第85回 世界が求める、引き算の庭づくり

この対談について

庭師でもない。外構屋でもない。京都の老舗での修業を経て、現在は「家に着せる衣服の仕立屋さん(ガーメントデザイナー)」として活動する中島さん。そんな中島さんに「造園とガーメントの違い」「劣化する庭と成長する庭」「庭づくりにおすすめの石材・花・木」「そもそもなぜ庭が必要なのか」といった幅広い話をお聞きしていきます。

第85回 世界が求める、引き算の庭づくり

安田

最近、外国人が日本の土地をどんどん買っているってご存じですか?


中島

ああ、ニュースでそういうのをよく見ますね。

安田

特に東京都心では、高層マンションが続々と建ってて、安い部屋でも1億円台。3億4億の部屋でも、あっという間に完売しちゃうんですって。


中島

ええっ、それはすごいですね。

安田

円安の影響もありますけど、外国の人からすれば「この立地でこの価格は安い」って感覚らしいんですよね。東京ってやっぱり世界的に見てもまだまだすごい大都市なので。


中島

うーん、なるほど。日本人にとっては「こんな狭い部屋が1億?」って驚く価格なのに。

安田

そうなんですよ。でも今後は、都心のマンションだけでなく地方の一戸建ても買われるようになると思っていて。それで考えたのが、庭への注目度です。日本人はなかなか庭にお金をかけられない時代になってますけど、日本で一戸建てを買う外国人なら、庭にだってこだわるんじゃないかなと。


中島

ああ〜、なるほど。確かに日本文化が好きな外国人もたくさんいますもんね。

安田

そうなんです。そういう人には中島さんが提案している「引き算の美学」の庭がすごくウケるんじゃないかと。庭づくりとセットにした外国人向け住宅企画ってすごく可能性があると思うんです。


中島

なるほど。でも僕の提案してるような庭が、外国の方に受け入れられますかねぇ。「いかにも日本庭園」みたいなものをイメージされている気もします。

安田

まぁそういう方もいらっしゃるでしょうけど、中島さんの「引くことで生まれる空間」にこそ魅力を感じる方は大勢いらっしゃると思います。庭づくりに込めた想いや哲学を丁寧に伝える必要はありますけどね。


中島

なるほど。確かに考え方を理解してもらうことは重要かもしれませんね。パッと見はかなりシンプルですが、かなり考えて作っているので。

安田

そうでしょう? 例えば無印良品ってありますけど、ヨーロッパの人たちからすごく人気なんですよ。フランスとかでは「日本に行ったら無印買ってきて」って頼まれるぐらい。それに近しいものがあるんじゃないかなと。


中島

へぇ、そうなんですね。でも確かに無印良品って、シンプルなだけじゃなく独自の考え方というか、コンセプトを感じますもんね。

安田

そうなんですよ。一見デザイン性がないようで、「余計なものを引く」という強いコンセプトがある。これってやっぱり中島さんの庭とも通ずるなぁと。


中島

確かに発想は近いかもしれません。なるほど、そうか、僕の庭は無印良品的なのか(笑)。

安田

笑。つまり価格や機能だけじゃなく、価値観で選ぶ人たちからも支持されているんですよ。だから中島さんの庭も、そういう世界観で売っていけばいいんじゃないかと。

中島

なるほど。そのためにも「何が違うのか」をちゃんと言語化して、翻訳して、世界に伝える必要があるわけですね。

安田

仰るとおりです。住宅会社とコラボする形もアリですよね。お客さんを中島さん側で集めて、それを建築会社に紹介するような。お庭単体よりも家と一緒なら、住まい全体のコンセプトとして提案できる。しかも「中島ブランド」の庭がセットでついてくる、となればすごく強いですよ。


中島

確かに相性よさそうですね。…この話をしていて今ふと思い出しましたけど、僕の家も壁がグレー一色でかなりシンプルなんです。建築をやっている双子の兄が建てたんですが、考え方や好みは無印良品にかなり近いかもしれない。

安田

ははぁ、なるほど。まさに「空」を体現しているわけですね。しかも兄弟でコラボができるなんて最強じゃないですか。「中島ブラザーズの家と庭」って、ブランド化しても面白そうです(笑)。

中島

そこまで考えたことなかったですけど、面白いかもしれませんね(笑)。

安田

ぜひ海外にも発信しましょう。「引き算の美学」を暮らしに取り入れたい、って人は世界中にいますから。すごく面白い展開になる気がします。

 

 


対談している二人

中島 秀章(なかしま ひであき)
direct nagomi 株式会社 代表取締役

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高校卒業後、庭師を目指し庭の歴史の深い京都(株)植芳造園に入社(1996年)。3年後茨城支店へ転勤。2002・2003年、「茨城社長TVチャンピオン」にガーデニング王2連覇のアシスタントとして出場。2003年会社下請けとして独立。2011年に岐阜に戻り2022年direct nagomi(株)設立。現在に至る。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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