第134回 美しい庭づくりに欠かせない「人生の余白」

この対談について

庭師でもない。外構屋でもない。京都の老舗での修業を経て、現在は「家に着せる衣服の仕立屋さん(ガーメントデザイナー)」として活動する中島さん。そんな中島さんに「造園とガーメントの違い」「劣化する庭と成長する庭」「庭づくりにおすすめの石材・花・木」「そもそもなぜ庭が必要なのか」といった幅広い話をお聞きしていきます。

第134回 美しい庭づくりに欠かせない「人生の余白」

安田

日本庭園には「余白」という考え方がありますよね。木を密集して植えないとか。


中島

そうですね。ただ、単に隙間があればいいというわけでもなく、独特の空間の作り方みたいなものがあると思います。

安田

確かに確かに。そういえば無印良品には「無」じゃなくて「空(くう)」というコンセプトがあるらしいんですが、無いわけじゃなくて「空間がある」という感覚だと思うんです。そこに通じるものがある気がして。


中島

ああ、確かに。ただ何もないのではなく、意味のある余白を残すことが大事なんでしょうね。

安田

でも余白を作るってすごく難しいと思うんです。その人の感性によって、何をもって余白なのか、何が美しいのかも変わってくるわけで。中島さんはそういう空間の作り方をどこで研究したんですか?


中島

うーん、研究というよりは経験の積み重ねですね。いろいろな現場を見せていただく中で、「これぐらいの余白が心地いいな」という感覚が蓄積されてきたというか。

安田

なるほどなるほど。私は庭師ではないですけど、人生とか仕事の余白を結構大事にしているんです。仕事も根を詰めてやりすぎるとクオリティが落ちるでしょう?


中島

よくわかります。ずっと予定を詰め込んでいると見えなくなってしまうものもありますからね。余白があるからこそ新しいアイデアが浮かんだり、一つの仕事にじっくり向き合えたりするんだと思います。

安田

そうなんですよ。例えば旅行に行っても分単位でスケジュール入れる人もいますが、私はあれだと旅行に行った気がしなくて(笑)。せっかく行くなら何もしない時間も欲しい。中島さんはプライベートのスケジュールはどうされてるんですか?


中島

僕もあまり予定を詰められるのは好きじゃないですね(笑)。お休みだから絶対どっかに行くということもないですし、「気が向いたらちょっと出かけるか」ぐらいの方が好きです。先々まで全部予定が埋まってると息苦しくなってしまうので。

安田

やっぱりそうですよね。自分の仕事のペースを自分で決めるライフスタイルだからこそ、そういう余白を大事にしてるんだと思うんです。


中島

そうですね。たまにあえて「何もしない予定」を入れることもあります。

安田

ああ、「ここは絶対予定を入れないようにしよう」みたいなことですよね。私もやりますよ。その日は家族でのイベントも入れず、もう何もしないって決めています。中島さんはそういう日は何をして過ごすんですか?


中島

本を読んだりもしますが、自宅の庭で何かしていることが多いですね。最近家を建て替えてから、そういうのんびりした時間を庭で過ごすことが増えました。

安田

いいですねぇ。自分でもそういう時間を作りたくて、居心地のいいお庭を設計したわけですか。


中島

そうなんです。だから「何もしない」と決めた日は、お昼ぐらいからお酒を飲んでしまうくらい徹底しています(笑)。その時の気分で、最初はビール、次に日本酒やワインを飲むときもあります。

安田

へぇ、最高じゃないですか。合わせるおつまみは自分で用意するんですか?

中島

料理は嫌いじゃないので、だいたい自分で用意しています。お肉を焼いたり野菜を炒めたり、最近野菜が少ないなと思ったら野菜スープを作ったり。

安田

昼から1人で料理作ってお酒飲んでるんですね。うらやましいなぁ。天気のいい日なんて、気持ちいいでしょうね。

中島

ゆっくり自分の作った庭を見ながら「もうちょっとこうした方がよかったかな」なんてあれこれ考えるのが楽しくて(笑)。外用の座布団を並べて寝転がってみたり、冬場も昔ながらのコロナストーブを出して1人でバーベキューをしながら過ごすこともありますし。

安田

寒い中で1人でバーベキューするんですか!(笑)。うちはマンションなのでさすがにバーベキューはできませんが、自宅に庭があったら存分に楽しめますね。

中島

かなり満喫していると思います(笑)。ただ出張中はお庭がない生活なので出かけることが多いです。休みの日は服を見に行ったり、横浜に出張していた時は鎌倉まで足を延ばしたりもしました。

安田

ああ、服が好きだと仰ってましたもんね。「家に服を着せる」という「ガーメントデザイナー」としての感性を養う意味もあるんでしょう。

中島

そうかもしれません。普段出張も多いので、家で休める日は遠出するより近場で美しいものを見るくらいがちょうどいい。そうやってのんびり過ごす時間が、また次の庭づくりのアイデアにつながっていくような気がします。

安田

なるほどなぁ。仕事も人生もぎっしり詰め込むんじゃなくて、あえて「何もしない時間」を作る。その余白があるからこそ、中島さんの生み出すお庭にも心地よい空間や抜け感が生まれるんでしょうね。


対談している二人

中島 秀章(なかしま ひであき)
direct nagomi 株式会社 代表取締役

Facebook

高校卒業後、庭師を目指し庭の歴史の深い京都(株)植芳造園に入社(1996年)。3年後茨城支店へ転勤。2002・2003年、「茨城社長TVチャンピオン」にガーデニング王2連覇のアシスタントとして出場。2003年会社下請けとして独立。2011年に岐阜に戻り2022年direct nagomi(株)設立。現在に至る。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

Twitter  Facebook

1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

感想・著者への質問はこちらから