第124回 社長がスケジュール管理を「人に任せない」理由

この対談について

“生粋の商売人”倉橋純一。全国21店舗展開中の遊べるリユースショップ『万代』を始め、農機具販売事業『農家さんの味方』、オークション事業『杜の都オークション』など、次々に新しいビジネスを考え出す倉橋さんの“売り方”を探ります。

第124回 社長がスケジュール管理を「人に任せない」理由

安田

以前Xでもポストされてましたけど、倉橋さんってスケジュール管理を人に任せてないんですよね。


倉橋

はい、全部自分でやってます。

安田

それってけっこうすごいことだと思うんですよ。普通、倉橋さんくらいの会社の規模になったら社長秘書がいて、「空き日程は秘書に聞いてください」ってなるのが当たり前なので。


倉橋

確かに一般的にはそうかもしれませんね。でもうちは子会社も含めると役員が全部で10人いるんですけど、それに対して秘書は1人だけなんです。

安田

一人ひとりに専属の秘書をつけないのはなぜなんですか? 忙しい中で自分で調整するのって、単純に大変でしょう。


倉橋

いや、これには理由がありまして。だいたいスケジュールが決まるのって、夜だったり、ふと思いついた瞬間だったりするじゃないですか。

安田

ああ、確かに。会食の後とか、夜中に「あ、あれやらなきゃ」ってなるときはよくありますね。


倉橋

でしょう? だったらその場で自分でパパっと入れたほうが早いんですよ。それがもう癖になっちゃって。今の時代、夜にスタッフへ電話したりLINEしたりするのはコンプラ的にもよくないし、あと僕は移動距離がすごいので、スケジュール調整がいわゆる「パズル」なんです。

安田

ああ、なるほど。隙間を埋めるように予定を組んでいかないといけないと。


倉橋

ええ。この移動ならここにねじ込める、みたいな感覚って、自分じゃないとわからない。だからこそタイムマネジメントは自分の支配下に置いておきたいんです。さらに言えば、経営者のスケジュールって、どこからが仕事でどこからがプライベートか、線引きが難しいじゃないですか。

安田

言われてみればそうですね。単なる飲み会なのか、重要な接待なのか。


倉橋

そうそう。それをいちいち秘書に「これはプライベートだから」って説明するのが、もう面倒くさくて(笑)。もちろん、誰と会っているか、どこにいるかという情報は共有するようにしていますけどね。

安田

なるほど。別に隠しているわけじゃなくて、共有すべきところはしていると。ちなみにその「10人に1人」の秘書さんは、普段どんなお仕事をされてるんですか?

倉橋

日程は自分たちで決めちゃうので、その調整や移動の手配がメインですね。その中でもこないだ聞かれて面白かったのが、「次のフライトは常務とご一緒ですが、お隣の席になさいますか?」って。

安田

は〜、席を隣にするかまで聞いてくれるんですか。確かに、隣に社長が座っていたらおちおち眠ったりもできませんし、気を遣うでしょうからね(笑)。

倉橋

ええ(笑)。ですから夜遅い便とか疲れてそうなときは離します。でも朝イチの便なんかだと、仕事の話をするのにちょうどいいので「ぜひ隣で」ってお願いしたり。

安田

ほう、逃げ場のない上空でのマンツーマンミーティングですね(笑)。そういう移動はいいとして、「倉橋社長に会いたい」っていう外部からのオファーも多いんじゃないですか。取材や商談も、全部自分でさばいてるんですか?

倉橋

いえ、それはさすがに大変なので、一般的な窓口は「役員秘書を通してください」ってアナウンスしてます。そこで秘書が「この人は会う価値があるな」と判断したものだけが、僕のところに上がってくる仕組みですね。

安田

フィルター機能は秘書さんが担っているわけですね。そのうえで、最終決定は自分でやると。そこにはやっぱり「他人に自分の時間を握られたくない」みたいな美学があるんですか?

倉橋

美学といえるほど大層なものじゃないですけど、「秘書に連絡させます」っていうのが単純に嫌なんですよ。

安田

ほう、それはどういう理由で?

倉橋

食事に誘われて「いいですね、行きましょう」ってなった後に、「じゃあ詳細は秘書から連絡させますね」って自分が言うところを想像すると、なんか偉そうだなと思ってしまって(笑)。

安田

ああ、めちゃくちゃわかります(笑)。「俺は秘書を通さないと会えない人間なんだぞ」みたいに思われそうですもんね。

倉橋

そうなんですよ。自分のパーソナリティに合ってない気がして。それに誰かにスケジュールを管理してもらうと、いくら予定が埋まっていても実体が伴ってないように感じるんです。

安田

確かに。表向きはきちんと整っているんだけど、自分の「意志」や「熱量」が乗らないというか。そう考えると、「自分の時間は自分で決める」というのが、倉橋さんのパフォーマンスの源泉でもあるんでしょうね。


対談している二人

倉橋 純一(くらはし じゅんいち)
株式会社万代 代表

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株式会社万代 代表|25歳に起業→北海道・東北エリア中心に20店舗 地域密着型で展開中|日本のサブカルチャーを世界に届けるため取り組み中|Reuse × Amusement リユースとアミューズの融合が強み|変わり続ける売り場やサービスを日々改善中|「私たちの仕事、それはお客様働く人に感動を創ること」をモットーに活動中

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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