第124回 起伏のある庭が落ち葉を「景色」に変える理由

この対談について

庭師でもない。外構屋でもない。京都の老舗での修業を経て、現在は「家に着せる衣服の仕立屋さん(ガーメントデザイナー)」として活動する中島さん。そんな中島さんに「造園とガーメントの違い」「劣化する庭と成長する庭」「庭づくりにおすすめの石材・花・木」「そもそもなぜ庭が必要なのか」といった幅広い話をお聞きしていきます。

第124回 起伏のある庭が落ち葉を「景色」に変える理由

安田

中島さんの作られるお庭を見ていて気付いたんですが、地面が真っ平らじゃないことが多いですよね。自然の山の中みたいに、緩やかに盛り上がったり下がったりしている。あれは意図的にそういう「起伏」をつけているんですか?


中島

起伏は必ずつけるようにしています。庭を平らに作ってしまうと、どうしても奥行きのない風景になってしまうので。テラスや通路など、人が歩く場所やバーベキューをする場所は平らにしなければいけませんが、その周りの植栽スペースには土を盛って高低差をつけることが多いです。

安田

例えばリビングから庭を眺めた時、手前が低くて奥が高いとかそういうことでしょうか。


中島

そうです。起伏があることで、地面のすべてが見渡せなくなりますよね。例えば、少し土が盛り上がっていることで、その奥にある駐車場のタイヤ止めが見えなくなったりする。

安田

ああ、そうか。起伏にはそういう効果もあるんですね。


中島

ええ。見えない部分ができると、人間の脳は勝手に「その先に何かがある」と想像して、実際の面積以上に奥行きを感じるんです。

安田

ははぁ、なるほど。隠すことで広さを感じさせるというのは面白いなぁ。その土の盛り方にもセオリーみたいなものはあるんですか? ただ盛ればいいってものではないですよね。


中島

そうですね。ただ高さを出すだけではなく、頂点を作ってそこからまた少し下がったところまで作ります。壁に向かってずっと上がりっぱなしで終わるより、最後にスッと下がるラインを作ってあげた方が、空間に深みが出るんです。

安田

でもそれだけの起伏を作ろうと思ったら、かなりの量の土が必要になりますよね。元々の庭の土を使うんですか?


中島

いえ、岐阜の造成地の土は、ほとんどが「山砂利」と呼ばれる砂利混じりの固い土で、そのままでは木が植えられないことが多いんです。ですから基本的には土を購入して運び込みます。

安田

ああ、確かに新しい分譲地とかを見ると、白っぽくて石がゴロゴロした地面が多い気がします。そのままではいい木は育たないと。


中島

そうなんです。だから土の入れ替えはどうしても必要になりますね。最近だと、150坪くらいの広いお庭で「公園みたいにしたい」というご要望があって、その時は2トンダンプで10台分の土を入れました。

安田

なんと! すごい量ですね。コストもかかりそうですが、私がお客さんだったら、「やっぱり平らでいいよ」なんて言ってしまいそうです(笑)。


中島

笑。それが、実は土を入れるコストって、コンクリートを打ったり石を貼ったりするのに比べればそれほど高くはないんです。他の現場でいい土が出た時に、それを運んでくれば処分費も浮きますから、サービスで入れることもありますし。

安田

へぇ、なるほど。捨てるはずの土で庭が立体的になって、しかもコストダウンにもなると。そうやって土を入れて木を植えていくわけですね。でもいざ植えると、今度は「落ち葉」を気にするお客さんもいらっしゃるんじゃないですか?


中島

葉が落ちやすい樹種だと、ご近所に落ち葉が飛んでしまうこともあるので、そういう場合は「葉が落ちない木にしてほしい」と言われることもありますね。

安田

でも葉が落ちない木となると、常緑樹にするしかないですよね。

中島

そう思われる方が多いんですが、実は常緑樹も葉っぱは落ちるんです。一気に落ちないだけで、1年か2年かけて全ての葉が生え変わるので、結局掃除は必要で。「葉が落ちない木」というのは、造花でもない限り存在しないわけです。

安田

へぇ、「常緑樹=落ちない」というのは誤解なんですね。木を植える以上、落ち葉掃除はセットで考えないといけないと。

中島

ええ。私の庭には全面的に防草シートを貼るので、その機能を損なわないためにも、適宜落ち葉は取り除いていただきたいです。

安田

なるほどなるほど。とはいえ、落ち葉のある風景も結構いいものですよね。もちろんたまってきたら掃除することは前提として。

中島

仰るとおりですね。起伏をつけて土のスペースをしっかり作っておけば、落ち葉もまた「秋の景色」として楽しめます。コンクリートの上とかに落ちるからゴミに見えるわけで、土の上なら自然の一部に見える。そういった意味でも、土を入れた起伏のある庭作りをおすすめしています。

安田

なるほどなぁ。平らな地面に魔法をかけて、広く奥深い空間に変えてしまう。そして落ち葉さえも景色にしてしまう。それが庭師の技術なんですね。

 


対談している二人

中島 秀章(なかしま ひであき)
direct nagomi 株式会社 代表取締役

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高校卒業後、庭師を目指し庭の歴史の深い京都(株)植芳造園に入社(1996年)。3年後茨城支店へ転勤。2002・2003年、「茨城社長TVチャンピオン」にガーデニング王2連覇のアシスタントとして出場。2003年会社下請けとして独立。2011年に岐阜に戻り2022年direct nagomi(株)設立。現在に至る。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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