第127回 「隙間」に目をつけたおもしろ家電の発想力

この対談について

“生粋の商売人”倉橋純一。全国21店舗展開中の遊べるリユースショップ『万代』を始め、農機具販売事業『農家さんの味方』、オークション事業『杜の都オークション』など、次々に新しいビジネスを考え出す倉橋さんの“売り方”を探ります。

第127回 「隙間」に目をつけたおもしろ家電の発想力

安田

アイリスオーヤマさんの「スキマックス」っていう冷凍庫、ご存知ですか?


倉橋

ああ、知ってます。家具と家具の隙間に入る細い冷凍庫ですよね。

安田

そうです。あれを見てて不思議に思ったのが、1センチ刻みでラインナップを用意するわけにもいかないし、どうやってサイズを決めたんだろうって。家の隙間の幅なんて各家庭でバラバラじゃないですか。


倉橋

ああ、確かにそうですね。

安田

平均的な隙間のサイズをサンプリングしてるのか、それとも一番小さく作って「とりあえず入りますよ」って言ってるのか。倉橋さんなら、どういう基準で開発します?


倉橋

僕ならとにかく技術的に可能な限り細く、小さく作りますね。「隙間にぴったり」っていうのはあくまでキャッチコピーというか枕詞であって、実態は「超スリムな冷凍庫」を作ってるんじゃないかな。

安田

なるほど。「細い冷凍庫」と言うよりも「スキマックス」と言った方が、消費者の課題解決として響きますもんね。ただ普通はそんなニッチな商品、企画会議で落とされそうじゃないですか。「市場規模が小さい」とか言われて。


倉橋

そこがアイリスオーヤマさんのすごいところで、毎週のように全従業員から商品開発の提案を集める「プレゼンタイム」があるらしいんです。しかもトップが必ずそれをチェックする。そしてヒットすればその提案者がプロジェクトリーダーになれるという仕組みだそうです。

安田

全社員参加ですか! それって一見すごそうですけど、経営視点で見るとすごく無駄な気もしませんか? 商品開発ってセンスやスキルが必要じゃないですか。


倉橋

確かに、普通のメーカーならそうかもしれませんね。

安田

例えば作詞だって素人ができなくはないけど、プロが作ったほうが平均点は高いしヒットする確率は上がりますよね。商品開発も同じで、素人のアイデアを全部聞くより、プロが考えたほうが確実なんじゃないかって思ってしまいます。


倉橋

それでいうと、アイリスさんの家電って「おもしろ家電」っていうコンセプトがあるんです。クスッと笑えるようなユニークな視点を重要視している。そのためには、いち生活者としての「あったらいいな」を形にしているんです。

安田

ははぁ、なるほど。ガチガチのメーカーの商品部よりは、素人みたいな感覚の方がいいアイデアが出ると。確かに隙間用の冷凍庫なんて、普通の大手なら即却下しそうです。

倉橋

仙台でアイリスさんの商品を扱ってるお店を見たことがあるんですけど、実際面白いんですよ。「自分で買うかは別として、人にあげたらウケるかな」みたいな商品が結構あって。クスッとする商材を作るための仕組みなんでしょうね。

安田

そうやってニッチなところを攻めて商品化するチャレンジ精神はすごいですよね。

倉橋

そうですね。同じ東北の企業として、斬新なものを生み出し続ける姿勢は本当に勉強になりますし、リスペクトしてます。実は僕も最近、中国に行って自社オリジナルの「台湾キャッチャー」の新型を作ってきたんですよ。

安田

えっ、クレーンゲーム機を自社開発してるんですか!? それはまた思い切りましたね。

倉橋

今までは既製品をカスタマイズして妥協してたんですけど、一から自分たちで作ってみようと。これがやってみるとめちゃくちゃ面白いプロセスで。先日、福岡の店舗にその機械が納品されてるのを見たんですけど、すごくワクワクしましたよ。

安田

自分の作ったものが世に出ているのを見るのは感慨深いでしょうね。

倉橋

ええ。自分たちが作った一番最初の機械が、来年とか再来年に新しいカルチャーやムーブメントになるかもしれないと想像するとやりがいを感じますね。

安田

ニッチなニーズでいうと、Amazonなんかを見ていても、中国のメーカーってどんなに小さなニーズでも拾って商品化するスピードとハングリーさがありますよね。アイリスさんや今回の倉橋さんの動きにも、それに通じるスピリッツを感じます。

倉橋

仰るとおりです。彼らはターゲット設定も明確なんです。例えばアイリスさんの家電を買う人って、最高級の機能よりも「ユーモア」や「ちょうどよさ」を求めている。

安田

確かに確かに。「お、値段以上」というのはニトリのキャッチコピーですが(笑)、まさに価格以上の価値を感じさせつつ、完璧すぎない親しみやすさがありますよね。

倉橋

そうそう。機能をバリバリに詰め込むんじゃなくて、ターゲットが喜ぶポイントを突いた「おもしろ家電」を作り続けているんですよね。

安田

なるほど。それが大企業になっても失われないベンチャー精神なのかもしれませんね。


対談している二人

倉橋 純一(くらはし じゅんいち)
株式会社万代 代表

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株式会社万代 代表|25歳に起業→北海道・東北エリア中心に20店舗 地域密着型で展開中|日本のサブカルチャーを世界に届けるため取り組み中|Reuse × Amusement リユースとアミューズの融合が強み|変わり続ける売り場やサービスを日々改善中|「私たちの仕事、それはお客様働く人に感動を創ること」をモットーに活動中

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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