第312回 生き残る会社がやるべき努力

この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第312回「生き残る会社がやるべき努力」


安田

住んでいるマンションの1階にスーパーマーケットがありまして。去年までは元旦だけ休みだったんですけど今年は2日も休みになりました。もう年中無休なんて無理なんでしょうね。

久野

私は百貨店出身なんですけど。2日の朝5時には出社してました。

安田

年末はどうでした?

久野

12月31日も朝5時に出社して、おせち準備して1日だけ休んで、なんならサウナとかに泊まって2日朝の初売りに備えてました。けど、そんなファイターはもういないです。

安田

いないでしょうね(笑)

久野

でも百貨店ってそういうもんですからね。

安田

昔はそうでしたよね。みんな出世思考だったし、評価されるために頑張るのが当たり前でした。今はそうじゃないですもんね。

久野

そういう人の方が少ないでしょうね。

安田

「生活のために給料分は働く」って人が大多数で。正月から仕事の会社なんてすぐ辞めちゃいますよ。

久野

コンビニに行っても外国人のスタッフしかいないじゃないですか。スーパーバイザーとか、店舗の見回りしてる人とか、見たことない。そういう時代なんでしょうね。

安田

人不足だし、無理させるとすぐに辞めちゃうから。

久野

百貨店の年明け企画を見てもすごく地味ですよ。装飾にもお金かかってないし。外部の業者も設営してくれないんでしょうね。

安田

業者さんも人不足でしょうから。昔は百貨店のショーウインドウって華やかでしたけどね。

久野

年末にショーウインドウを変えるなんてもうナンセンスですね。

安田

そうですね。昔は休みを犠牲にしてでも出世していく考え方だったじゃないですか。そこが劇的に変わってきてると思うんです。

久野

休みが多くて給料が高いところに人材が集まりますからね。

安田

企業もそれをやらないと生き残っていけないし。エコノミックアニマルと言われた日本人も今や先進国で一番働いていないですから。

久野

そうなんですよ。労働人口も減っていくし、何らかの工夫が必要です。

安田

労働人口は半分以下になるところまで見えていて。だけど2倍働けるかって言われたら働けないじゃないですか。時間で生産性をカバーするという発想をどこかで捨てないと。

久野

私は逆にチャンスかなと思ってるんですよ。いろんなことを考えながら経営するようになるんじゃないですか。

安田

考えないと生き残れないですもんね。

久野

ただ日本人は切羽詰まらないとやらないから。

安田

日本人って真面目なんですけどね。夏休みの宿題もほとんどの子供はちゃんとやってくるし。

久野

そこが変化しないと。宿題をやらないと決めるのが変化じゃないですか。

安田

そうか。想像が及ぶ範囲の変化ではもう追いつかないってことですね。

久野

追いつかないでしょうね。この減り方とか見ていると。

安田

経営者は大変ですね。今の2倍、3倍の給料払いながら、休みも今より増やさないといけないし。

久野

年間休日が135日ぐらいで給与が50万ぐらいの時代が来るんじゃないですか。

安田

夢のような国じゃないですか、日本って。

久野

ただし、それをやって黒字になる会社はかなり少ないです。やった会社だけが生き残るんですよ。シミュレーションしてみて赤字の会社は、何もしなければ潰れる。

安田

できない会社の方が多いんじゃないですか。中小企業は。

久野

大半が潰れるでしょうね。

安田

働く側から見れば嬉しいですよ。スキルアップしなくても休みや給料が増えていくんですから。

久野

建前上は社員に対して「能力を上げてくださいね」って言わなきゃいけない。だけど、やらなきゃいけないのは経営側で。そういうモデルにしない限りもう残らないと思います。

安田

社員に期待してはいけないと。

久野

社員に頼って能力が上がるのを待ってたら、もう会社潰れちゃう。

安田

そうですよね。

久野

安田さんの言った通りだと思います。

安田

「言われたことだけは真面目にきちんとやります」って人の給料も上がっていきますか?

久野

生き残る会社は生産性が高くなっていくはずなので、恩恵を受けて上がっていくでしょうね。

安田

韓国では最低賃金を上げすぎて離職率がすごく上がりましたけど。

久野

でも結果的にその韓国に日本は生産性で抜かれちゃいましたから。

安田

ちょっと前まで倍ぐらい差があったのに。あっという間に抜かれちゃった感じですよね。

久野

韓国は国がしっかり産業を育てている感じがします。

安田

日本は現状でなんとか我慢して食べていけちゃうんでしょうね。やはり、もうちょっと追い詰められないと変われないのかもしれない。

久野

アメリカに行って思ったんですけど、日本人は頑張りすぎだと思うんですよ。アメリカ人みたいにもっと合理的にならないと。

安田

頑張る方向性が間違ってますよ。頑張っているというより我慢している感じ。

久野

我慢。そうなんですよね。

安田

日本人はイノベーションという努力じゃなく、我慢という努力をしちゃうんですよ。なんだかんだ言って我慢が好きなんでしょうね。

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久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/  

安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

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