この記事について
税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。
テレワークが最近のトレンドですけど。
コロナでやむなくって感じです。
「テレワークをしたら社員が働かなくなる」って説と、「テレワークで働かないやつは元から働いてない」説があるんですが、どう思います?
サボってるやつはテレワークでもサボる。ただそれだけ。
ってことは、サボらない人は家でやらせてもサボらない?
サボらないですね。
じゃあ久野さんは家で仕事させてもいい派ですか?自社の社員も。
一定レベルのスキルがあれば、家でやっても全然いいと思ってます。
一定レベルがある人は全体の何割ぐらいいるんですか?
うちで言うと4割ぐらいですかね。
ってことは6割はサボると?
いや、サボるというか、生産性を上げられない。
自分では上げられないってことですか?
はい。自分では上げられない。なぜなら自分で判断ができないから。
なるほど。でもテレワーク人口は確実に増えて行きそうですよ。
一度こういう流れになると、なかなか元には戻せないでしょうね。
テレワークによって「あの高い家賃は必要なかったかも」という話が出てるそうです。丸の内にオフィスなんていらないよと。
先進的な企業ほどもう元に戻さないでしょう。それがまともな経営判断なので。
個人はどうですか。満員電車で通い続けることが習慣化されてましたけど。
今回のリモートワークで一気に変わるでしょうね。
考える余裕もないぐらい忙しかった人が、今回立ち止まることによって考える。あれはなんだったんだろうって。
そうなります。
会社員でいることの疑問とか。何のために働いてるんだろうか、とか。
会社と社員の関係もこれを機に変わると思います。
これを機に会社を辞める人が出てきそうですよね。
そういう人がいる一方で、フリーランスが不安になって「会社員に戻ろう」とする人も出てくる。
結局「社員のほうがいいじゃないか」ってことですよね。休んでいても給料は出るし。
どっちが正しいかは別にして、みんな考えると思います。
経営者だって考えますよ。
はい。雇用って本当に必要だったのかとか。何のために会社を始めたのかとか。みんな考え始めるでしょうね。
フリーランスへの流れは今後どうなると思います?加速するっていう人と、流れが止まるって人に分かれるんですけど。
ここ2年ぐらいは中間の人が増えるんじゃないですか。
中間ですか。
雇用されながら、ちょっとフリーで働くみたいな。
なるほど。
ただ将来的にはフリーランスが増えていくと思います。
やっぱり大きな流れとしてはそうなんでしょうね。
はい。いったん揺り戻しがあってその後一気にフリーが増える。
「会社員のほうがいいよ」って人も一定数は残る?
もともと会社にぶら下がってる人は、絶対そうでしょう。
そうですよね。フリーになったら稼げないし。
給料の何倍も利益をもたらしてる人たちは、価値観が大きく変わる。
それはどのように?
「会社のために働いてもしょうがないんじゃないの」って人が増えていく。
でもそうなると会社はキツイですよ。ぶら下がり社員ばかりが残っちゃう。
経営者も今回のことで雇用には慎重になるでしょう。
じゃあ雇われたくても受け皿がなくなる?
利益に貢献できない人は厳しいですね。
でもそういう人のほうが圧倒的に多いですよ。
多いです。
自分で商品つくって、自分で集客して、営業もしてみたいな人って、多くて2割ってとこじゃないですか。
そんなにいないかもしれません。
じゃあ残りの人はどうなるんですか。
分かりません。ただ雇用というものの敷居が上がることは確かです。
待遇は今より悪くなりますか?
雇用の総量は減るでしょうけど、待遇は手厚くなっていくと思います。
なぜ待遇が手厚くなるんですか。
選ばれた人しか雇用しないからです。要は黒字社員の割合が増えてく。
企業にも余裕がないですからね。コロナの後は。
そうです。だから稼げるフリーランスと黒字の正社員だけが残る。
赤字社員はどうなりますか?
赤字の正社員と赤字のフリーランスは路頭に迷いますね。
リモートワークで赤字社員があぶり出されちゃったし。
バレちゃいましたね。今後そういう人たちは本当に苦しくなる。
彼らはどうしたらいいんですか?
そこは国が預かって再教育をするしかない。それが国家の役割だと思います。
それは公務員として雇うってことですか。
それはさすがに無理でしょう。
じゃあ働く場所がないですよ。
だからそれが見つかるように再教育するわけです。
どんな再教育ですか?介護職とかですか。
介護もそうですし。もっと先進的な仕事も国家戦略的には必要ですし。
たとえば?
プログラミングとかロボットの開発とか。
そんな仕事できるんですか?パソコンを繋げられないような人たちですよ。どうやってプログラミングするんですか。
そこを国がもう1回ゼロから教える。
その間の生活費はどうするんですか?
国が面倒を見るしかないですね。
そんな余裕あるんですか。この国に。
会社にはもっと余裕がないですから。
まあそうですけど。
40年近くも終身雇用で会社に面倒見させるって、それ自体がもう無理なんですよ。
とはいえ再教育なんて可能ですか?もはやベーシックインカムしかないのでは。
真剣にそれを考えないといけない時ですね。
久野勝也
(くの まさや)
社会保険労務士法人とうかい 代表
人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。
事務所HP https://www.tokai-sr.jp/
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。