第99回 強みも弱みも見方次第

 // 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 //
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

「商品を考えるのも売り方を考えるのも、自分でやらなければいけない。」
自分で商売を始めた時、私はこれを実感しました。

大手は商品開発、集客、接客といった業務を分業することで効率化を図り、その効果によって利益を出します。一方、商売を始めたばかりの個人店や小規模経営においては、こうした商品や集客といった経営にかかわる要素全てを自分で考えて決めていかなければなりません。

こう書いてしまうと一見、大手の方が有利なように思えます。
事実、開業してからしばらくの間、私もこうした大手チェーンの分業による強みを羨んでいた時期がありました。

でもある時、ふと気づいたのです。
「大手は『分業できる』んじゃなくて、『分業しかできない』んじゃないか」って。


大手は分業できるのが強み。
確かこれは間違っていないと思います。

ただこの事実を逆に考えると、大手は「分業しないと強みを持てない」とも言えます。

つまり、商品開発、集客、接客といった業務を一人の人間が一貫して行うことはできないということです。

冒頭に書いた「商品を考えるのも売り方を考えるのも、自分でやらなければいけない」という事実。私たちがこの事実を否定的に捉えてしまいがちなのは、大手の強みである分業こそが正解であると思い込んでしまっているからではないでしょうか。

大手は「分業できる」のではなく、「分業することでしか強みを持てない」と考えれば、小規模経営の「全部の業務を自分でやらなくてはいけない」という事実は、「全部の業務を一貫して自分でできる」という強みに変わります。

だから、その強みを存分に活かす必要が私たちにはあると思うのです。

「どんな思いからこの商品を作ったのか?」
「この商品のどこにこだわっているのか?」
「自分のお店をどんな状況で見つけてもらうのか?」

こうした事を自分で考え、お客さんに理解してもらう努力をすることで大手が出すことのできない魅力を感じてもらう。

分業しないのは決して弱みではなく、むしろ大手には真似できない強みであるということ。
大手が分業を強みにするなら、小規模経営は分業しないことを強みにする。

私たちが目の前にある事実の捉え方を間違えない限り、小規模経営には戦うための魅力や武器がたくさんあるのです。

 

 

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著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

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