第138回 他責思考の社長はダサい社長

この対談について

「日本一高いポスティング代行サービス」を謳う日本ポスティングセンター。依頼が殺到するこのビジネスを作り上げたのは、壮絶な幼少期を過ごし、15歳でママになった中辻麗(なかつじ・うらら)。その実業家ストーリーに安田佳生が迫ります。

第138回 他責思考の社長はダサい社長

安田

今日は中辻さんに「社長の主体性」についてお聞きしたいと思います。


中辻

社長の主体性…それは自立心とか責任感みたいなものですか?

安田

そうそう。一般的には、社長っていうのは自立していて自責思考で主体性も強くて…ってイメージがあると思うんですが、案外、社長でも他責思考の人が多い気がするんです。すぐ社員のせいにしたり、国や行政のせいにしたり(笑)。


中辻

あー、いますよね、そういう人(笑)。

安田

でしょ?(笑) そういった「他責思考の社長」がいる一方で、社員の中に非常に自立心の強い人もいる。初めてお会いした頃の中辻さんなんて、まさにそういう存在だったわけですよ。


中辻

ありがとうございます(笑)。確かに私は経営者になるよりもずっと前から、自立心が強かったかも。いろんなことがあっても、あんまり他人のせいにはしないというか…。

安田

そうですよね。中辻さんのような自立心の強い社員もいれば、社長なのになんでも他人のせいにする人もいる。その違いはいったいどこから生まれるのか、不思議でしょうがないんですよ。


中辻

あー…それはもう「性格」なんじゃないですかね。

安田

ほう。じゃあ「他責思考」になってしまうのは、ある種生まれつきのものだと。


中辻

ええ。しかもそれって、その人の中枢のようなものだから、なかなか直せるものではないんじゃないかな。

安田

ああ、確かに性格がガラッと変わることなんて、そうそうないですもんね。


中辻

例えば恋愛でも、いつも同じことで喧嘩しているカップルとかいるじゃないですか。かくいう私も昔はそういうことがありまして(笑)。

安田

おっと、そうなんですか(笑)。どういうことで喧嘩になっていたんです?


中辻

「靴下を脱ぎっぱなしにしないで」とか「出かける時に家の鍵をかけ忘れないで」とか、本当にしょうもないことなんですけど…(笑)。でもね、私が嫌だったのは私のそういう言葉に対する反応の仕方で。

安田

ん、と言いますと?


中辻

何を言っても「いや、でもな〜」とか「だって〜」とかって返ってくる。いちいち言い訳から入るので、私もめっちゃ腹立ってきて、結局そこから喧嘩になってましたね(笑)。

安田

笑。というか「鍵をかけ忘れないで」っていう指摘に対して、何を反論してくるんですか? 言い訳のしようがない気がしますけど(笑)。


中辻

「いや、でも朝忙しかったから」とか(笑)。もう本当に、苦し紛れもいいところですよね。

安田

なるほど。「ごめんなさい」が言えないタイプだったんですかね。


中辻

そうなんだと思います。指摘されることで、自分が攻撃されていると思ってしまうみたいで。こちらとしては「ごめん、次から気をつけるね」って言ってくれるだけで終わりになる話なんですけどね。

安田

防衛本能みたいなものなんでしょうかね。「攻撃されている=自分を守らなきゃ」となってしまうから、「でも」「だって」が出てくると。


中辻

そうみたいですね。私も当時は、自分の言い方に問題があるのかなって思っていろいろ試してみたんですけど、結局最後まで彼から「ごめん」は聞けませんでした。そういうこともあって、「やっぱり人って変わらないんだ」「根本的なものはその人の性格なんだ」と結論づけたというわけです(笑)。

安田

体験的にそうなったんですね(笑)。確かに言われてみれば、昔からそういう人って久しぶりに会ってもそのまんまだったりしますね。


中辻

ですよね。特に自分が窮地に立たされた時って、本質の性格が出てくると思うんですよ。

安田

普段はカッコつけていても、ピンチになると化けの皮が剥がれてしまうと(笑)。


中辻

そうそう(笑)。そこで「全部私の責任です」と言えるのか、「クレーム処理するのも嫌やし、誰かに押し付けよう」となるのかは、もうその人の性格なんですよ。

安田

なるほど。じゃあ本質的に、他責思考な人は一生他責思考なんですね。…まあ私が知る限り、そういう社長さんって多いんですけどね(笑)。


中辻

あはは(笑)。でも私思うんです。自分が会社で一番偉そうにしているのに、いざという場面で責任を取らないのってダサくない? って。

安田

いや、本当ですよ。私も自責思考の方が得だと思います。他人のせいにしても人生は好転しないですからね。


中辻

そうなんですよ。会社に何かあってから困るのは自分ですもんね。だから私も、ちょっとでも自分がダサくなくカッコよくいるためにも、そういうスタンスでやるのが当たり前だと思っています。

安田

いや〜素晴らしいですよ。きっと中辻さんは子どもの頃から他人や周りの環境のせいにはしない子どもだったんでしょうね。まあだからこそ、この人は経営者に向いていると思ったわけで。


中辻

ありがとうございます(笑)。まさか当時は、自分でも本当にこんな道を歩むとは思いませんでしたけど(笑)。

安田

いやいや、天職だと思いますよ。ということで、今日の対談の結論としては「他責思考は直りません」ということになりますかね(笑)。


中辻

はい、そういうことです(笑)。

 


対談している二人

中辻 麗(なかつじ うらら)
株式会社MAMENOKI COMPANY 専務取締役

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1989年生まれ、大阪府泉大津市出身。12歳で不良の道を歩み始め、14歳から不登校になり15歳で長女を妊娠、出産。17歳で離婚しシングルマザーになる。2017年、株式会社ペイント王入社。チラシデザイン・広告の知識を活かして広告部門全般のディレクションを担当し、入社半年で広告効果を5倍に。その実績が認められ、2018年に広告(ポスティング)会社 (株)マメノキカンパニー設立に伴い専務取締役に就任。現在は【日本イチ高いポスティング代行サービス】のキャッチコピーで日本ポスティングセンターを運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

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