庭師でもない。外構屋でもない。京都の老舗での修業を経て、現在は「家に着せる衣服の仕立屋さん(ガーメントデザイナー)」として活動する中島さん。そんな中島さんに「造園とガーメントの違い」「劣化する庭と成長する庭」「庭づくりにおすすめの石材・花・木」「そもそもなぜ庭が必要なのか」といった幅広い話をお聞きしていきます。
第114回 庭は住む人の心を映す「鏡」である

最近、知人の経営者から面白い話を聞いたんです。横浜に家を建てて小さな庭を手に入れたそうなのですが、もともと庭いじりには全く興味がなかったのに、今では休日に草むしりをしている時間が、何より心地よいと感じるようになったと。

雑草を抜きながら物思いに耽ったり、自然と触れ合ったりする時間に心のゆとりを感じるんだそうで。そして不思議なことに、そういう時間を大切にするようになってから、仕事も人間関係もより上手くいくようになったと話していました。

それが、ご本人たちは「手入れ」という感覚ではないようなんです。僕たちが剪定した枝も、「素敵なものは、中で生け花にするから少し残しておいて」と仰る。暮らしの隅々まで、美意識と愛情が行き届いているんです。

私も若い頃は、高価なものを手に入れたり、好きなものを好きなだけ買えたりすることが「豊かさ」だと思っていたんです。でも今は、庭師さんに造ってもらった美しい庭を自分の手で丁寧に維持していくことこそが、本当の豊かさにつながるんじゃないかと感じていて。

違いますね。例えば私の剪定は、パッと見ただけではどこを切ったか分からないくらい、少しずつ枝を梳いていくような切り方なんです。「バッサリ切ってスッキリした」という感じではなくて。

そうなんです。どこをどう切ったかすべてわかるわけではないにせよ、「すごくいい感じになったね」と喜んでくださるんですよ。木の本来の美しさを引き出すという意図を汲み取ってくださる。そういう瞬間は本当に嬉しいですね。

わかります。仕事でもプライベートでも、そういう丁寧な感性を持った方と関わっていきたいと、私も常々思っています。効率や生産性だけではない、心の豊かさを大切にする生き方が、美しい庭に現れるんでしょうね。
対談している二人
中島 秀章(なかしま ひであき)
direct nagomi 株式会社 代表取締役
高校卒業後、庭師を目指し庭の歴史の深い京都(株)植芳造園に入社(1996年)。3年後茨城支店へ転勤。2002・2003年、「茨城社長TVチャンピオン」にガーデニング王2連覇のアシスタントとして出場。2003年会社下請けとして独立。2011年に岐阜に戻り2022年direct nagomi(株)設立。現在に至る。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。


















