// 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 // |
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。 |
今週のコラムも第109回に引き続き、営業職時代の辻本くんのお悩み相談。
前回問題になった「お店を開業するには景気が悪いんじゃないか」という心配もあり、一度飲食業界で経験を積んでから起業しようか、と考えている様子。
「業界経験を積んだ方が商売は上手くいくはず」
そう考える当時の辻本くんを見て、今の辻本は何を思うのでしょう。
「業界での経験があった方が、商売を軌道に乗せやすい。」
私はこの考え方に基本的には賛成です。
というのも、私自身は業界経験のないままお店を開業しましたが、実際に開業してからは「もっと業界の知識があれば」と何度も感じたことがあるからです。価格設定、人件費、商品開発、どれを取っても業界経験があればしなくて済んだ失敗をしてきたように思えます。
ただ同時に、一方では業界で経験を積むことの問題点もあるように感じるのです。
その問題点というのが「業界で経験を積めば積むほど、その業界の常識に思考を縛られやすくなる」ということ。
これは何も、実際に働いて経験を積むことに限らず、ネットで情報を集めて知識を増やすことも同じだと思います。ネット上には店舗経営に関するノウハウが溢れています。
「原価率は○○%以下に設定しなさい」
「人件費率が○○%を超えたら要注意」
こうした情報は、業界に長くいる人からすれば常識なのかも知れません。でもこうした業界の常識や知識が自分の中に増えるほど、その思考の中でしか商売を考えられなくなり、それこそ「よくある無難なお店」しか作れなくなってしまうのではないかと思うのです。
私は業界未経験での起業しか経験していないため、経験を積んでから起業することのメリットを実感したことはありません。ただ間違いないのは、もし業界で経験を積んでいたら1号店を開業した時のモデルを思いつくことはなかったということ。
業界経験を積んだ方が商売は上手くいくはず。
こう考える当時の辻本くんを否定はしませんが、経験を積むことばかりが必ずしも商売の成功を約束する訳ではなく、業界の経験を積むメリットがあるならば、業界の経験がないメリットもあるということ。
そして何より、「業界経験を積んだ方が商売は上手くいくはず」と自分に今あるメリットを見ようとせず、自分にないものばかりを欲しがる思考では、たとえ経験を積んだとしてもその商売が上手くいくのは難しいのではないか、と辻本くんに伝えたいのです。
著者/辻本 誠(つじもと まこと)
<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/