第134回 地元の家族を「えこひいき」する経営論

この対談について

“生粋の商売人”倉橋純一。全国21店舗展開中の遊べるリユースショップ『万代』を始め、農機具販売事業『農家さんの味方』、オークション事業『杜の都オークション』など、次々に新しいビジネスを考え出す倉橋さんの“売り方”を探ります。

第134回 地元の家族を「えこひいき」する経営論

安田

今、日本はインバウンドや移民の方が急増していますよね。新宿なんかだと数人に一人は外国人ですし、地方都市でもその傾向は顕著です。万代さんとしても、今後は外国人ファミリーを意識したターゲット設定が必要になるんじゃないですか?


倉橋

それがですね、現段階でそういう層をはターゲットには入れていないんです。あくまで日本の地方都市に住む、4人家族がメインです。

安田

へぇ、それは意外ですね。外国人観光客って、余った小銭でカプセルトイを回したり、日本のサブカルチャーにお金を使うイメージがあるので、万代さんとは相性がよさそうですけど。あえて避けているんですか?


倉橋

避けているというか、ターゲットをブレさせたくないんです。今は日本のファミリー層に楽しんでもらうことに全振りしているので。

安田

なるほど。そこを徹底しているわけですね。


倉橋

ええ。だから免税対応もしないし、店内の表記もインバウンド向けにはしていません。消費税の還付とかタックスフリーとかもやっていないですし。

安田

ドン・キホーテさんは免税対応も積極的で、インバウンドを完全に取り込んでいますが、それとは逆を行くと。


倉橋

そうですね。僕もよく視察に行きますけど、ドンキさんのスナック菓子コーナーひとつ見ても、明らかにインバウンドを意識した品揃えになっています。一方でロピアさんは、純粋な日本人ターゲットの品揃えです。

安田

ははぁ、なるほど。万代さんは後者に近いと。


倉橋

そういうことです。地域に住んでいる人たちが日常的に使う場所でありたいなと。

安田

「誰にでもいい顔をしない」というのは勇気がいることですけど、強いブランドを作るには不可欠ですよね。インバウンドで来た人が楽しいならそれでいいけど、そちらに合わせることはしないと。


倉橋

ええ。ターゲット設定に重きを置いているので。

安田

なるほどなぁ。とはいえ、前回仰っていた東南アジア進出となると、話は別ですよね? 向こうでは現地の人に合わせる必要がある。

倉橋

もちろんです。海外に出るなら、日本と同じやり方では絶対に通用しません。向こうの家族構成や所得の伸び方、遊び方のルールに合わせて、ターゲット設定も商品構成もゼロから作り直します。

安田

日本とは所得環境も違いますもんね。日本はどうしてもデフレマインドが抜けなくて「安く遊びたい」というニーズが強いですが。

倉橋

そこは全然違いますね。成長著しい東南アジアの方々は、収入が上がっていく未来が見えているので、欲しいものや楽しいことにはしっかりお金を使う。

安田

「未来に希望があるからお金を使う」というのは羨ましい話ですね(笑)。

倉橋

ええ、本当に(笑)。だからこそ、低価格路線だけでなく「少し高くても欲しい」と思わせる商品をどうラインナップするかが鍵になります。

安田

ふむふむ。家族の動き方も研究が必要でしょうし、4人で動くのか、2人で動くのかといった行動特性も違うでしょうね。

倉橋

そうなんです。日本国内ですら、一口に家族連れといっても、北海道福岡では微妙に違いがあったりしますからね。

安田

ああ、やっぱり。コンビニでも地域によっておにぎりの具やおでんの出汁を変えたりしていますけど、アミューズメントでも差が出るものなんですね。

倉橋

そうですね。例えばポテトチップスの味でも地域性が出ます。「今日はこれが欲しい」と思う感覚は、場所によって確実に違うんです。

安田

ははぁ、ポテチの味まで違うとは。

倉橋

セブンイレブンさんが地域ごとに品揃えを変えるように、僕らもその場所ごとの「感度」に合わせないといけない。そういうところはバイヤーがかなり細かく見てくれています。

安田

それを全部自社で開拓しているのがすごいですよね。福岡に出店した時も、現地の問屋を一から開拓したと聞きましたし。物流も仕入れルートも全部作り直しになるわけですから、相当な労力でしょう。

倉橋

いやもう、本当に大変でした(笑)。元々扱っている食品や日用品をそのまま持っていこうとしても、物流の問題で対応できないことが多いんです。

安田

問屋さんが対応できないわけですね。

倉橋

そうなんです。「東北から福岡へ持っていく」ということに対応できない。だから現地の業者さんを新規でコツコツと開拓して。

安田

大手チェーンなら一括でドンといけるんでしょうけど、1店舗のためにそこまでやるのは並大抵のことじゃないですよね。

倉橋

そうなんです。1店舗出すだけでも本当に大変でした。だからこそ、オープンしてお客さんがたくさん来てくれた時に初めて「ああ、これでよかったんだ」と納得できるというか。そこでようやく報われた気がします。

 


対談している二人

倉橋 純一(くらはし じゅんいち)
株式会社万代 代表

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株式会社万代 代表|25歳に起業→北海道・東北エリア中心に20店舗 地域密着型で展開中|日本のサブカルチャーを世界に届けるため取り組み中|Reuse × Amusement リユースとアミューズの融合が強み|変わり続ける売り場やサービスを日々改善中|「私たちの仕事、それはお客様働く人に感動を創ること」をモットーに活動中

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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