第126回 「誰にでもいい顔」をする店が選ばれないワケ

この対談について

“生粋の商売人”倉橋純一。全国21店舗展開中の遊べるリユースショップ『万代』を始め、農機具販売事業『農家さんの味方』、オークション事業『杜の都オークション』など、次々に新しいビジネスを考え出す倉橋さんの“売り方”を探ります。

第126回 「誰にでもいい顔」をする店が選ばれないワケ

安田

以前、「お客さんは無意識に心の中でその店を採点している」という話をされてたのが印象に残っていて。その点数が一定ラインを超えればリピートするし、下回れば二度と来ないっていう。


倉橋

そうですね。僕自身も、大事な商談とかプライベートで使うお店って、仙台でも札幌でもだいたい3ヶ所くらいに決まってるんですよ。

安田

結構絞られてますね。その「選ばれる店」になるポイントって何なんでしょう? やっぱり味ですか?


倉橋

味はもちろん大事ですけど、それだけじゃないですね。ビジネスパートナーを連れて行った時に話がしやすい静けさがあるかとか、スタッフが気取りすぎてないかとか。あと僕の中でめちゃくちゃポイントが高いのが「トータルの時間が短い」ことなんです。

安田

ほう、なるほど。だいたいトータルどのくらいの時間が理想なんですか?


倉橋

90分くらいで完結するのが理想ですね。例えば17時スタートで18時半に終わる。そうすればお店側も回転率を上げられるし、僕らも早く帰って休めるじゃないですか。

安田

ああ、わかります。私も夜は早く寝たいタイプなので、19時一斉スタートで3時間かかります、みたいな店はちょっと敬遠してしまいますね。終わるのが22時過ぎるってわかってると、行くのに相当な覚悟がいりますから(笑)。


倉橋

そうなんですよ。お店側は「たくさん出すこと」「時間をかけてもてなすこと」がお客さんのためだと思い込んでる節がありますけど、デザートが3種類も出てきて「いや、もう十分です」ってなることも多い(笑)。

安田

ああ、ありますよね(笑)。過剰なサービスより、こちらの都合に合った「居心地のよさ」のほうが大事なわけで。でもお店側からすると、自分の店がお客さんの合格ラインを超えてるかどうかって、どう判断すればいいんでしょう?


倉橋

一番確実なのは、2回、3回と来てくれたお客さんに、直接「来店動機」を聞くことですね。自分たちの強みって、案外自分では気づけないんです。お客さんが何に価値を感じて点数をつけてくれたのか、答え合わせをする必要がある。

安田

なるほど。「今の何が良かったのか」という事実はちゃんと聞くと。一方で、お客さんの「もっとこうしてほしい」という要望を聞きすぎると、お店の軸がブレてしまうことってありますよね。


倉橋

ああ、それはありますね。変えちゃいけない部分まで変えて迷走してしまうパターン。それに関しては面白いデータがあって。どんなに繁盛してる店でも、常連さんの2割は1年間で必ずいなくなるんですよ。

安田

あ、そうなんですか。引っ越しとかでもなく?

倉橋

そうです。1年くらいすると単純に飽きるらしいんです。カウンターに常連が10人いたら、そのうち2人は来年にはいなくなってる。

安田

なるほどなぁ。常連さんはいつか居なくなる前提で考えなきゃいけないと。そうなると、やっぱり重要なのは最初に決めたターゲット設定を忠実に守ることですね。

倉橋

その通りです。例えばうちの近所に「単身赴任の男性客に特化したお店」があるんですけど、そこはもう完全にターゲットを絞っているんです。だから単身赴任の期間は毎日通ってもらえるような設計になっている。

安田

へぇ、そんなお店があるんですね。

倉橋

ええ。逆に、地元に住んでる僕みたいな人間が行くと、ターゲットじゃないからなんとなく居心地が悪い(笑)。

安田

面白いですねぇ。誰にでもいい顔をするんじゃなくて、「この人のための店だ」と決めて、その人にとっての満点を目指す。それが結果として、長く愛される店作りにつながるわけですね。


対談している二人

倉橋 純一(くらはし じゅんいち)
株式会社万代 代表

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株式会社万代 代表|25歳に起業→北海道・東北エリア中心に20店舗 地域密着型で展開中|日本のサブカルチャーを世界に届けるため取り組み中|Reuse × Amusement リユースとアミューズの融合が強み|変わり続ける売り場やサービスを日々改善中|「私たちの仕事、それはお客様働く人に感動を創ること」をモットーに活動中

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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