第84回 「いい行列店」と「悪い行列店」

この対談について

“生粋の商売人”倉橋純一。全国21店舗展開中の遊べるリユースショップ『万代』を始め、農機具販売事業『農家さんの味方』、オークション事業『杜の都オークション』など、次々に新しいビジネスを考え出す倉橋さんの“売り方”を探ります。

第84回 「いい行列店」と「悪い行列店」

安田

行列を見たら必ず並ぶ」という倉橋さんに、マーケティング的な「行列の正解」を聞いてみたいんです。実店舗はもちろんですけど、オンラインでも「行列感」があった方が人は買いたくなりますよね。


倉橋

そうですね。リアルでもオンラインでも、「行列」があるのはいいことだと思います。

安田

そうですよね。私も何時間も並ばされるのは嫌ですけど、少しの行列があると「何だろう?」と興味を惹かれます。でもその一方で、「お客様を待たせないのがプロだ」という意見もあると思うんです。


倉橋

それはそれで正論だとは思いますけれど。でもシンプルに「並んででもこの商品がほしい」と思ってもらえているなら、ポジティブな状態だと思いますね。

安田

なるほど。逆に言えば、行列ができていない商品には魅力がない、とも言えるわけですか。


倉橋

もちろんすべてがそうとは言えませんけどね。でも大前提として、「そこまでほしくはないかな」という商品に人は並ばない。つまり行列のできている商品には相応の魅力がある、と考えるのが合理的です。

安田

確かに確かに。そういえばスーパーマーケットのロピアの行列に並んだと仰ってましたよね。90分待ったと聞いて驚きましたよ。


倉橋

スーパーで90分も待たされることなんてないですもんね(笑)。でも僕はその「ただいま90分待ちです」って札を見て、どれだけすごい店なんだろうとワクワクしたんです。並んでいる他の人を見ても、皆さん楽しそうでしたよ。

安田

なるほどなぁ。つまり並んでいる時間も「エンタメ」になっているわけですね。でも人によっては「こんなのタイパが悪い」と思ってしまうんじゃないですかね。「お客様の大切な時間を無駄にするなんて」と不満を言う人もいそうです。


倉橋

まぁ、その理屈もわからなくはないんですけど。でもそういう方は、それこそ完全予約制のお店なんかに行けばいいわけで。もっとも、そういう店は何ヶ月先まで予約が埋まっていたりするから、むしろさらに長い時間待たされちゃう気もしますけどね(笑)。

安田

予約をしてから当日までが「行列」みたいなものだと(笑)。でも倉橋さんのように待っている間も楽しめる人なら、例えば2か月先の予約なら、2ヶ月間ずっとワクワクできそうですね。何なら実際に食べてる時よりも待っている時間の方が楽しかったり(笑)。


倉橋

そうなんですよ(笑)。「予約がなかなか取れない店で予約できた」というだけでまず嬉しいですし、その気持ちが待ってる間続いていく。そう考えると待たされるのも悪くないですね。

安田

経営者目線ではどうなんでしょうね。人気があって行列ができるならいいですけど、そうじゃない理由で行列ができちゃう場合もありそうだし。


倉橋

わかります。コンビニのレジが1つしか空いてなくて長蛇の列ができている、みたいな「悪い行列」は改善すべきですよね。

安田

ああ、なるほど。オペレーションが悪いなどの理由でできた行列は「いい行列」ではないと。

倉橋

そういうことです。要は待ち時間と手に入る商品やサービスとのバランスが取れていないのはマズイということです。90分並んでも最終的に満足できるならそれは「いい行列」なわけで。

安田

日本人は特に、行列を楽しむ文化がありますもんね。海外の人からは「並んでまで食べるの?」なんて驚かれるようなものでも、「待ってまで食べたから感動が大きいんだ」と考えることができる。そう考えると、「行列は日本が誇るエンターテインメントの一つ」なのかもしれませんね(笑)。

 

 


対談している二人

倉橋 純一(くらはし じゅんいち)
株式会社万代 代表

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株式会社万代 代表|25歳に起業→北海道・東北エリア中心に20店舗 地域密着型で展開中|日本のサブカルチャーを世界に届けるため取り組み中|Reuse × Amusement リユースとアミューズの融合が強み|変わり続ける売り場やサービスを日々改善中|「私たちの仕事、それはお客様働く人に感動を創ること」をモットーに活動中

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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