう。コストコさんより著しく低い時給だったら、もうその段階でアルバイトの募集が来なくなってしまう。そして募集が来ない、つまり人数が確保できなければ、営業自体ができないんです。

安田

ふ〜む、なるほど。人を雇用しないと回らないビジネスモデルを選ぶ以上、大手企業と同じ土俵で戦わざるを得ないと。

倉橋

そうなんです。逆に言えば、大手と同じような施策、特に人に対する給与施策が打てないんだったら、もう人を雇用するビジネスモデル自体が難しいんじゃないかなと。

安田

政治家は選挙の「得票数」で選ばれますけど、社長は求人の「応募数」で選ばれると。

倉橋

まさに仰るとおりで。「うちは給料をこれだけ上げますよ」という公約を見て、社員さんは万代に入社してくれる。社長が公約違反をすれば、当然辞められてしまう。

安田

そこで「うちは大手じゃないんで、中小企業なんで」という言い訳は、働く側からしたら何の関係もない、ということですね。

倉橋

何の関係もないですね。むしろ僕は、福利厚生なども含めたら、大手より給料を上げてあげないと選んでもらえない、とさえ思いますよ。

安田

確かに。同じ給料なら福利厚生の手厚い大手に行きますよね。

倉橋

そうなんです。だから今、とにかく大手が強いんです。イオンさんなんて、物価高対策費をアルバイトの人にまで支給している。あれを見たときは本当にびっくりしました。

安田

なるほど。人を雇うビジネスを続けるなら、もう経営者は腹を括るしかない。

倉橋

そう思います。働いている人は、そういう会社の姿勢をシビアに見ていますから。


対談している二人

倉橋 純一(くらはし じゅんいち)
株式会社万代 代表

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株式会社万代 代表|25歳に起業→北海道・東北エリア中心に20店舗 地域密着型で展開中|日本のサブカルチャーを世界に届けるため取り組み中|Reuse × Amusement リユースとアミューズの融合が強み|変わり続ける売り場やサービスを日々改善中|「私たちの仕事、それはお客様働く人に感動を創ること」をモットーに活動中

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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