この記事について
税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。
「じつは辞めたい」と思ってる従業員って、たくさんいるでしょうね。
2人に1人が、辞めたいと思ってるそうですよ。
まあ、そのくらいは、いるでしょうね。ところで外食のアルバイトが辞める理由の1位知ってます?
外食ですか?
はい。基本的に不人気業種なんですけど。
やっぱり、人間関係じゃないんですか?
そう思いますよね?でも違うんですよ。人間関係は辞める原因の第3位。
そうなんですか?
辞める理由の第1位は「仕事を教えてくれない」こと。で、第2位は「お店が暇」っていう理由らしいです。
意外ですね。
ですよね。私だったら、忙しいより暇な方が楽でいいですけど。
「教えてくれない」って、どういうことなんですか?
放置されるってことですね。その疎外感が耐えられない。
なるほど。
逆に、忙しくても「自分が活躍できる場所」があれば、辞めないらしいです。自分の居場所がないのが、一番つらいっていう。
うまく居場所をつくってあげれば、辞めないってことですね。
居場所をつくってあげて、活躍したらちゃんと褒めてあげる。
普通の中小企業と同じですね、そこは。
でも「俺が雇ってやってる」みたい社長さんって、多いじゃないですか。
ですね。
別に「恵んでもらってる」わけじゃないんですけどね。正当な報酬を受け取ってるだけ。
そこは、まだまだ感覚が古いです。
経営者に限りませんけどね。「お金を払ってる側が偉い」って思い込んでる、モンスター客とか。
確かに。でも、少しずつ変わってきているのも感じます。
どういうところで?
たとえば運送とか。昔は「金さえ払えば、無理言ってもいい」みたいな感じだったじゃないですか。
かなり、こき使ってましたよね。
でも最近は、運送会社の方が「そんなんだったら、やりません」って言えるようになってきた。
確かに。今って、お客さん探すより、社員採るほうが大変な時代ですからね。
そうなんですよ。
店員と顧客との関係とか、社長と社員との関係とか、これまでと逆転するかもしれませんよ。
いや、本当そうだと思います。お客さんが嫌いだったら手を抜くこともできるし、好きだったらひと手間加えてあげたりもする。
たとえば小料理屋さんだって、お客さんによって出すもの変わりますから。
そりゃあ、店にも好き嫌いありますもん。
なかなか手に入らない食材とか、好きな人に優先して出してますよね。
お店に好かれたほうが、絶対にお得ですよ。
社長だって、社員に好かれてるほうが絶対に得ですよ。辞めないし、みんな頑張って働いてくれるし。
そうなんですけどね。現実として、そういう経営者は少ないです。
給料を手渡しして「ありがとうございます!」って言われたいんでしたっけ?
何も感謝されないより、みんな「ありがとう」って言われたいものじゃないでしょうか。
逆にした方がいいんですけどね。「もらってくれてありがとう」みたいな。
社員がもらってやる儀式?
社長が、頭下げながら渡すっていう。
それは面白いですね。
ちょっと顧問先で実験してもらえないですかね?採用力が上がるかどうか。
辞める人が減るかもしれないですね。
だって、実際に社長の給料稼いでるのは、社員ですからね。
社長が「ありがとうございます」とか言いながら、自分の給料を受け取るとか。
社長以外の人の椅子のほうが、社長の椅子より立派とか。
昔、やってませんでしたっけ?安田さん。
はい。やって、大変なことになりました。
(笑)
でも、真面目な話、今の時代って「社員に好かれる」価値ってすごいと思うんですけど。
本当におっしゃる通りで。中小企業のビジネスモデルって、やる気によって思いっきり左右されますから。
ですよね。社員のやる気で、かなり業績変わりますよね?
変わります。
社員を連れて飲みに行く社長さんも、自己満足になってることが多い。
分かります。「飲みに連れて行ってやった」という気分。
でも社員はぜんぜん嬉しくない、みたいな。
いい意味で、ポジティブな人が多いんですよ。経営者って、メンタル強くないとできないですから。
強いのと鈍感なのは、ちょっと違うと思いますけど。
まあ、確かに。「社員はみんな喜んでる」と思ってますからね。
「いいもの食べて、またこいつら喜んでるよ」みたいな写真を、FBに上げたり。
「いい肉を社員に食べさせた」みたいな投稿、多いですよね。
久野さんはどうなんですか?社員さんと食事行くんですか?
僕は逆に、怖くて連れていけないです。
本当は嫌がってるんじゃないかと、考えてしまう?
その通りです。
意外と繊細ですね。
繊細なんですよ。もっと強くなりたいです。
弱いぐらいで、丁度いいんじゃないですか。
鈍いよりはいいですか?
鈍感な社長=タフな社長では、これからは通用しないですよ。
確かに。新しく起業してくるような人は、全然タイプ違いますよね。
はい。人と目を合わせられないような繊細な人が、業績の良い会社の経営者だったりします。
繊細さがポイントなのかもしれませんね。
とくに中小企業は繊細じゃないと。すぐに社員がやめちゃいますから。
辞めるとき、みんな、まとまって辞めたりしますし。
そうなったら、取り返しつかないですよ。
でも、そういう会社が多いですけど。
ほんと、ギリギリのところで、何とかもってる感じですよね。
はい、ギリギリですね。いつブワーって辞めても不思議じゃない。
近々そういう波が来るんじゃないですか。
来そうですよね。大きな波が。
鈍感な社長さんも、社員がいなくなったら気がつきますよ。
そうなってからじゃ、遅いですけどね。
もう年配の経営者は、価値観変わりませんから。入れ替えるしかない。
入れ替わるのは社員じゃなくて、社長だと?
はい。鈍感な社長が退場して、繊細な社長の時代になる。そんな気がします。
強さは要りませんか?
弱い部分は、社員が支えてくれると思いますね。だからこそ、好かれることが大事。
私も、嫌われないように気をつけます。
久野勝也
(くの まさや)
社会保険労務士法人とうかい 代表
人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は地元である岐阜県多治見市。
事務所HP https://www.tokai-sr.jp/
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。