「オモシロイを追求するブランディング会社」トゥモローゲート株式会社代表の西崎康平と、株式会社ワイキューブの代表として一世を風靡し、現在は株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表および境目研究家として活動する安田佳生の連載対談。個性派の2人が「めちゃくちゃに見える戦略の裏側」を語ります。
第73回 「株式会社」から「新株式会社」へ?

私が今やっているのが、「社員を雇わない、全員株主で全員取締役」っていう会社なんですね。お金ももちろん出してもらうけど、それだけじゃなくて労力も出すという形です。

今までは、資本家・経営陣・労働者が分かれていたじゃないですか。資本家はお金を出して、経営陣を雇って、経営者は社員を雇って利益を上げて、配当すると。でもその資本主義の根幹のユニット自体が、もう賞味期限切れなんじゃないかと私は思っていて。

会社って、社員には給料以上に働いてほしいと思ってるけど、社員はもらう給料以上には働きたくないわけじゃないですか(笑)。あるいは会社側は「なんでキミの成長のための研修費を会社が出さなきゃいけないんだ」と思い、社員側は「研修の時間にも給料が出るのが当たり前だ」なんて思っている。そもそも思惑が真逆なんですよ(笑)。

そういうことです。みんな自分の本業があって、それとは別に「こういうこと一緒にやったら面白いよね」っていう感じで集まっているんです。5年後10年後に事業が大きくなったらバイアウトしてもいいし、逆にバイアウトしなくても儲かるようになったら、配当という形でみんなで取り分ければいいかなと。

そうです。でも、どのみち人間って生きてるだけでリスクがあるわけで、自分の人生のリスクは自分で背負わざるを得ない。逆にそれを背負わないことで、果たして何か得るものがあるのか? という矛盾に、みんな気づいていくんじゃないかなと思ってるんです。

端的に、仕事ができる人ほど会社を出て、フリーランス化していくでしょうね。そういう優秀な人たちがフリーで自由に稼ぎながら、複数の会社と取引をするようになる。そういう働き方が当たり前になっていくだろうと思います。

そうなんですよ。で、「雇う側だけが金持ちになって、雇われる側には制限がある」って今までの構造と比べた時に、どっちに優秀な人が集まるかといったら、私は絶対に後者だと思うんですよ。自分では「新株式会社」と呼んでいるんですけど。

結局、今と大きくは変わらないんじゃないですかね。一部の「リスクを負ってでもやりたい」っていう人たちがお金も労力も出して、もしかしたらマイナスになるかもしれないけど、うまくいったら大きなリターンが得られる。まさにいま安田さんご自身がやっているようなことですけど。

そうそう、そうなんですよ。私も「お前は大金を稼ぎたいから経営をしているのか」と言われればそうでもない。お金があるに越したことはないけど、それ以上に面白い事業をやっていたいし、それを多くの人に知ってもらえることの方がずっと嬉しいんですよね。そういう意味では、ちょっと特殊な人種なのかもしれないなと(笑)。

ああ確かに、私の周囲にはそういう感覚の近い人が多いのかもしれません。端的に言えば、皆さんやっぱりちょっとどこか変わっている(笑)。もちろん収入を増やしたいという気持ちはあると思うんですけど、それ以上に「ワクワクすることがやりたい」「仲間と一緒にやりたい」っていうのが強いんだと思います。
対談している二人
西崎康平(にしざき こうへい)
トゥモローゲート株式会社 代表取締役 最高経営責任者
1982年4月2日生まれ 福岡県出身。2005年 新卒で人材コンサルティング会社に入社し関西圏約500社の採用戦略を携わる。入社2年目25歳で大阪支社長、入社3年目26歳で執行役員に就任。その後2010年にトゥモローゲート株式会社を設立。企業理念を再設計しビジョンに向かう組織づくりをコンサルティングとデザインで提案する企業ブランディングにより、外見だけではなく中身からオモシロイ会社づくりを支援。2024年現在、X(Twitter)フォロワー数11万人・YouTubeチャンネル登録者数19万人とSNSでの発信も積極的に展開している。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。