第127回 香りをデザインする庭の作り方

この対談について

庭師でもない。外構屋でもない。京都の老舗での修業を経て、現在は「家に着せる衣服の仕立屋さん(ガーメントデザイナー)」として活動する中島さん。そんな中島さんに「造園とガーメントの違い」「劣化する庭と成長する庭」「庭づくりにおすすめの石材・花・木」「そもそもなぜ庭が必要なのか」といった幅広い話をお聞きしていきます。

第127回 香りをデザインする庭の作り方

安田

前回は雨の話でしたが、今回は「風」について聞かせてください。中島さんが作るお庭って、雑木で目隠しを作ったりで、高いブロック塀で囲うことはないですよね。


中島

ええ。圧迫感がない方がいいというのもありますし、防犯上もある程度人の目が入る方が安全なので。

安田

ああ、そうでしたね。それに加えて、風通しも全然違うんだろうなと思ったんです。目隠しになる雑木を植える時にも、風の通り道を意識したりするんですか?


中島

そうですね。そもそも建物自体が大きな壁になって風を遮っているので、庭木や塀でさらに囲ってしまうと風の逃げ場がなくなってしまいます。風が抜けないと、湿気がこもって病気になったり虫がつきやすくなったりするんです。

安田

人間も部屋の換気をしないと空気が淀んで体調を崩しがちですが、木も同じだと。


中島

ええ。手入れの面から考えても、風が抜けないと落ち葉が一ヶ所に溜まってしまうことになりますし。

安田

ああ、そうか。逆に言えば、まんべんなく散ってくれたら、そんなに掃除しなくていいわけですね。


中島

ええ。掃除のしやすさも含めて、風を止めてしまわないことが、庭にとっても住む人にとっても快適な環境を作る秘訣だと思います。

安田

そうかそうか。ちなみに風が強すぎて困ることはないんですか?


中島

立地によっては調整が必要なこともありますね。例えば山からの吹き下ろしが強い場所などは、木だけでは防ぎきれないのであえて塀を立てることもあります。強い風に吹かれ続けると、木もストレスを感じて育ちが悪くなってしまうので。

安田

へぇ! 基本的には風を通してあげたいけど、強すぎてもダメだと。そのあたりのコントロールはどうやって設計しているんですか?


中島

完全に風を止めるのではなく、風の勢いをそぐようなイメージですね。目隠しで完全に塞ぐのではなく、隙間のあるスリットタイプを選んだり、塀の下の部分を少し開けて風が抜けるようにしたり。

安田

なるほど。そうやって風の流れを調整しているわけですね。


中島

そうですね。その上で、庭全体の空気が循環するように、どこかに風の抜け道を作るようにしています。

安田

ははぁ、なるほど。そうやって適度に調整された風がリビングに入ってきたら気持ちいいだろうなぁ。


中島

ええ。雑木が風で揺れている姿をリビングから眺めるのも、心地いいものですよ。あとは玄関のアプローチやリビングの窓の近くなど、人が生活する場所の風上に香りのよい木を配置することもあります。

安田

いいですねぇ。季節の花の香りが風に乗って家の中に漂ってくるなんて最高ですよ。具体的にはどんな木を使うんですか?

中島

春なら沈丁花(ジンチョウゲ)ですね。あまり大きくならずに、春にはすごくいい香りを届けてくれます。あとはクチナシの仲間で「コクチナシ」という小さいタイプもよく使いますね。

安田

なるほど。そういえば中島さんって、「家のキンモクセイの香りが強すぎて子どもの頃は苦手だった」って仰ってましたよね。私もキンモクセイは好きですけど、確かに近くで嗅ぎすぎると強烈すぎることがあるなと思うんです。

中島

そうなんです。だから、あまり窓の真下とか玄関の目の前すぎるところには植えず、少し離れた場所から風に乗ってふんわり香るくらいの距離感を大切にしています。香りの強さは距離で調整してあげるのが、奥ゆかしくていいかなと。

安田

つまり、風を使って「香り」をデザインするということですね。いやぁ、庭づくりってやっぱり奥が深いですね。

 


対談している二人

中島 秀章(なかしま ひであき)
direct nagomi 株式会社 代表取締役

Facebook

高校卒業後、庭師を目指し庭の歴史の深い京都(株)植芳造園に入社(1996年)。3年後茨城支店へ転勤。2002・2003年、「茨城社長TVチャンピオン」にガーデニング王2連覇のアシスタントとして出場。2003年会社下請けとして独立。2011年に岐阜に戻り2022年direct nagomi(株)設立。現在に至る。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

Twitter  Facebook

1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

感想・著者への質問はこちらから