第122回 「愛車」と「景観」のちょうどいい距離感

この対談について

庭師でもない。外構屋でもない。京都の老舗での修業を経て、現在は「家に着せる衣服の仕立屋さん(ガーメントデザイナー)」として活動する中島さん。そんな中島さんに「造園とガーメントの違い」「劣化する庭と成長する庭」「庭づくりにおすすめの石材・花・木」「そもそもなぜ庭が必要なのか」といった幅広い話をお聞きしていきます。

第122回 「愛車」と「景観」のちょうどいい距離感

安田

景観を取るか利便性を取るかって、結構悩むポイントだと思うんです。例えば家に駐車場を作るにしても、利便性を考えれば家の目の前に停めたいけれど、街の景観や庭の美しさを考えると、車がドーンと鎮座しているのはちょっと…という。


中島

そうですね。庭づくりの観点でいうと、車はリビングや道路から見えない場所にあるのが理想的です。ただ毎日の通勤や買い物を考えると、あまり不便でも困るじゃないですか。

安田

そうですよね。中島さんはその辺りのバランスをどう設計されているんですか?


中島

もちろん状況に応じて様々なんですが、「リビングの中から見た時に窓の真正面に車がある」という状況だけは避けるようにしていますね。

安田

ああ、なるほど。せっかくの休日にリビングでくつろいでいる時、窓の外に見えるのが自分の車だけっていうのは、確かに味気ないですもんね。ただ、狭い敷地だとリビングの前が駐車場になりがちなんじゃ?


中島

そうですね。そういう場合は、タイヤを入れる物置などを死角に配置したり、木を植えて「木越しに車が見える」ようなフィルターをかけたりしてますね。

安田

ああ、タイヤの物置! 雪国や岐阜のような地域だとスタッドレスタイヤが必須だから、履き替えたタイヤの置き場所に困るんですよね。あれがリビングから丸見えだと、確かに一気に生活感が出ちゃいます。


中島

そうなんです。あれをどう隠すかは結構重要ですね。あと景観の話でいうと、道路側の壁を高くして車を隠すという方法もあると思いますが、防犯的な観点で考えると、それもちょっと問題があったりして。それもあって最近はあまり高い壁を作らない傾向にあります。

安田

確かに、最近は境界のブロックも1段か2段、高さ40センチくらいのものが多いですもんね。


中島

ええ。ただ40センチという高さは、運転席から非常に見にくいんですよ。それで駐車のときにうっかりぶつけてしまったり。そういう事故防止のために1本木を植えて目印にしたりすることもありますね。

安田

なるほどなぁ。いろいろとプロの工夫があるわけですね。ちなみにカーポートはどうなんです? 景観的にはあまりよくない気もしますが。


中島

そうですねぇ。雨の日に濡れずに乗り降りできるのは便利ですが、どうしても家の外観を損ねてしまいがちではあります。…ただ、ここは住まれる方の価値観によるんですよね。車が好きな人はやはり屋根を作りたいわけで。

安田

ああ、私も車が好きなのでよくわかります。雨ざらしにして汚れるのは嫌だし、洗車の手間を考えると屋根が欲しい。…ちなみに中島さんのご自宅はどうされているんですか?


中島

うちは付けていません。汚れたら洗車すればいいか、と割り切っています(笑)。

安田

へぇ。雨が降るたびに毎回洗うんですか?


中島

毎回ではないですけど、汚れてきたら洗います。やっぱり建物が一番きれいに見える状態を優先したいので。ただお客様のご要望で付ける場合も、屋根の厚みが6センチくらいの、非常に薄くてスタイリッシュなものを選ぶようにしています。

安田

なるほど〜。それぐらいの厚みなら存在感もあまりなくて、景観の邪魔をしなさそうですね。やっぱりお客さんとしては、「濡れたくない」という要望の方が多いですか?

中島

多いですね。雨の日に買い物から帰ってきて、たくさんの荷物を降ろす時や、お子さんをチャイルドシートに乗せ降ろしする時なんかは、やっぱり屋根がないとびしょ濡れになりますから。「おしゃれは我慢」とは言いますけど、毎日のこととなると厳しいですよね。

安田

確かに確かに。スーパーの袋を両手に持って、傘もさせない状態で雨に打たれるのは辛いですもんね(笑)。

中島

そうなんです(笑)。かといって、カーポート自体を木で隠そうとすると、高さが3メートル近くあるので木も巨大になってしまって、かえって圧迫感が出てしまう。なので、カーポートを付けるなら、できるだけ線が細く主張しないデザインのものを選んで、機能と見た目のバランスを取るしかないですね。

安田

ふむふむ。雨に濡れるのを我慢して美しい景観を取るか、多少見た目を犠牲にして快適さを取るか。中島さんの仕事は、その妥協点を美しく着地させることでもあると。

中島

そうですね。「付ける付けない」の二択ではなく、素材選びや配置でできるだけ建物を美しく見せる方法を提案していきたいですね。

 


対談している二人

中島 秀章(なかしま ひであき)
direct nagomi 株式会社 代表取締役

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高校卒業後、庭師を目指し庭の歴史の深い京都(株)植芳造園に入社(1996年)。3年後茨城支店へ転勤。2002・2003年、「茨城社長TVチャンピオン」にガーデニング王2連覇のアシスタントとして出場。2003年会社下請けとして独立。2011年に岐阜に戻り2022年direct nagomi(株)設立。現在に至る。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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