第68回「赤字社員の行く末」

この記事について
税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第68回「赤字社員の行く末


安田

テレワークが最近のトレンドですけど。

久野

コロナでやむなくって感じです。

安田

「テレワークをしたら社員が働かなくなる」って説と、「テレワークで働かないやつは元から働いてない」説があるんですが、どう思います?

久野

サボってるやつはテレワークでもサボる。ただそれだけ。

安田

ってことは、サボらない人は家でやらせてもサボらない?

久野

サボらないですね。

安田

じゃあ久野さんは家で仕事させてもいい派ですか?自社の社員も。

久野

一定レベルのスキルがあれば、家でやっても全然いいと思ってます。

安田

一定レベルがある人は全体の何割ぐらいいるんですか?

久野

うちで言うと4割ぐらいですかね。

安田

ってことは6割はサボると?

久野

いや、サボるというか、生産性を上げられない。

安田

自分では上げられないってことですか?

久野

はい。自分では上げられない。なぜなら自分で判断ができないから。

安田

なるほど。でもテレワーク人口は確実に増えて行きそうですよ。

久野

一度こういう流れになると、なかなか元には戻せないでしょうね。

安田

テレワークによって「あの高い家賃は必要なかったかも」という話が出てるそうです。丸の内にオフィスなんていらないよと。

久野

先進的な企業ほどもう元に戻さないでしょう。それがまともな経営判断なので。

安田

個人はどうですか。満員電車で通い続けることが習慣化されてましたけど。

久野

今回のリモートワークで一気に変わるでしょうね。

安田

考える余裕もないぐらい忙しかった人が、今回立ち止まることによって考える。あれはなんだったんだろうって。

久野

そうなります。

安田

会社員でいることの疑問とか。何のために働いてるんだろうか、とか。

久野

会社と社員の関係もこれを機に変わると思います。

安田

これを機に会社を辞める人が出てきそうですよね。

久野

そういう人がいる一方で、フリーランスが不安になって「会社員に戻ろう」とする人も出てくる。

安田

結局「社員のほうがいいじゃないか」ってことですよね。休んでいても給料は出るし。

久野

どっちが正しいかは別にして、みんな考えると思います。

安田

経営者だって考えますよ。

久野

はい。雇用って本当に必要だったのかとか。何のために会社を始めたのかとか。みんな考え始めるでしょうね。

安田

フリーランスへの流れは今後どうなると思います?加速するっていう人と、流れが止まるって人に分かれるんですけど。

久野

ここ2年ぐらいは中間の人が増えるんじゃないですか。

安田

中間ですか。

久野

雇用されながら、ちょっとフリーで働くみたいな。

安田

なるほど。

久野

ただ将来的にはフリーランスが増えていくと思います。

安田

やっぱり大きな流れとしてはそうなんでしょうね。

久野

はい。いったん揺り戻しがあってその後一気にフリーが増える。

安田

「会社員のほうがいいよ」って人も一定数は残る?

久野

もともと会社にぶら下がってる人は、絶対そうでしょう。

安田

そうですよね。フリーになったら稼げないし。

久野

給料の何倍も利益をもたらしてる人たちは、価値観が大きく変わる。

安田

それはどのように?

久野

「会社のために働いてもしょうがないんじゃないの」って人が増えていく。

安田

でもそうなると会社はキツイですよ。ぶら下がり社員ばかりが残っちゃう。

久野

経営者も今回のことで雇用には慎重になるでしょう。

安田

じゃあ雇われたくても受け皿がなくなる?

久野

利益に貢献できない人は厳しいですね。

安田

でもそういう人のほうが圧倒的に多いですよ。

久野

多いです。

安田

自分で商品つくって、自分で集客して、営業もしてみたいな人って、多くて2割ってとこじゃないですか。

久野

そんなにいないかもしれません。

安田

じゃあ残りの人はどうなるんですか。

久野

分かりません。ただ雇用というものの敷居が上がることは確かです。

安田

待遇は今より悪くなりますか?

久野

雇用の総量は減るでしょうけど、待遇は手厚くなっていくと思います。

安田

なぜ待遇が手厚くなるんですか。

久野

選ばれた人しか雇用しないからです。要は黒字社員の割合が増えてく。

安田

企業にも余裕がないですからね。コロナの後は。

久野

そうです。だから稼げるフリーランスと黒字の正社員だけが残る。

安田

赤字社員はどうなりますか?

久野

赤字の正社員と赤字のフリーランスは路頭に迷いますね。

安田

リモートワークで赤字社員があぶり出されちゃったし。

久野

バレちゃいましたね。今後そういう人たちは本当に苦しくなる。

安田

彼らはどうしたらいいんですか?

久野

そこは国が預かって再教育をするしかない。それが国家の役割だと思います。

安田

それは公務員として雇うってことですか。

久野

それはさすがに無理でしょう。

安田

じゃあ働く場所がないですよ。

久野

だからそれが見つかるように再教育するわけです。

安田

どんな再教育ですか?介護職とかですか。

久野

介護もそうですし。もっと先進的な仕事も国家戦略的には必要ですし。

安田

たとえば?

久野

プログラミングとかロボットの開発とか。

安田

そんな仕事できるんですか?パソコンを繋げられないような人たちですよ。どうやってプログラミングするんですか。

久野

そこを国がもう1回ゼロから教える。

安田

その間の生活費はどうするんですか?

久野

国が面倒を見るしかないですね。

安田

そんな余裕あるんですか。この国に。

久野

会社にはもっと余裕がないですから。

安田

まあそうですけど。

久野

40年近くも終身雇用で会社に面倒見させるって、それ自体がもう無理なんですよ。

安田

とはいえ再教育なんて可能ですか?もはやベーシックインカムしかないのでは。

久野

真剣にそれを考えないといけない時ですね。



久野勝也
(くの まさや)
社会保険労務士法人とうかい 代表
人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。
事務所HP https://www.tokai-sr.jp/

 

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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