この記事について
税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。
香港の人がコロナの影響で家から出れなくなって。国は1人14万円ずつ配ったそうです。
そうみたいですね。
これってベーシックインカムに近いものですか?
日本でも昔やりましたよね、1回。
やりましたっけ?
民主党政権のときに、意味もなく配ったじゃないですか。
ああ!商品券を配ったやつ?
正確にはベーシックインカムではないですけど。
今回も配るみたいですね。
やらざるを得ないでしょう。
このままいくと、経済への打撃が計り知れないものになりそうですし。
SARSの時は8カ月かかりましたから。
SARSって、こんなに影響ありましたっけ?
SARSは日本に上陸してないので。中国の影響を受けただけ。
今回は日本も感染地になっちゃいましたから。
はい。ダブルパンチです。
イベントや研修は中止になって。外食店もお客さんが激減して大変みたいです。
名古屋もいつも混んでる道がガラガラです。
新幹線も空いてましたか?
ガラガラでした。新橋も人がいないですもんね。
このままでは足元から崩れていくので、国として何とか止めないといけない。助成金だけじゃ無理ですよ。
こういう時は年金がすごく安定してます。
年金ですか?
年金は必ず振り込まれるので。
確かに。
でも給与は、当たり前のように振り込まれる時代じゃなくなった。
そうですね。
コロナが来て一気にそれが加速した感じ。給与受給者は家賃も払えなくなる。
企業の借り入れはかなり緩和されたみたいですけど。
借り入れ金は返さなきゃいけないから。でも休業手当は払わなきゃいけないし、売上は増えないし。
あんまり企業に対して「払え、払え」って言ったら、倒産する可能性もありますよ。
リーマンの時は「仕事のシェア」というイメージがあったじゃないですか。
ありましたね。「みんなでちょっとずつ休んで仕事をシェアしよう」みたいな。
なんとか給与シェアしようって。日本もあの頃はまだそういう文化だったんです。
今は違う?
やっぱり個人主義に向かってるので。
確かにそうですよね。トイレットパーパーも取合いになったし。
日本は暴動が起きない国なんですけど。さすがに今回は起こるかもしれない。
え!誰が起こすんですか?
会社に雇われてる人たち。
そんなことしますか?
給料が出てればしないです。
まあ払えない会社も出てきますよね。今回は。倒産したら当然払えなくなるし。
倒産しなくても現実的にお金がないと払えない。
ですよね。じゃあ国がベーシックインカムを配るか、銀行がどんどん貸付するか。
リスケしてる会社には貸せないでしょうし。借りても返せないので会社も借りない。
じゃあどうなるんですか?
だから個人に配るしかない。
リーマンの金融緩和も一時しのぎでしたからね。結局は返せなくなってるし。
そういう教訓も踏まえてクーポンみたいなのを配ると思います。
それで消費に火がつきますか?
どうでしょう。一気に人余りのフェーズになっちゃったので。
ついこの間まで「人がいなくて困る」って言ってたのに。それが今は「人を採ってる場合じゃない」って。
長期的に見たら、こういう時に逆張りできる会社がめちゃめちゃ伸びるんですけど。
リーマンの時もそうでしたね。あの時に雇用守ったり、給料を払い続けた会社が、その後一気に伸びていった。
ピンチになると社長のスタンスが見えます。
確かに。こういう時って経営者の性格が出ますよね。
出ますね。
でもやっぱり中国は早いですよ。香港なんてついこの前までデモやってたのに。
だから中国人って、いろいろ不満も多いんだけど我慢してる。
国を信じてるってことですか?
国というよりも未来ですね。「今日よりも明日のほうが絶対に良くなる」って信じてる。
実際に経済は良くなってますからね。
はい。中国政府は民意にすごく気使ってますよ。
でしょうね。国民が暴動起こしたら終わりだし。
はい。だから公共料金とか生活するためのお金は絶対に提供する。その代わり、多少の不合理は許容してくれっていう。
一見、国民を締め付けてるようで、じつは中国のほうが国民にすごく気を使ってる。日本はその逆。
だと思います。
社会保険料を上げられても、消費税を上げられても、日本人は我慢しちゃいますもんね。
普通だったら暴動が起きますよ。フランスや中国だったら絶対デモになる。でも日本では許される。
これだけ経済も良くならず、あれだけ首相がムチャクチャやっても、結局また選挙をやれば自民党が勝つし。すごい国民性ですよね。
いつの間にか社会保険を勝手に上げて、年金は勝手に減らして、企業の定年は延長して。
日本国民って政治家にかなりナメられてるんでしょうね。
怖くて「はい」とは言えないですけど(笑)
言わなくったって、みんなもう気づいてますよ。
ですね。
でも気がついていても、また自民党に投票する。
選択肢がないから。
完全に行き詰まってるのに、他に選択肢がないって恐ろしいことですね。
恐ろしいって感情すら、先送りにしてます。
それがいちばん恐ろしい。
久野勝也
(くの まさや)
社会保険労務士法人とうかい 代表
人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。
事務所HP https://www.tokai-sr.jp/
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。